選んだ顧客のアフターフォローを徹底優良リピート客に育成 《リフォーム産業フェアセミナーリポート》
[セミナータイトル]
塗装で5億円イケル!ナンバー1地域密着企業になるための秘策、全部教えます。
志賀塗装 志賀晶文社長
福島県いわき市で創業60年以上の歴史を持つ志賀塗装。大震災に直面し、改めて地域密着企業としての責任を痛感したという。顧客の区別化は、万一の災害だけでなく、平常の地域密着戦略としても必要不可欠だ。
大震災の後に学んだこと
弊社は福島県いわき市にあります。創業・設立は1950年、父が創業者で私は2代目です。主な事業領域は塗装工事、住宅リフォーム、有料会員制の便利屋サービスで、6月10日現在の会員は882世帯、2012年の完工売上高は6億円です。
いわき市は原発から50キロ圏内にありますが、東日本大震災から3年以上たった今でも、時計の針が3つ混在している状況です。もう普通に生活している人たちもいれば、復興に向けて頑張っている人たちもいます。そうして、全く時間が止まってしまっている人たちも、まだいるのです。
大震災という未曾有の状況に追い込まれて、初めて分かったことがあります。弊社は2001年からリフォーム事業を立ち上げていまして、当然ながら地域密着型の仕事をさせてもらっていたつもりです。ところが震災の後、あっという間に組織が崩壊しました。
復興関連の仕事はたくさん来ますが、資材は足りないし、社員は離職してしまっています。電話を受けるスタッフはひたすら謝るしかありませんでした。何もできない、助けたくても助けられない。未処理案件の書類が毎日大量に積み上がっていくだけです。
そんな中、震災から3カ月ほどした6月中旬に1件のクレーム電話がありました。こういうときのための地域密着、そのための会員制度ではないのか、と。それでハッと気付かされました。
会員制度は09年から始めていましたが、それまで、本当の意味での自社のお客様は誰かということを決めていなかったのです。震災後に入った注文はとにかく全部受けて、律儀に受付順に処理しようとしていました。しかし本当に大切な顧客をしっかり絞り込んでいれば、社員を混乱させることもなく、お客様にも納得してもらえる順番がつけられたはずです。
災害時に一民間会社ができることは限られます。すべては助けられない。社員やその家族を守るためにも、1番のサービスは自社の存続です。万一の場合に備え、普段からお客様の優先順位を考えておく。これは全国どこの会社であっても、今後、必要なことだと思います。
顧客の心理を研究する
弊社のリフォーム工事受注に占める会員の割合は、09年のサービス開始以来、増え続けています。12年には工事件数ベースで会員の割合は58.9%、金額ベースでは88.9%になりました。もちろん震災の影響もありますが、やはり顧客を区別化していることが大きいです。
地域密着型を目指すのであればニュースレターは必需品ですが、弊社では震災後、配布件数を3000から500に減らしました。一般のOB客へは送らずに会員だけに特化したのです。名簿の整理です。会社にとってはリスクを伴いますが、顧客を絞ることによって、書きたいことが書けるようになりました。
誰もが対象のニュースレターでは、伝えたいことが散漫になってしまいます。ですから有料会員として登録してくださっているお客様を優先する、ということを社内で統一しました。価値観といいますか、自社が想定するお客様像をまず決める。そこから訪問への橋渡しという意味で、ニュースレターを通して顧客との接点を持つのです。
また年に1回、会員を対象にアンケートを行っています。工事が終わった時点の評価と、しばらくたってからの評価は当然違いますから、定期的に意見を頂くわけです。もちろんかったことも教えてもらいます。するとお客様からいろいろなアイデアが出てきて、そこからこちらが気付くことも多いです。
まさしく知恵は現場にあり、です。お客様全員にいい顔はできません。どこかで断ち切ることがスタートになります。その中で長くつきあっていきたいお客様の意見を聞いていくこと、それが重要になってきます。
囲い込み戦略
震災の経験から言えることは、災害後の応急、復旧工事の依頼は、何の告知や宣伝をしなくても向こうからやってきます。それらのお客様に、どこまで対応するのか。そのときだけの飛び込み客なのか、これから先、顧客となりうる要素を持っているか。その辺りを見分けて線引きし、何件かを優良顧客に育成していくことも大切です。
大手がなかなかできないリペア市場、修繕やハウスクリーニングなどから、次の段階のリフレッシュリフォームに入っていくという方法もあります。持ち家の人が必ず行うこととして、家の内外の掃除がありますが、そこは便利屋サービスの分野になります。便利屋や家事代行サービスの市場はまだ伸びしろがありますから、そこに安価で参
入して今後につなげる。
弊社では便利屋サービスのスタッフの給与は、その後のリフォームを派生させるための広告費と考えています。チラシで反響を取るのと同じです。とりあえず関係性のある分野に入り込む。ただ待つだけではリフォーム工事の受注は来ません。
以上の方針を踏まえた上で、自分の会社の強みをどうアピールしていくか。まずは創業からの年数、これは大事な要素です。歴史はお金で買えません。便利屋だけの利用でさえ、お客様は、長年地元で営業している業者だからと弊社を選びます。それが家を任せるリフォームともなれば、地元で実績のある会社に頼むのは当然。
逆に商品の性能だけに頼ったアピールはNGです。職人の腕がいいとか誠実だとか、漠然としたイメージ戦略も反響は低いです。それよりも見積もり以前の説明が大事になってきます。お金の問題よりも工法や手順で信用、納得してもらうことがポイント。診断書や保証書などのツールを常に開発したり、また現場見学会も効果があります。
とにかく、自分たちで選んだお客様をしっかりフォローすること。3年、5年、8年後まで、クレームも含めて、できるだけ細かくお客様の声を何度も丁寧に拾う。そこから「やはり、お宅に頼んでよかった」と言ってもらえるようなファンを増やす。新規顧客の獲得よりも、今までの顧客をどう維持し、優良なリピート客に育てていくか。そこに重点を置くべき時代が来ていると思います。

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