姫路城。400年の歳月を経て、今もその白く優美な姿が人々を惹き付ける。世界遺産にも登録され、日本国内はもとより世界各地から多数の観光客がこの城を見に集まってくる。
しかし、この城の屋根を葺いている銀色のいぶし瓦の産地が同じ姫路市内にあることはあまり知られていない。
平成5年にユネスコ世界遺産に登録された「姫路城」。
平成の大修理では、大天守の瓦が葺き替えられた。
大天守のシャチ瓦、鬼瓦をはじめ、数々の光洋製瓦の瓦が採用されている。
いぶし銀の魅力を世界に
瀬戸内海に近い姫路城下から北上し、生野銀山へ向かう道、ここはかつて「銀の馬車道」と言われた。明治時代、銀山で採掘された銀を一刻も早く港湾に運ぶ、いわば高速道路のはしりだった。この沿道には、同じ銀でも銀色のいぶし瓦の「神崎瓦」の生産地があり、昭和40年代には生産業者が40社以上を数えたという。しかし今では、たった一軒光洋製瓦だけが生産を続けている。四代目社長の笹田奈都子氏が語る。
「三代目の父は、寺社や仏閣にこだわって仕事をしてきました。主婦からこの世界に入ってきた私は、いぶし瓦の美しさを屋根瓦にしか使わないのはもったいないのでは、と考えました。そこで10年前にインテリア事業部を設立しました。以来、いぶしの味わいを生かした内装材の開発に取り組んできています」
大阪のアベノハルカスでも使用
同社が、自社工場で生産している光洋瓦は、一般的な窯では、1日か2日かで焼成するところを、倍以上の4日かけてじっくりと焼き上げる。ゆっくり温度を上げた後、最高温度を長く保ち、ゆっくりと自然冷却させる。これによって、堅牢ないぶし膜と目の詰まった下地が出来、吸水率が低く凍結によるひび割れに強く、色も変わることの無いものが出来上がるという。

最新記事
この記事を読んだ方へのおすすめ
-
WEB限定記事(2025/06/23更新)
-
1653号(2025/06/16発行)4面
-
1653号(2025/06/16発行)4面
-
1653号(2025/06/16発行)1面
-
1653号(2025/06/16発行)10面