有料会員登録で全ての記事がお読みいただけます

ケイミュー"屋根屋さん"の仕事で行う断熱化

ケイミュー "屋根屋さん"の仕事で行う断熱化

ケイミュー
小森隆 社長
1104号 (2014/01/14発行) 11面
このエントリーをはてなブックマークに追加

ケイミュー 小森隆 社長

ケイミュー 小森隆 社長

住宅用外装材のトップメーカー、ケイミュー(大阪府大阪市)が設立10年を迎えた。同社は2003年、機械メーカーのクボタと松下電工(現パナソニック)の住宅外装建材部門が事業統合し誕生。特に屋根材は、カラーベルトがスレート屋根の代名詞になっているように、圧倒的なシェアを持つ。次の10年に向けた戦略を小森隆社長に聞いた。

外装で家の寿命を伸ばす

 ―――日本でもようやく住生活基本法などで、ストック住宅の質が問われる時代となりました。そうした中、家を守る屋根・外壁の重要性が増しています。
 最低30年、家が持つ間は外装も持つというのが基本性能です。家全体の寿命に外装も合わないといけない。だから、給湯器のように途中で取り換えることが前提になっていません。そうした考えの中で、外装のリフォームの1つが建物の寿命を伸ばす市場です。

 ―――塗装がまさしくそのリフォームですね。
 ただ、リペイントは塗料会社、塗装屋さんの世界ですが、私どもが行うリフォームの対象には、なりにくい。そこで、考えているのが価値を高めるリフォームです。それは安全・安心・快適という言葉で表せますが、安全・安心でいうと例えば耐震化促進。大阪でも南海トラフが発生すると大変なことが起きますから。それと快適でいうと省エネ化です。

 ―――省エネ化でいうと昨年には「低炭素社会に向けた住まいと住まい方」の工程表が出されるなど、市場の動きは追い風となっていますね。
 2020年に新築住宅の省エネ化を義務化しましょうということですが、その後はストックにも義務化を、という動きになっています。これは避けられない大きな流れでしょう。

 ―――省エネ化でいうと具体的にはどんな提案をされているのですか。
 快適さでいうと、屋根に使う「熱シャット工法」があります。家はご承知のようにどうしても2階が暑くなるのが、「熱シャット工法」を採用すると温度としては2、3度なんですが下がるのです。この2、3度の差が、肌で非常に涼しく感じる。既築の場合、どんどん断熱材を入れることは難しいですから、ご採用いただいたお施主さんには非常に喜んでいただいています。

 ―――屋根と下地の間に通気層を取る工法ですね。
 通気を取りますから、家が長持ちすることにもなります。さらに通期層の下に遮熱シートを引くともっと温度が下がります。野地板より下にある断熱材は、大工さんの世界になりますが、このシステムですと屋根屋さんの世界の仕事になるわけです。屋根屋さんの世界で、快適性向上の提案ができると。まだ、取り組んでいる方は少数ですが、私どもとお付き合いいただいている業界にとって事業拡大の機会にもなります。

 ―――屋根屋さんならではの、省エネ対策提案ですね。
 それで、今この工法に断熱材を入れて、省エネ等級4の取得に向けて動いています。すると国の基準に準じますから、外側から、断熱化ができるようになります。壁は外張り断熱をして、屋根はこの工法を採用する。事業の幅というか、機会を広げていただく、そういった提案をしていきたいと考えています。

 ―――棟換気もその考え方に準じたものがありますね。
 そうです。これは科学的に検証が必要ですが、屋根が熱くなりますと、夜に熱が室内に向けて放出されるのです。夜間に熱中症で亡くなられる方が多いですから、それを、通気を入れることによって防ぐ、そんな価値も期待できるのでは。

 ―――それは面白いですね。居室間の温度差で起きるヒートショックは大分言われるようになりましたが、熱中症は数が多いわりに、根本の対策が講じられていませんから。
 今夏にはTVで毎日のように、ご老人が熱中症でお亡くなりになられたニュースが取り上げられていました。そこで、屋根だけではなく壁もですが、通気を取る、そんな対策もあるんじゃないかと。

 ―――この夏の暑さで遮熱グラッサ(カラーベスト)も伸びたではないですか。
 すごい伸びです。やはり暑さを何とかしたいという要望です。私どもの想定よりも伸びていますから、お客様が求められているということですね。今は濃色をどんどん広げていまして、この春で7色展開になりました。

 ―――今までは外装のリフォームマーケットは、塗装以外は需要が顕在化されていませんでしたので興味深いです。ただ、この20、30年で1つ1つの商品の技術レベルがあがっていますから、交換すると生活が変わる商材は多いでしょうね。軽い屋根材である「ROOGA」などはその1つじゃないですか。
 「ROOGA」は、発売後もう7年ですか、最近は非住宅でも採用が増えているのです。幼稚園を耐震化するのに「ROOGA」に全部変えるなどですね。京都では、耐震化のため、軽い屋根にかえるだけで今年は10万円の補助を設けていまして、そこで「ROOGA」もご推奨していただいているんです。

 ―――京都だと景観に厳しいので、瓦に似た「ROOGA」が推奨されたのでしょうね。
 カラーベストや金属屋根は対象外ですから。京町家とかの再生でお使いいただいているみたいです。そうした点での需要が増えてきているなという実感はあります。

ロシアでサイディング販売好調 

 ―――ところで、海外は、シアトルとモスクワにサイディングを展開していたと思いますが。
 ロシア向けが結構伸びています。ロシアには元々日本と非常によく似た通気工法で、サイディングに近いものを張るという世界はあったのです。ただ、現地のものは非常に表面の塗装が悪く、すぐダメになると。だから、5、6年に1回は張り替えるか塗り替えないといけません。ところが日本のサイディングはそれ以上に持つことが分かって、採用が増えてきています。弊社の場合も、ソチオリンピックの事務所などに使われています。

 ―――現時点では、海外向けの展開はTOTOやリンナイなど、水まわりメーカーの方が進んでいます。外装はこれからですね。
 水まわりメーカーさんは、そのまま商品を据え付けると。BtoCの世界なのです。私どもは、例えば中国などは非常に難しいと思っているのですが、サイディングは外皮の一部なので、施工も含めて合わないとダメなのです。たまたまロシア向けは現地に工法があったのでよかったのですが、じゃあ世界どこでもそうかと言うと違います。現地の住宅様式に私どもの商品を合わせていくのは、コスト面も含めて課題は多いです。

 ―――独自に商品を開発するのはリスクも高いですからね。
 そうです。ただ、そうはいっても全く見込みがないかというと、この前もある外国の企業が弊社にきまして、私どもの工場を見るなどの交流はあります。日本のやり方は価格が高くなりますが、早く確実にできる利点があるのです。例えば東南アジアでは、レンガ作りにすると3カ月から4カ月かかります。それだと、ディベロッパーも資金を長く寝せてしまいますが、例えば1カ月から45日でできるとなると回せる数が増えると、ビジネスの機会が増えるのです。そういう意味では多少高くても可能性があります。

リフォーム前提の家を

 ―――では最後に、今後の10年に向けた方向性はどのように考えていますか。
 会社の方針として、ベースは住まいというところに置きますが、ただ、市場としては縮少するとみられるので、次の展開を考えなくてはならないと。自分たちの基本技術でどこへいけるのか模索しているところです。それは今私どもがお付き合いしている世界とは全く異なる可能性もあります。基本的には、屋根材と外壁材を今はいわるゆ板状の面材といわれているボード系で作らせていただいているので、スタンスはそういったボード系の展開、それを住宅だけでないところも考えていきたいです。

 ―――あとは、外装のリフォームをいかにして増やすかではないですか。
 私としては、リフォームを前提にした家ができないだろうかと思いますね。アメリカなどは、当然リフォームを前提として、買った時よりも中古に出すときの方が高く売れると。そこで、日本でも着せ替えサイディングができ、それで家の価値が上がるとか、そうした仕組みができたら面白いと思うのです。

 ―――文化に差がありますから、日本で浸透させるのはなかなか難しいですが、その考え方は重要ですよね。
 リフォームを楽しむことが重要です。なぜ楽しめるかというと価値があがっていきますと。最初の家は土地は別として、800万円とか1000万円ほどで、それを工夫次第で1500万円、2000万円まで価値を高められますよ、という提案があればと思っています。ただ、これは私ども単独ではできないことなので、少しでも仕掛ができればと思います。


会社概要
本社 * 大阪府大阪市 / 設立 * 2003年12月
社員数 * 1907名(2013年4月1日現在)

 

毎日ニュース配信中!リーフォーム産業新聞公式LINE

リフォーム産業新聞社の関連サイト

閉じる