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≪テーマ : 木賃アパートは今後どうなるか≫
~ 築古物件、足りないのは些細なアイデア ~
◆今週のゲストコラムニスト◆
NPO法人モクチン企画 連勇太朗代表理事
≪Profile≫1987年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、現在は後期博士課程に在籍中。2012年にモクチン企画を設立、代表理事に就任。「モクチンレシピ」というデザインツールを公開し提供することで、木賃アパートの再生を推進している。
価値向上の仕組みを
木造賃貸アパート(木賃)は、高度経済成長に合わせて大量に建設された建物である。築年数が古く、設備も老朽化し、部屋が狭く人気がないといったイメージを持つ人も多いのではないだろうか。住人の高齢化も進んでおり、13%が空き家という時代のなかで、木賃アパートも例に漏れず空室が増えている。
また、空室率という問題を考えれば、木賃だけでなく比較的新しいロフト付き物件や3点ユニットのホテル型ワンルームタイプの物件など、競争力を急速に失ってきている築古物件は数多い。もちろん建て替えも有効な手段の1つだが、5年も経てば競争力を失っていく時代のなかで、「新築」に頼った賃貸経営は誰も得をしない消耗戦にしかならない。もう少し日本の社会全体で、築古物件の価値を向上・維持していくような取り組みや仕組みが必要ではないだろうか。
モクチンレシピとは
モクチンレシピは、そんな思いを持ったオーナー、工務店、リフォーム会社、不動産会社の人々のために開発されたウェブサービスである。従来の原状回復とは一味も二味も違うちょっとした改修アイデアをウェブで掲載し公開している。現在は60ほどのアイデアが閲覧できるが、毎月少しずつ増えており更新されている。1つの物件を改修するのに予算に応じて幾つかのレシピを組み合わせて改修を進めていく。
モクチンレシピには、「考え方」「使い方」「作り方」という3つのページがあり、順にみていくことで改修の発想を広げ、最終的には実際の施工方法や詳細な仕様などもチェックすることができる構成になっている。モクチンレシピを使って家賃1年分の改修費で、家賃を10%アップさせた事例などが今までにある。
固定概念を捨てる
これからのリフォーム会社は従来の「奇麗に直す」「使えればオッケイ」というレベルにとどまらず、物件そのものの価値や空間の特徴を生かしたリフォームを実践することが重要ではないだろうか。現場の状況をよく理解し、実際にモノが作れる会社こそ築古物件を生き生きと魅力的にする鍵を握っている。
そのためには「原状回復」や1Kや2DKといった「間取り」といった固定概念に左右されず、物件の魅力そのものを引き出すアイデアを携える必要がある。逆に言えば、アイデアのない会社は淘汰されていくのではないだろうか。モクチンレシピは、そんな停滞気味の築古物件マーケットをピリッと刺激していく、リフォーム会社さんのお助けツールに育てていきたいと思っている。

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