リフォーム産業新聞は2024年のリフォーム業界の動向を予測した。キーワードは断熱改修、中古住宅流通、現場のデジタル化だ。
ひとつ目のキーワードは断熱改修だ。政府はカーボンニュートラル社会実現のため、住宅の省エネ化を推進。その一環として過去最大級の高額補助制度「先進的窓リノベ事業」が昨年スタートし、断熱改修が広がり始めた。補助制度は継続することが決まり、今年はより一層需要が高まっていきそうだ。
社会課題解決にビジネスチャンス
断熱改修需要高まる
リフォーム業界団体も旗を振り始めた。日本住宅リフォーム産業協会(通称ジェルコ・東京都中央区)は、関連団体と連携して「ひと部屋断熱」の推進を始めた。リビングなど、特定の一室の床・壁・窓を断熱化。高性能エアコンを導入して、冬場でも健康的な暮らしを実現するリフォームを、割安な価格で広めていきたい考えだ。
断熱改修は「2025年問題」という社会課題を解決するためにも有効だ。この問題は団塊の世代が2025年に75歳を超えることにより、社会保障費の負担増大や医療・介護体制の維持が困難になると言われるもの。断熱改修は健康の維持・増進効果があるとの調査結果も出てきており、健康寿命の引き伸ばしにつながれば、そういった社会問題の解決にも寄与する。
潜在需要は計り知れない。既存住宅の断熱性能は乏しく、平成11年基準(次世代省エネ基準)を満たす住宅は全体の約1割しかない。昭和55年基準と平成4年基準で約6割、無断熱は約3割もある。断熱改修がリフォーム市場を拡大させる起爆剤になりそうだ。
仲介業に参入相次ぐ
第二の動向は改修業者の中古住宅流通市場への参入だ。近年、不動産売買仲介業に進出するリフォーム事業者が増加している。大手ではナサホーム(大阪府大阪市)、OKUTA(埼玉県さいたま市)、オノヤ(福島県須賀川市)などが相次いで参入。一般的な不動産会社と異なり、中古住宅の仲介時に本格的なリフォーム提案ができる点に競争優位性がある。
成功例も増えてきた。北海道でリフォーム事業を手掛けるカワムラ(旭川市)は2020年に「中古住宅」の専門店を開設し、現在までに道内3カ所に出店。年間7億円ものリフォーム売り上げにつながっている。
この流れは2024年も加速しそうだ。背景のひとつは新築住宅の価格高騰。国交省の調べによれば、新築の工事原価は2015年度を100とした場合、2022年度は約120に上昇。新築に比べて手頃な中古住宅に注目が高まっており、リフォームして住む若い世帯が増えていきそうだ。
人手不足デジタルで克服
第三の動向はリフォーム現場のデジタル化(DX)だ。今年は住宅業界の働き方改革関連法の猶予期間が終わる年。4月から時間外労働の上限規制が始まる。ただでさえ人手不足のリフォーム業界。対策で重要なのがデジタル化による生産性向上だ。
すでに現場では対策が始まっている。例えば静岡県の有力リフォーム会社、鈴与ホームパル(静岡市)では、現場調査の採寸にScanat(スキャナット)というアプリを活用し始めた。iPadで空間を撮影すれば各所の寸法が自動計測できる。作業時間の短縮や、測り忘れなどによるロスタイムを減らすことで、生産性向上につなげたい考えだ。
また、最近は工務店がOB宅の点検時にドローンを積極的に活用し始めた。診断時間の短縮に加えて、早期改修提案によるリフォーム獲得に乗り出すケースも目立ってきた。
本紙が昨年実施した調査ではリフォーム事業者の従業員1人当たりの生産性(年間売上高)は4368万円と前の年に比べて11%増。DXが進めば今後さらに伸びていくだろう。
業績を拡大させるためには人材採用や教育ももちろんだが、デジタル技術でムダやムラをなくし、1人当たりの生産性を高めることが重要だ。
コロナ禍の巣ごもり需要が減った今、受注が減ったとの声もある。しかし、長期視点で見れば今後改修対象のストックは増大していく。先述したような潜在需要を掘り起こせれば、さらなる市場拡大が期待できる。
本紙は2024年もリフォーム事業者に本当に役立つ情報発信を通じて、業界の発展に貢献していく。
(編集長 金子裕介)

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