三井不動産リフォーム
三井のリフォーム住生活研究所所長 西田恭子氏
日本女子大学家政学部住居学科卒。大手建設会社の設計部に勤務した後、2007年に発足した三井のリフォーム住生活研究所所長に就任する。リフォームの設計は25年以上携わる。講演やセミナーで活躍する他、「リフォームでつくる幸せ家族」など著書も多数手掛ける。
150名余りの女性プランナーを組織する三井不動産リフォーム(本社・東京都新宿区)。これまで女性プランナーたちが、生活者の視点に立って手掛けてきた膨大な設計事例に専門的な分析を加え、一般ユーザーへの情報発信を精力的に行っているのが三井のリフォーム・住生活研究所だ。同研究所の所長を務めるのが、25年以上住宅設計に携わってきた西田恭子さん。リフォームの匠ともいえる西田さんに、家事ラクリフォームのポイントを聞いた。
暮らしてから気づく住まいへの不満
「家事の負担軽減は、常に大切にしてきたリフォームテーマの1つです」と話す西田さん。
ひと昔前なら、炊事、洗濯、掃除といった家事は、家族を支える裏方の仕事だった。住宅設計の際は、キッチンスペースにお金をかけるよりも、いかにリビングを広くとるかが優先されがちだった。ところが、女性が社会に進出するようになった10数年ほど前からは、使い勝手のいいキッチンや、家事がはかどる間取りなど、女性の視点に立った提案力が求められるようになってきた。
「家に対する不満は、その空間で暮らしてみて初めて気づくことが多いものです。だからこそ、私たちプランナーは、主婦やご家族がこの家でどんな風に暮らすのか?動くのか?を細かく想定しながら、プランづくりを行っています」(西田さん)
毎日の無駄な動作が家事ストレスに
例えば扉の開け方。左右のどちら側から開くかによって、扉の前に立った時の体の寄せ方が変わってくる。その人にとってどちらの方が戸を開けやすいのか?などを細かくシミュレーションし、設計する。多くの施主が要望する対面型のキッチン。しかしキッチンからリビングへ移動する際の動線を考えると、家事ラクとは言えない面もある。キッチンを横にぐるりとまわる動作が必要になるからだ。振り返るだけで済む壁付キッチンやコの字型なら、リビングまでの歩数が少ない。些細なことかもしれないが、日々忙しい中、台所に立ち続ける主婦にとっては、これが大きな違いとなる。
家事ラクのニーズは年代別に異なる
同じ家事ラクでも、年代によってニーズが異なる。年齢層や家族構成、さらにこれからどんな風に暮らそうとしているのか、によってプランを練る。
「調理するのが、奥様1人だけなら、キッチンの通路幅も80㎝程度で構いませんが、夫婦で料理を楽しむならもう少し広めに。来客が頻繁にあるご家庭なら、みんなでキッチンを囲めるようにアイランド型をおススメすることもあります。調理を手伝う人にとっても使いやすいキッチンを心掛けています」(西田さん)
対面型のキッチンをあえて壁付けにし、キッチンスペースにカウンターを造作した事例。リビングを眺めながら書き物やアイロンがけなどが行える。誰にも邪魔されない奥さん専用の家事スペースがあれば、集中して家事に取り組める。
「自分コーナー」で奥さんの居場所づくり
主婦の視点に立ったリフォームという点では、こんなリフォーム事例もある。60代の夫婦だった。定年を迎えたご主人が、リビングで多くの時間を過ごすようになった。これまでの居場所をご主人に占拠されてしまった奥さんのため、西田さんは「自分コーナー」を提案した。
「キッチンに、奥さん専用のデスクを設けたのですが、パソコンやiPadで調べ物をするなど、奥様が腰を落ち着けられるスペースを提案して喜ばれました」(西田さん)
このように、西田さん率いる同社の女性プランナーたちは、機能面だけでなく心理面においても、主婦の心を満たすリフォームプランニングを次々と手掛けている。
年代別 家事ラクリフォーム
西田さんは、「人生には5~6回リフォームのチャンスがある」と話す。 結婚、出産、子育て、子供の独立、定年退職とライフイベントを迎えていく中、暮らしの変化に合わせて住まいも同期していくことを提案する。家族の人数、構成、持ち物など、各世代間で大きな違いが出てくるもの。子育て世代の30代夫婦なら、増えていく物を収納できるスペースを増やす。子供が独立していく60代の世代なら、これまで子供が使っていたスペースを別の目的で活用するなど―――。ライフステージを合わせた空間活用を行えば、リフォームの可能性もますます拡がっていく。
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どんどんと増えていく靴や、ゴルフバッグ、ベビーカーなどを収納できるシューズクローク。家族はシューズクロークを通り抜けて廊下側へ出られる。来客の際は扉を閉めることも。すっきりと片付いた玄関で毎日を過ごせる。 |
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子供が帰宅した際、自分の部屋がある2階へ上がるには、子供は必ずリビングを通ることに。自然とコミュニケーションが取れる仕掛けに。 |
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元々窓のない浴室だった。子供が独立し、日の当たるスペースに設けられていた子供部屋が空いたため、浴室の移動が可能に。窓を開けて換気できるのでカビ対策になり、掃除がぐんとラクに。 |
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60代になると、夫婦の寝室が別でも構わないという声も。夫婦それぞれに自分だけの空間を作れば、掃除や片付けなど家事面において旦那さん自身に任せることもできる。 |
この記事はリフォーム営業マンを応援するビジネス誌
『Reform Sales Magazine リフォームセールスマガジン』 から抜粋しました。
(毎月15日発行/A4サイズ/28ページ/オールカラー)
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