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中古住宅の今。流通市場で倍増=25%を狙う

中古住宅の今。流通市場で倍増=25%を狙う

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ストック型社会はすでに現実のものとなっているが、その実現と対応のための政府の最大の取り組みが「中古住宅・リフォームトータルプラン」だ。中古住宅をめぐる動きが活性化している今、先んじて手をつけていくべき点を考える。

活発化する「不動産仲介+リフォーム」展開

 中古住宅市場をめぐる話題が、これまでになく活発化している。
 そんな中、建築、不動産の大手、中堅どころが続々、中古住宅市場へ参入している。不動産仲介とリフォームをワンストップで行う展開が、目立ってきている。
 政府も住宅市場の活性化を促進しようと、「中古住宅・リフォームトータルプラン」で昨春から旗振りを始めている。2020年までに住宅市場での中古住宅流通・リフォーム規模(2008年時点13.5%)を、倍増させて25%以上、20兆円規模にするのが狙いだ(図1)。

中古住宅流通シェアの推移
中古住宅の流通量自体には目立った変化はないものの、新築着工数が減少するために割合が上下している格好だ。

トータルプランで「認定」「インスペクション」普及

 中古住宅では今、空き家率が上昇する一方だ(図2)。2008年時点で13・1%、750万戸を超える。ポテンシャルの高い既存住宅=ストック住宅の流通活性化に、何としても活路を見いだしたいのが、各社共通の本音。それをけん引、後押ししようというトータルプランだが、その皮切りの制度が、

  • 「住宅性能表示制度」 耐震性、耐火性など10領域で性能を評価し認定。2002年から既築住宅にも適用
  • 長期優良住宅制度(2009年~)
  • 「低炭素建築物認定制度」(2012年~)だ。これらによって、住宅の性能が「数値化」されて、客観的評価を顧客に示せるようになった。
  • 住宅履歴情報「いえかるて」が2010年にスタート。リフォームによってアップした住宅の性能と価値を証明するものになる。

  • 不動産流通市場活性化フォーラム 
  • 既存住宅のリフォームによる性能向上・長期優良化に関わる検討会 
  • 中古不動産流通市場の活性化に関する調査検討業務
  • 中古住宅市場活性化ラウンドテーブル(予定) など、仕組み作りが進んでいる。

  • 中古住宅インスペクションの普及
  • 性能認定・ラベリング制度の充実
  • 瑕疵保険の普及・拡充 などが進むだろう。
種類別の空き家率の推移
賃貸用を中心に空き家は増加している。「その他の住宅」とは、諸事情によって長期にわたって不在になっている住宅、建て替えのために取り壊すことになっている住宅などを指す。
空き家の種類別内訳

不動産取り扱いでアドバンテージを

 市場が一気に動くのは、住宅金融市場をも含んだ取り組みだが、その制度化にはまだ時間がかかる。 
 そこですぐにもできることから始めよう。
 今後さらに進む制度化を見越して、住宅性能や価値を向上させるリフォームの提案は必須だ。住宅履歴情報も視野に入れた展開も、必要になるだろう。ただし住宅履歴情報制度は、まだプラットフォームが完全に統一されず、今後の課題も多い。ソフト取扱業者と連携を密にして、展開を図る必要がある。
 先にも触れたが、今目立つアプローチは、大手でも地方でも活発化している、不動産情報との連携だ。リフォーム施工業者が不動産仲介業務を始めた、という話題が少なくない。買い取り再販までいかなくても、不動産取扱業務があれば明らかに有利だ。社内で着手できない場合、地元の不動産仲介業者にアプローチし、提携する動きもある。

沿線や地域の個性も売りになる

 さらにもう1つ、今後は「中古住宅の『価値』を発掘する」ことに、大きな可能性がある。R不動産など、一部の業者の取り組みがその顕著な例だ。
 中古の家を消費者が買うのには、立地込みで「魅力を感じる」ことで意欲を持つはず。
「住む意味」「住む価値」を業者側は見いだして、アピールする必要がある。その家屋だけ、性能だけ、の単体でなく、また不動産として地域の利便性だけを「売り」にするのでも弱い。
 施行業者がこれまで持っていなかった、「そこで暮らす魅力と価値」を見る目が重要になる。地域・沿線まで含めた文化・土地柄、個性など、「生活の魅力」そのものを提案できれば、これは強い。海がある、里山に近いといった地域性も、資産価値となるはずだ。
 適正な中古住宅流通は、正当な住宅評価を前提とする。消費者は住宅の売買をスムーズに行えるようになる。制度化されれば、住んでいた家をより良く手入れして高く売ることができ、次の家に住み替える原資も得やすくなる。欧米のように、住居をライフステージに合わせてメンテナンスし、住み替えていけるようになるだろう。
 中古住宅市場という次世代のリフォーム市場のパイの取り合いは、すでに始まっているのだ。

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