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- > 《中古住宅特集》八清、戸建て再販「経年美」が価値に
「家の経年変化や歴史は、新築では得られない価値」と話すのは八清(京都府京都市)の西村孝平社長。同社では京都市内の戸建て住宅の再販事業を手掛ける。年間販売戸数は約60戸で、県内トップレベルの実績を誇る。
同社が販売する物件の約8割が、築80~100年という「京町家」。性能面では、耐震性能や断熱性能など、現在の新築住宅に比べれば低い。しかし同社ではこのような古い戸建てを買い取り、価値を高めて販売することに成功している。
西村社長は再生のポイントを「経年美」と話す。特に重要視するのは、柱や梁、建具など古材を古い材料と捉えるのではなく、経年美と捉える点。これらは極力新材に取り換えずに生かす。
「例えば伝統工法で建てられ、築100年が経過した柱の黒光り。こういうものは新築では出せません。経年変化する味わいのあるものが町家にたくさんあります。それをうまいこと引き立てる」
京町家のリノベーション。柱、梁、建具などは極力残して再生
設備や床・壁・天井などはリニューアルされ、出来上がった物件は新材と古材が組み合わされた独特な空間。「うちに来られる方は『建売のような均一化されたものではない家が欲しかった』という声が多い」
同社では改修コストに約1000万円かけている。販売価格帯は3000~4000万円。周辺にある約20坪の土地込みの新築住宅と、それほど価格は変わらないという。再販物件は割安感をメリットとして訴求する企業が多い中、同社では価格ではなく再生の内容で勝負する。
今の新築にはない個性のある中古住宅再生に成功しており、新築と同等の価格でも販売できている。さらに京都という立地や町家という希少性も合わさって物件の価値を高めている。
十人十色のリノベ
再生を担うのは10名の「コーディネーター」。ユニークなのは「経年美」を生かすという再生コンセプトをベースにしながら、各人が自分のアイデア、趣味・嗜好を生かして十人十色の中古物件を再生する体制。
例えば安田光徳コーディネーターは「大正ロマン」という再生物件を作る。この物件は純和風な町家ではなく、外国人が自分で改修したような半洋風な雰囲気を持つ。
女性コーディネーターの浜田真以子さんは「ウサギプロジェクト」を推進。小さくてコンパクトな家をウサギ小屋と捉え、シンプルな仕様が特徴の女性向けの再生物件を作っている。「コーヒー好きが作った、おいしいコーヒーが楽しめる家『フィカソ』なんていうものもありますよ。これがまた人気。作った商品が良ければ売れます。冗舌な営業トークはいらない。モノで勝負」(西村社長)
同社はリフォームのみの請負も行っているが、対応できないほどの依頼が増え、現在は注文を断らざるを得ないほどの人気だ。「建築と不動産は相いれないところがありましたが、これをうまいこともっていったら、仕事はまだまだある」

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