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日米のリノベーションビジネスの違いとは?

日米のリノベーションビジネスの違いとは?

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 中古住宅の仲介とリノベーションと住宅ローンをひとまとめにして提供する「ワンストップサービス」が国内で流行している。既存住宅の流通やリフォームの先進国であるアメリカのリノベーションビジネスとどのような違いがあるのか。米国の不動産流通に詳しいワシントン大学木材製品国際貿易研究センターの笹谷大輔氏に寄稿してもらった。

笹谷大輔氏 ワシントン大学 木材製品国際貿易研究センター笹谷大輔氏
ワシントン大学 木材製品国際貿易研究センター

日本でリノベビジネスを取材

 日本では最近、中古のマンションや一戸建てを購入した上で改修工事を施してから住んでみようという人たちが増えているという。そんな中「ワンストップ」型のリノベーション業者が破竹の勢いであるというのだ。数社にお話を聞く機会を頂いたのだが、二つの大きく異なるビジネスモデルが目についた。

 一つ目は住宅購入者のニーズに沿って一連のサービスを行う業者である。物件探しからリノベーションのデザイン、施工、さらにはローンの相談までをも包括的に提供している。もう一つは日本版のフリッパー。既存物件を買い取り、魅力のあるリノベーションを施してから販売する大手の業者だ。

米国は売り主が改修する

 私は普段はアメリカの住宅・リモデル市場を観察しているので、いやでも応でも日米市場の違いが目につく。ワンストップと呼ばれる業務体系は日本の特殊な中古住宅市場の制度下で進化したものであり、北米では珍しい。以下にアメリカの事情を簡単に説明したい。

 一般的にアメリカでは、中古住宅の売り手がリノベーションをする。なぜなら、その方が高く売れるからだ。何事も見た目が八割である。訪問者をうならせるようなデザインがキッチンやバスルームなどに施された家ほど人気が出る。多くの住宅購入希望者は、改装の必要がなくても引っ越して来られる「ムーブインレディー(すぐに入居が可能)」物件を探している。

 オープンハウスを何軒も見て回り、エージェントを立てて気に入った物件に入札する。奇麗にリノベーションされた物件は購買希望者が殺到し、入札競争で値段が吊り上がることも有る。リノベーションに関しては専門業者が行う場合もあれば、売り主がDIYをしている場合もある。

 アメリカでは「7年に一度は家を買い替える」と言われ、家の売買を繰り返しながら人生を栄転する。将来的に家を売却する日のことを意識してか、経年劣化から家を守るために、あるいは見映えを良くするために、普段からあれやこれやとリモデルを行う。アメリカでのリモデルは、自分たち家族のためにも行うが、未来の買い手のために行われることも多い。

米国では常日頃から家を売ることを想定してリフォームする傾向がある米国では常日頃から家を売ることを想定してリフォームする傾向がある

フリッパー=買取再販業者

 ただ、色々な事情があってボロボロの家をそのままの状態で売り出さざるを得ない場合もあるだろう。そういった物件は、手慣れた住宅購入希望者が買い取る場合もあるのだが、フリッパーと呼ばれる業者が買い取ることが多い。フリッパーは競売物件やボロボロの家を購入し、リノベーションを施し、より高額な値段で売りに出す業者の俗称である。こういった手法は「フィックス・アンド・フリップ」と呼ばれており、大きな儲けが期待できる一方、リスクが非常に高い。

 大概のフリッパーは山っ気の多い個人や零細企業であり、実際の工事は下請けに頼む。中古住宅は一軒一軒の状態が異なる訳で、業務に規模の経済が働きにくく、大企業は積極的に関わらない。一方で日本では、大企業のバックアップがなければフリッパーになることは難しいと思われる。なぜなら、瑕疵や耐震などを含めた不動産取引に関わる大きな責任が生じる可能性があり、そういったリスクを甘受できるだけの体力が必要だからだ。

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