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【2026年版】リフォーム業界の性能向上リフォームの動きと傾向

【2026年版】リフォーム業界の性能向上リフォームの動きと傾向

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リフォーム業界基本の「キ」 性能向上リフォーム編

リフォーム業界基本の「キ」「性能向上リフォーム」編

はじめに:いま改めて問われる「性能向上リフォーム」とは何か

リフォームやリノベーションの役割が大きく変わっています。これまでのリフォームは、設備交換や内装刷新といった「見た目の改善」が中心でした。しかし近年は、住宅の基本性能を底上げする「性能向上リフォーム」が市場のキーワードとなっています。

とりわけ注目されているのが、「断熱リフォーム」「耐震リフォーム」といった住宅の根幹性能に関わる分野です。背景には、エネルギー価格の高騰、脱炭素社会への移行、既存住宅ストックの有効活用、そして新築物件における2025年以降の省エネ基準適合義務化などがあります。

さらに、政府による補助金支援も追い風となり、断熱改修や耐震改修を伴うリフォームが、単なる選択肢ではなく"前提"になりつつあります。

本稿では、リフォーム産業新聞社が継続的に掲載してきた「性能向上リフォーム特集」の事例を踏まえ、2026年時点での業界動向とその特徴を整理します。

【1】2026年の業界動向:性能向上は"特別"から"標準"へ

(1)数値化・見える化が当たり前に

近年の性能向上リフォーム事例に共通するのは、「数値で語る」姿勢です。断熱改修ではUA値やηAC値、耐震改修では上部構造評点や耐震等級などを明示し、改修前後の差を示す取り組みが増えています。

「断熱リフォーム」においては、単に「暖かくなります」ではなく、「年間光熱費が◯万円削減」「室温差が◯度改善」といった具体的な数値提案が営業の武器になっています。

事例:中島工務店(東京都青梅市)

「リフォームプランに、熱貫流率、建材による効果などを提示」

東京都青梅市を拠点に新築やリフォームを手掛ける中島工務店は、性能向上リフォームを推進すべく、大きく2つの取り組みを進めています。1つは10ページにわたる提案資料。顧客への提案では、まず赤外線カメラを活用して熱貫流率を計測し、家の温度を測る。資料には、計測値に加え、リフォーム時に使用する建材、現状の家、リフォーム後の家の断熱仕様を比較できる表を提示します。さらに施工イメージ図も載せて、断熱等級がどれだけ変わるかを一目で分かるように伝えることで、性能向上リフォームにつなげます。

中島工務店

性能の見える化は、消費者への説得材料になるだけでなく、メーカーや流通にとっても製品提案の裏付けになります。断熱材、窓、玄関ドア、換気設備などが"部材単体"ではなく、"性能パッケージ"として提案される傾向が強まっています。

(2)耐震と断熱の同時提案

性能向上の大きな特徴は、断熱と耐震を同時に扱うケースが増えていることです。従来は別工事として扱われがちだった両者ですが、スケルトン改修や大規模リノベーションでは一体的に設計されるようになっています。

耐震補強工事に合わせて壁を開口するタイミングで断熱材を充填する、窓交換と同時に構造補強を行うなど、工程の効率化も進んでいます。

特に中古住宅の買取再販市場では、「リフォーム 性能向上」を前提とした商品設計が進んでいます。購入希望者に対し、断熱等級や耐震評点を明示することで、資産価値の裏付けを行う動きが顕著です。

事例:大栄建設(神奈川県横浜市)

「UA値0.46(HEATG20)、上部構造評点1.5以上(耐震等級3)を目指す」

神奈川県横浜市を拠点とする大栄建設は、LIXIL(東京都品川区)の「SW(スーパーウォール)工法リフォーム」を活用した性能向上リフォームに力を入れています。気密性、断熱・耐震の数値目標を掲げ、中古戸建ての断熱性、耐震性を向上させるプランを提案します。

大栄建設

(3)補助金活用が提案の前提に

2026年現在、「リフォーム 補助金 性能向上」は検索需要が非常に高いテーマです。国の省エネ支援策や自治体の耐震補助制度などが整備され、事業者にとっては制度理解が営業力に直結します。

補助金を前提に資金計画を組み立てることで、これまで価格面で踏み切れなかった顧客層の背中を押すことが可能になります。単なる制度説明ではなく、「補助金を活用した場合の実質負担額」を明示する企業が成果を上げています。

事例:まごころ本舗(新潟県五泉市)

「長期優良認定住宅取得、次世代省エネ建材の実証支援事業補助金活用」

まごころ本舗(新潟県五泉市)は戸建て物件の買取再販で性能向上リノベーションを手掛け、年5、6件の買取再販物件を販売します。そのすべてで長期優良認定住宅を取得できる工事を行い、補助金を活用して施工する際の自社負担を減らし、買主の認知度をアップする施策を進めます。

まごころ本舗

【2】断熱リフォームの深化:部分改修から全体最適へ

断熱リフォームは、窓交換や内窓設置といった部分改修からスタートするケースが多い分野です。しかし2026年は、建物全体の断熱バランスを考慮した提案が主流になりつつあります。

(1)窓+外皮+換気の総合提案

断熱性能は窓だけでは完結しません。屋根・壁・床といった外皮全体、そして換気計画まで含めた総合設計が重要です。

「断熱リフォーム」に本格的に取り組む企業は、改修前の現況調査を徹底し、温熱シミュレーションを用いて最適な仕様を提示します。これにより、過剰投資を避けつつ、費用対効果の高い改修が可能になります。

事例:エヌ・シー・エヌ(東京都千代田区)

「ZEH、省エネ基準達成できるかを計算、現場調査も30項目超用意」

SE構法を軸とした木造耐震設計や、建築環境設計事業を手掛けるエヌ・シー・エヌ(東京都千代田区)は、買取再販マンションにおける省エネ性能の向上に力を入れています。買取再販大手のコスモスイニシア(同港区)や三菱地所レジデンス(同千代田区)と連携し、中古マンションの既存性能を計算し、ZEH水準や省エネ性能を満たす改修工事を提案することで、良質な物件の流通を増やしています。

エヌ・シー・エヌ

(2)ZEH水準・等級6・7への対応

新築市場で進む高断熱化は、リフォーム市場にも波及しています。断熱等級6や7を目標に掲げる事業者も増えており、「リノベーションでも高性能住宅は可能」という認識が広がっています。

これは単なる性能競争ではなく、「健康」「快適」「光熱費削減」といった生活価値を伝える提案へと進化しています。

事例:プレイス・コーポレーション(神奈川県横浜市)

「戸建ての買取再販でも断熱等級6、耐震等級3、新築並みの0.4以下のC値実現」

買取再販を手掛けるプレイス・コーポレーション(神奈川県横浜市)は、旧耐震基準の木造戸建てを性能向上リノベーションして再販を行います。数値目標は、UA値0.46以下の断熱等級6、新築に劣らない0.4以下のC値、上部構造評点1.5以上の耐震等級3以上。もちろん、すべての物件で実現できるわけではないですが、常に高い性能の実現を目標にすることで、他の再販物件との差別化を行います。

プレイス・コーポレーション

【3】耐震リフォームの再評価:命を守る投資へ

地震リスクの高い日本において、「耐震リフォーム」は重要なテーマです。しかし過去には、見えない部分への投資であるため提案が難しい側面もありました。

(1)耐震診断の標準化

現在は、簡易診断から詳細診断までツールが整備され、耐震改修の効果を数値で示せるようになっています。評点0.5から1.0へ改善する、といった具体的な説明が可能になり、顧客理解が進んでいます。

事例:田口住生活設計室(埼玉県さいたま市)

「坪数(最低30坪以上)×6000円」で数時間かけて建物診断」

水回りや耐震リフォームを手掛ける田口住生活設計室(埼玉県さいたま市)は、耐震診断の依頼が増加しています。2024年は診断依頼件数が前年の倍となる40件あり、そのうち30件弱で診断、耐震工事を行いました。

一回「坪数(最低30坪以上)×6000円」で床下上の点検を実施し、数時間(出張の場合6時間)かけて戸建ての家の中をくまなく調査、診断。そのうえで建物の状況や耐震等級を伝え、納得してもらいます。耐震リフォームの際は必ずこの調査を実施します。説明時にはX、Y(建物の各階・各方向)の上部構造評点の説明も行います。

田口住生活設計室

(2)断熱との同時施工で効率化

耐震改修単独では予算確保が難しい場合でも、断熱改修と組み合わせることで「快適性向上+安全性向上」という二重の価値を訴求できます。

また、国(国土交通省、環境省、経済産業省)が進めるリフォーム補助金の制度では、耐震や省エネを組み合わせた包括的改修が対象となるケースもあり、事業者にとっては提案幅が広がっています。

事例:増木工務店(埼玉県新座市)

「築10年のOB戸建てを断熱、耐震のリフォームを実現」

埼玉県を中心に新築を手掛けたり不動産事業も行う増木工務店は、性能向上リノベーションを強化しています。築10年の自社のOB顧客の戸建て物件をリノベーションし、モデルハウスをオープンしました。UA値は0.26、C値は0.4の断熱等級7、上部構造評点も1.5を超え、耐震等級3を実現しました。さらに、AI耐震診断とAI維持管理も導入し、建物の被害状況を即時耐震診断センサーがスマートフォンに知らせるシステムを入れました。

増木工務店

【4】メーカー・流通に広がるビジネス機会

性能向上リフォームの拡大は、メーカーや建材流通にとっても大きな商機です。

  • 高性能サッシや断熱材の需要拡大
  • 耐震金物・構造用面材の提案強化
  • 省エネ設備とのパッケージ化

単品販売から「性能提案型営業」への転換が求められています。流通企業が性能研修や勉強会を開催し、工務店を支援する動きも増えています。

事例:YKK AP(東京都千代田区)

「工務店やリフォーム会社の戸建てリノベの性能向上を支援」

YKK AP(東京都千代田区)は、「性能向上リノベの会」を運営し、全国の工務店やリフォーム関連業者が加盟しています。断熱や耐震、省エネ性能を向上する手段やノウハウを共有し、技術的な支援からプロモーションまで、中古住宅の性能向上リノベーション事業の拡大を支援し、近年では加盟店の性能向上リノベ事例を表彰することで意義を伝えています。

YKKAP

【5】性能向上リフォームによる住まい手のメリット

一般消費者にとって、性能向上リフォームは次のようなメリットがあります。

  • 冬暖かく、夏涼しい住環境
  • 光熱費の削減
  • 地震への備え
  • 将来的な資産価値の維持

「リフォーム 断熱」「リフォーム 耐震」といった検索ワードの増加は、消費者の意識変化を反映しています。

さらに、国や地方自治体が発表しているリフォーム補助金を活用すれば、負担軽減も可能です。事業者には、制度をわかりやすく整理し、信頼性の高い情報を提供する役割が求められます。

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【6】2026年以降の展望:性能向上を軸にしたリフォーム業界の再編

今後は、性能向上を標準化できる企業と、従来型の表層リフォームにとどまる企業との二極化が進む可能性があります。

  • 設計力
  • 現場施工力
  • 数値説明力
  • 補助金対応力

これらを兼ね備えた企業が、「性能向上リフォーム」を武器に市場で優位性を築くでしょう。

性能向上リフォームは、単なる技術論ではありません。住宅ストックの価値を高め、脱炭素社会に貢献し、住まい手の安心を支える取り組みです。

2026年、リフォーム業界における最大のテーマは、「性能をどう語り、どう実装するか」にあります。性能向上はもはや「先進的な企業の遠い取り組み」ではなく、業界の基盤そのものになりつつあります。

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