工務店中心に190社が加盟「性能向上リノベの会」
断熱や耐震、省エネ性能を向上する手段やノウハウを共有し、技術的な支援からプロモーションまで、中古住宅の性能向上リノベーション事業の拡大を支援する「性能向上リノベの会」。昨年10月の発足以来、全国の工務店やリフォーム関連業者約190社が加盟し、規模を拡大しつつある。同会を運営するYKK AP(東京都千代田区)の性能向上リノベ推進室の西宮貴央室長と会員であるリフォーム会社、スイコー(宮城県仙台市)の澤口司社長、アートリフォーム(大阪府吹田市)の大本哲也社長に性能向上リノベの現状と可能性について聞いた。
ホームページで性能向上リノベ独自の仕組みと基準について説明している
「性能向上」は建て替えより安い
――会を立ち上げたきっかけはどんなものだったのでしょう。
西宮 2017年から戸建性能向上リノベの実証プロジェクトにより、戸建て住宅の断熱と耐震をどこまで上げられるかの取り組みをしていました。その中で、ちゃんと断熱と耐震性能を高めても、コストは建て替えるよりも安いというのが見えてきて、これをもっと広めていきたいなと。そこで性能向上リノベの会を作り、ノウハウやツール、ブランディングなど事業を行うために必要な内容を一通り提供し、皆さんにその領域に踏み込んでもらいたいと考えたのです。
――まだリフォーム業界としては、水回りを中心としたリフォームを提供している会社の割合が多いですが、性能向上リノベへの取り組みは必要だと感じますか?
大本 耐震にしろ省エネにしろ、世間の考え方がこの5年10年で変化しました。それに我々も対応していくのは当然です。そこで、自社でしっかりスキルを身につけて、発信を含めた手本になっていけたらと考えています。年々、お客様から住まい性能を高める案件のご相談が増えているので、それに対する技術的な対応力を上げなければいけないということもあります。
――ただ、本格的に取り組むには、さまざまな知識や経験が必要だと思います。会の中ではどのようなノウハウを提供しているのでしょう。
西宮 例えば技術面では、現地調査チェックリストが60項目ほどあり、そのまま使うことができます。性能向上コスト早見表では、ある水準の性能を目指した時に、この地域でこの築年数だといくらになるかが分かります。ほかにも、金融面や提案書など、業務フロー別に必要なものをそろえました。
澤口 会員向けに性能向上リノベを多く手掛けるリフォーム会社が、普段お客様にどんな対応をしているかのセミナー動画があるのですが、それを見て実践している人は多いですね。セミナー動画には自分がよく知っている人も出ているのですが、プライベートでお酒を飲んでもなかなか語ってくれなかったところを全部公開していて驚きました(笑)。それは、社員みんなに見せましたね。
性能向上リノベについてのノウハウや知識を深める会員限定のセミナーやイベントを随時開催
リノベ事業者のニーズに応える技術支援を用意
業界の基準づくりと一般へのPR役に
――まだ取り組みを行っている会社が多くない分、ノウハウを共有できるのは良いですね。今後の性能向上リノベの可能性については、どのように感じていますか。
大本 リフォーム業界がより魅力的になっていくためには、こうした性能向上や技術性の革新を通じて、お客様にとって魅力的な空間や建物を供給できるかどうかが重要です。その1つの要素になってほしいし、私もそれに貢献したいと思います。
澤口 実績数が増えていけば、裏付けが進み、省エネ断熱リフォームはこうだねという物差しが提示できるようになっていきます。どこまで耐震性を高めれば良いのかという経済性や妥当性の判断を一業者でするのではなく、実績評価システムができるといいですね。お客様の予算との兼ね合いでの判断材料ができることを一番期待しています。
あとは、営業マンが長く働き続けられる環境づくりへの一助にもなればと思っています。これまでのリフォーム業界だと10年経っていたら疲弊してスピンアウトする人が多かった。性能向上リノベで技術力が磨かれて住まいに対するいろんなノウハウが身につけば、年を重ねて味わい深い担当者になって、結果長く働けることにもつながると思います。
西宮 我々は、大学の先生や研究機関、メディアなどのハブになりながらやっていきたいです。マーケットとしてまだまだこれからなので、事業者のスキルアップと一般の方の認知の両輪で、住宅業界の中で「きらりと輝く」領域になれると思うんですね。コロナ禍でいろんな打撃があったと思いますが、性能向上リノベには追い風が吹いています。
――性能向上リノベで1つのマーケットができることが理想だと思います。そのためには、取り組むプロの方を増やし、何度も言っているノウハウの共有が必要。初開催するリフォーム事例のアワードも、マーケットを作るためですか。
西宮 そうです。12月20日までに事例登録を募り、選考を経て来年3月に表彰式を予定しています。グランプリなどの事例を本にして、広く目にふれるようにしたいなと。
取り組みへのモチベーションアップにつなげたいのと、一般にも戸建ての中古リノベで性能を上げるというのはまだまだ認知されていないので、そこを広める目的もあります。
(聞き手/報道部長 福田善紀)
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