住宅ストック市場の新シナリオ13
keyword 04◆ リユース
空き家の解体が増える中、問題となるのが大量の廃建材だ。そんな捨てられてしまう建材をリフォームなどで使ってもらおうと昨年10月、長野県諏訪市に中古建材のリユースショップ「リビルディングセンタージャパン」がオープンした。ゴミにせず資源として有効活用するユニークなビジネスとは。
住宅の解体現場から「レスキュー」してきた古材を販売
引き継ぎたいものを売る
「解体される家から古材を集めてくることを『レスキュー(救済)』と呼んでいるんです。一見ゴミと思えるようなモノかもしれませんが、磨けばどれもかっこいい資源なんですよ」。こう話すのはリビルディングセンタージャパンの代表、東野唯史氏だ。
ショップ運営開始から約3カ月で「レスキュー」してきた建材は20~30トン分。
商品は一般的な建材ショップならば決して売らないであろう、傷だらけの床材や、大工の加工跡がそのまま残る木材など。どれも捨てられる運命にあった廃材だが、これを新たな住まいで使ってもらおうと取り組んでいる。
主力商品は無垢材。ただし、無垢材なら何でもかんでも売っているわけではない。販売するものの基準は「次の世代に引き継ぎたいかどうか」。「例えばラワンの無垢材が好きなのですが、これは4年くらい前の高度経済成長期に大量に使われました。でも今ラワンの無垢材を買おうとしてもなかなかない」(東野代表)
それ以外には、電動工具が普及する以前、手作業で加工された木材も積極的に販売する。「のこぎりの跡が残っていたりするのも多いのですが、今そういう製材をしていることはほとんどないので貴重」。一方で、現在でも大量に使われているベニア板などは「今残す必要がない」と判断し、レスキューしない。また、新建材も同様だ。
木材以外にはアイアンや大正・昭和の時代に作られたガラス。さらに古道具や古家具も取り扱う。集めたモノは水洗いや、ほこりを落とすなどして売り出すか、家具に加工して販売するケースもある。
古建具を組み合わせて作ったエントランス。扉の先にカフェがある
空き家の持ち主から依頼
仕入れルートはどこにあるのか。一つは家を解体するユーザーからの依頼。ある生活者からは「空き家を解体するんだけど、もったいない。捨てるのは忍びないので使ってくれるなら譲りたい」という依頼があった。
話してみると、その方は「誰にも借りてもらえず、家を守れなかった」という思いがあったという。「解体される方の中にも、できるなら誰かに使って欲しいという気持ちがあるものです。そういう思いもレスキューしてあげたい」
タダで譲ってくれるケースがほとんどだが、同社では住まい手の愛着があった場所の床材などを使って家具を作り「ギフト」としてプレゼントするケースもある。もう一つは住宅の解体業者などの業者から買い取ったり譲り受けたりする。
集めた商品は値札がつけられ実店舗のみで販売。価格は輸入品の古材などに比べて割安になるよう設定しており、「日本の古材を流通させるためになるべく価格を下げて使いやすいようにしたい」と東野代表は話す。
古材のモデル空間の一室。壁の仕上げや家具などに使える事例を体感できる

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