泥棒に強い家づくり
春は、夏に次いで空き巣=侵入盗が多い季節である。入学・入社シーズンで、引っ越しなど人の移動が盛んになるためだ。街に見慣れない人が増えても違和感がなく、それに紛れて侵入盗も下見や盗みをしやすくなる。ここ数年で侵入盗の件数は減少傾向にあるが、油断は禁物。春に向けて我が家のセルフチェックから防犯を始めよう。
在宅就寝時の侵入、危険な忍び込みが増えている
まず全体の犯罪数を確認すると、2002年の約285万件をピークに、この10年で約半数の140万件台にまで減少している。侵入盗も同じく、2002年以降減少傾向が顕著だ。ピッキングが大流行した2002年当時と比べれば、現在は格段に安心できる状況にはなっている。
しかし、検挙率の推移を見ると、犯罪数の減少に対して、理論上の限界値に来ているのか、検挙率はここ数年30%超で横ばいを続けている。また空き巣が減少傾向にある一方で、在宅就寝時の侵入=忍び込みの比率が上がってきていることに注意したい。
もともと犯罪、特に侵入盗については、「ルーティンアクティビティ(日常活動)理論」が強く働くとされている。これは、犯罪を犯す人、ターゲットになる人や物、監視のない状態―――、の3つが重なると、犯罪が起きやすくなり、この3つの要件が揃わないようにすれば、犯罪を減らせる、という理論だ。典型的な例が万引きだろう。
侵入盗のプロの横行はもちろん、困窮した人が魔がさして、犯罪に追い込まれることもあるかもしれない。犯罪の起きる状況をつくらないように、できることから防犯を適切に行おう。
侵入盗の4割を一戸建て住宅が占める。事務所や商店のほうがお金がありそうなものだが、一般住宅のほうが防犯性能が低いため、犯人は捕まるリスクを避けて住宅を攻めるのだ。
「施錠し忘れ」の被害が圧倒的に多い
侵入盗の現状を見てみよう。図は、2011(平成23)年、発生場所別の各割合を示したものだ。戸建て、共同合わせ「住宅」をターゲットにした侵入盗は、56.5%、約7万1200件発生している。「空き巣に遭うのは交通事故より確率が低い」とは言うが、この数字だけ見ると結構な件数に思える。侵入手段は、「施錠のし忘れ」が圧倒的に多い。
この10年でドアと鍵の性能が格段に上がったためか、次に続くのは窓のガラス破り。侵入口は窓が1位で、近年はドアの堅牢性が上がり、窓が狙われる傾向がはっきりしてきている。
手口で見ると、「空き巣」が37%で最多、夜間の侵入盗である「忍び込み」も13%と決して少なくない。また、居住者がいる時に侵入する「居空き」は2.9%だ。この夜間の忍び込み、昼間の居空きは被害者が襲撃される危険性もあるから怖い。侵入に気づいて犯人と鉢合わせし、傷害や殺人に至る「身体犯」になる可能性もある。夜間と在宅中は、とにかく施錠、ツーロックをしっかり行うことが大切だ。
「人目がある」「時間がかかる」で防ぐ
犯罪者側の心理で言うと、地理的・場所的に、入りやすい所、入りにくい所がある。逆に言えば地理的・心理的に入りにくくすれば泥棒は侵入をあきらめるのだ。具体的な「犯行をあきらめる要素」を見てみよう(※図)。
回答トップは「声をかけられた」で、隣近所の住人からの声掛けだ。他、防犯ビデオ(カメラ)、セキュリティシステム、センサーライトなどが挙げられている。これらではっきり分かるのは、泥棒は「見られる(感知される)ことを嫌う」こと。
また、面格子、合わせガラス(防犯用複合ガラス)、補助錠などが「犯行をあきらめる」要素なのは「破るのに時間がかかるから」だと言われている。別のデータでは、侵入に2~5分以上かかると80%の確率で侵入を抑止できるという。

最新記事
この記事を読んだ方へのおすすめ
-
1421号(2020/08/17)2面
-
1367号 (2019/07/08発行) 21面
-
1348号 (2019/02/11発行) 12面
-
1336号 (2018/11/12発行) 3面
-
1332号 (2018/10/08発行) 5面