国交省制度設計者を直撃! 事業内容をわかりやすく解説
令和3年度の補正予算として542億円が計上された「こどもみらい住宅支援事業」。2050年のカーボンニュートラル実現と子育て世帯支援の双方を目的とする新たな補助事業にリフォーム業界が湧いている。特筆すべきは、窓一枚から補助するという敷居の低さ。策定に携わった国土交通省の担当者に背景を尋ねた。
(※)100万円(税込)以上の既存住宅を購入した場合は子育て世帯または若者夫婦世帯に最大60万円、その他の世帯が安心R住宅を購入した場合は45万円が補助される。詳細は記事最後の表を参照
「キッチン対面化で子供の面倒を見やすく」、補助対象の意図を打ち明ける
省エネ改修を推進する新規事業として始まった「こどもみらい住宅支援事業」がリフォーム業界で注目を集めている。新築で最大100万円、リフォームでは60万円が補助され、1月11日に募集が始まった事業者登録数は、約1カ月で2万5000社を超えた。
交付金は事務局ホームページを通じて事前登録された事業者に還付され、現金が一般消費者に還元される仕組み。対象となるのは2021年11月26日以降に契約が交わされた工事で、3月下旬から交付申請が始まる。
こどもみらい住宅支援事業事務局HP画面、事業者登録もHPで行う
留意すべきは、新築が子育て世帯または若者夫婦世帯限定なのに対して、リフォームには年齢制限がない点だ。法人でも構わず、例えば買取再販業者が中古住宅を購入してリフォームする場合も補助対象になる。
どこか一カ所の省エネリフォームこそ必須だが、追加で他の工事を行う場合も補助される。ただし、登録されたメーカーの対象製品を使っていることが前提だ。そのなかには例えば、「キッチン対面化」が補助対象に加えられた。クリナップは2月発売の対面化に配慮したキッチン「新STEDIA」が補助金の交付対象となったことをウェブサイトを通じてアピールする。
「新築に比べ、さまざまな世帯の人が使えるようにと考えました。例えば、おじいちゃんが孫と暮らすようになったので、キッチンを対面化して子供の面倒を見やすくしよう、というようなリフォームも補助対象に加えました」と制度設計に携わった国交省住宅局の松本潤朗氏は明かす。
例えば、給湯機を電気ヒートポンプ給湯機「エコキュート」に交換すれば、省エネ改修とみなされ、2万4000円が補助される。加えて、手すりを設置すれば5000円がさらに還付され、補助額は給湯機の2万4000円と合わせて2万9000円となる。他にもビルトイン食器洗機を設置すれば1万9000円、面積が2.8平米以上のドア交換で4万3000円など、工事内容によって補助額が定められている。補助額の合計が5万円以上になることが必須だ。
印鑑証明が不可欠も、建設業許可証と団体登録は求めない
事業者登録へのハードルは低い。印鑑証明や法人登記こそ不可欠だが、建設業許可は必須ではない。国交省が告示する住宅リフォーム事業者団体への登録も求めない。また、印鑑証明に加えて屋号と個人事業主の氏名があれば、個人での登録も可能だ。松本氏は「小規模の事業者を対象から外すということは考えていません」と幅広く事業者を募る方針を明らかにする。
なお、同省が統括していた「GoToトラベル事業」では、事業者による不正受給が相次いだ。この事業はどうか。この問いに対して松本氏は「なりすましを防ぐために印鑑証明を求めている。すべてを明かすことはできませんが、不正を防げるシステムになっています」と答えるに留めた。
予算は「グリーン住宅ポイント制度」の半額、なぜ?
2020年12月から約1年にわたり実施された「グリーン住宅ポイント制度」の後継制度である今事業。予算額は前制度の1094億円に対して542億円と約半額になったが、「子育て世帯等に新築の対象世帯が限られたことが理由。制度の実施期間を踏まえ積算した結果です」と松本氏は話す。
住宅の省エネ化推進、メーカーによる補助の対象商品が定められているという点は共通するが、大きく異なる点もある。前制度は工事発注者(主に消費者)が申請し、ポイントが還付されたが、今事業は事業者が申請し、まず事業者に現金が還付され、最後に工事発注者にそのまま還元する形を取る。事業者は事務局に補助対象となるメーカー製品の型番を使用したことを報告したり、図面や写真を提出することなどが求められる。
「グリーン住宅ポイント制度はコロナで疲弊した経済を立て直すことを目的に、ポイントを二次使用してもらい、活性化を促すことが目的でした。今回は『成長と分配』という政府の基本方針を住宅支援事業に落とし込み、1次取得者の住宅取得に関する負担を減らそうという提案になりました」と松本氏は経緯を打ち明ける。
2021年10月に発足した岸田内閣。その看板政策が「成長と分配の好循環による新しい資本主義」だ。「分配」に重きを置くという点が新政権の政策方針に合致する。
リフォームの工事対象にエアコンの設置が加わったことも特筆すべき点だ。シャープやコロナ、三菱重工冷熱、三菱電機、東芝ライフスタイル、ダイキン工業などのメーカー各社が製品登録を完了した。エアコンが加えられた理由については「コロナの感染対策です」と松本氏は話す。
空気清浄機能・換気機能付きのエアコン設置により最大2万4000円が補助されるため、リフォームと家電を兼ねる小売業者にとっても追い風になる。ビックカメラ住設事業室の前田浩則室長は「この制度をきっかけに家電とリフォームの両方を提案しやすくなる」と話す。
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