塗魂ペインターズ 安田啓一会長
活動はすべて無償 社会貢献を通じ業界変革に挑む
日本初の塗装ボランティア全国団体として誕生した塗魂ペインターズ。10月10日には全国の会員店、関係事業者約300人が東京に集まり、盛大な結成披露宴が開催された。既に施設の塗装などを中心に37のボランティア実績と100社の会員を持つ同団体が今後どういった方向に進むのか。安田啓一会長にこれまでの歩みと目指す姿を聞いた。

10月10日に行われた結成披露宴の様子
営利目的の組織からスタート
――今は純粋なボランティア団体である塗魂ペインターズですが、もともとは日本ペイントの関係組織からスタートしたそうですね。
そうです。日本ペイントと施工業者が一体となって事業をしていく営利目的の組織でした。ホームページも作って、皆で一緒に受注をしようとしていましたが、会社の規模も地域も使っている材料もバラバラ、価格も揃わない。月に1回会議をしていましたが、話が進みませんでした。
――全国から集まるだけでも大変です。
それで段々と集まる会社も十数社が7社、5社と少なくなって、5社未満になったらやめましょう、解散という話になっていたんです。
――それがなぜ、ボランティア組織に変わったのですか。
会議でどうしていこうかと話していた時、現事務局長の池田さんが「皆でボランティアをやろう」と言い出したんです。
――営利目的の活動とまったく逆の話ですよね。
みんなびっくりしていましたよ。現副会長の原田さんも「この人、何を言ってるんだろう」と思ったらしいです(笑)。だって入会金25万円支払って、お客さんを獲得していこうという組織が急にボランティアですから。 ただ、塗装施工店の在り方についての話はしていまして、CSR活動が必要とは言っていたんです。また、日本ペイントもちょうどCSRとしてイーコトプロジェクトを立ち上げ、施設などの塗装をしようと打ち出していた時でした。
――なるほど、それで実際のボランティア活動が動き出したのですね。
その日は、「試しにやってみよう」、「とてもじゃないけどできない」という雰囲気が両方ありました。池田さんが言ったあと、シーンとしてどうしたらいいのかなという感じでしたよ。ただ、それまで1年ほど集まってきていましたから、1回やってみようと歩み出したのです。
――ホームページにも活動実績を載せていますが、2010年3月29日、30日の伊勢原幼稚園が最初の実績ですね。
17社、総勢38人が集まり、日本ペイントに提供してもらった遮熱塗料「サーモアイ」を屋根500平米に塗りました。泊まりで2日間でしたから各社の負担は大きかったです。しかもたぶん、それぞれの会社で職人の手間賃は払っていましたからね。
――しかし、幼稚園側からの感謝は大きかったのではないですか。
そうですね。しかし、塗装する前は結構疑われましたよ、「本当にボランティアなんですか」と(笑)。
――確かにそうですよね。すべて無償でやってくれるなんて、普通は思わない。そんな状況ですが、2回目の横須賀市の大津幼稚園につなげていったわけですね。
ここも日本ペイントに塗料を提供してもらった上、好川産業に刷毛を出してもらいました。ただ、メンバーは関東代表のみ。それは、四国のメンバーなどは飛行機ですから全国からは集まれないですよ。こんなことを何度も続けられませんから、メンバーを増やそうとなったんです。
――でもそうそうは増えないと思います。
増えないです。入会金の25万円もありましたから全部断られていました。それで25万円はやめましょう、日本ペイントさんの組織としておんぶにだっこはだめですから、独立させてほしいという話をしたんです。ただ、本部の運営などもありますから、年会費の5万円だけを残す形になりました。
公的組織化で会員増加
――塗装会社が行うボランティア団体として公的な要素が強くなったことで、状況が大きく変化したのではないですか。
はい。メディアが大きく取り上げてくれるようになりましたし、塗料メーカーのTOTOや日進産業が協賛してくれました。また、会員も増えましたね。ボランティア6、7弾ぐらいの時は50社ほどになっていたと思います。ホームページを見て最初の入会問い合わせが来たときは驚きました。会員のカルテットさんなどは私が電話を受けて入ってもらったのですが、社会貢献し、自分の姿を子供たちに見せたいというのですよ。こんな人がいるんだと、気づかされました。
――そのくらいの社数となるとできる範囲も広がってきそうです。
地域主導型に移し、関東長や関西長など方面長の人事に取り組んでいきました。方面長イコール副会長ですね。要は執行部の許可は必要ないですから、地域主導でやってくださいと、そこあたりから活性化してきました。
――全国となると3割出席の会則を守るのは大変ではないですか。
会議も含めて3割ですから、年に1、2回の会議に出席し、ボランティアを2回ほど行えば3割は超えます。そこまでの負担ではないです。人数が増えてきて、メディアで報じられてくると、塗魂ペインターズの会員に塗装を頼みたいというユーザーの方も出てきたんです。すると、仕事の受注のために所属したいという会社も現れてきた。そこで、3割出席の会則を作ったのです。
――会長自身は全ボランティアに参加されているのですよね。
写真係で撮った画像をアップして、こんな本気の団体があるということをアピールしています。やはり、各社のお金の負担も大きいですから、ボランディアで会社の経営が行き詰まったら私の責任です。少しでも活動を発信し、回り回って会社の本業にもプラスになればと考えています。
――各社ボランティアにはどのくらいの人数を連れてくるのですか。
何の強制力もないから親方1人のところもあれば、近くですと5、6人のところもあります。単なる負担ではなく、職人のモチベーションアップなどに連れていきたい、とならないとメリットはありませんね。

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