AIJAXIS 間中恭弘 代表
抗菌・抗ウイルス商材の選択基準を設定
感染症対策につながる空間除菌に一定のルールを設けるべく、一つの任意団体が立ち上がった。その名も除菌隊(東京都港区)。代表を務めるのは、断熱塗料の開発などを行ってきた「AIJAXIS」の代表・間中恭弘氏だ。間中代表に、除菌隊の概要や設立の経緯を聞いた。
保育園の除菌で安心空間を
――除菌隊の概要を教えてください。
塗装・リフォーム業界の有志による任意団体で、活動は大きく2つ。「会員による除菌ボランティア」と「塗装業界に除菌の正しい認識を広げる」ことです。ボランティアでは、全国の保育園に無料で空間除菌を実施。具体的には、初めに無機質の材料で壁面抗菌を実施。次に植物由来の有機除菌材で空間除菌を行います。最後に、時間が経過すると菌が落ちてきますから、保育園の方に加速過酸化水素を使って机の上や床を清掃と消毒してもらいます。すでに東京の世田谷区の保育園で施工が決まりました。
――ボランティア先に保育園を選ばれたのはなぜですか?
塗装業界に身を置く者として、私は長らく脱VOC(揮発性有機化合物)を訴えてきました。日本の総人口が2050年には1億人を切ると言われていますが、それにはVOCも少なからず影響していると思うからです。そして、その過酷な2050年という時代を担っていくのは、今はまだ小さい子どもたち。その子どもたちが今、ウイルスにより不自由な園生活を強いられています。中でも気になったのが、保育士さんたちが皆マスクを着用していること。子どもは大人の表情を見ながらあらゆることを学んでいきますが、マスクをしていてはその表情が読み取れません。そこで、健やかな教育環境を作るお手伝いが少しでもできれば... と思い、保育園での除菌ボランティアを開始しました。
――なるほど。そして、そのボランティアを実施するためにも、除菌の正しい知識が必要になる、と。
おっしゃる通りです。また大前提として、空間除菌は「建物のプロ」でもある塗装・リフォーム業界がけん引していくべきだという想いもあります。しかし、各メーカーが開発している抗菌塗料は、あくまでも自社の研究所によるエビデンスしか出せていなくて主張が異なります。おまけに、そうした塗料をお客様におすすめする立場の塗装会社の人間が、抗菌・除菌・殺菌などの違いすら理解できていないという課題があります。屋内の空間除菌には、「清掃除菌」「壁面対策」「空間への除菌剤噴霧」という3つの対策が必要。除菌隊では、そうした抗ウイルスの基礎知識から、安心して使える薬剤・塗料まで、共通の認識を持てるようにマニュアルを用意し、定期的にZoomによる勉強会を実施して学びを深めています。
「除菌隊」のホームページ
アメリカの基準を採用し、いち早く行動
――薬剤の選定などはどのように行っているのですか? 薬剤や塗料の抗ウイルス効果は、コンセンサスがなかなか得られない状況だと思いますが。
日本の環境省にあたる機関であるEPA(米国環境保護庁)が「問題ない」と判断したものを採用しています。その一つが、先のボランティアでも使用している加速過酸化水素。これは、ダイヤモンド・プリンセス号の除菌にも採用されていて、アメリカでは病院などでの使用も許されている薬剤です。日本の厚生省は、効果を保証するのにどうしても時間がかかる。しかし私としては、コロナ禍の社会にいち早く貢献したいという想いが強くありました。そこで、「国内に答えがないなら海外の答えを採用しよう」と考えを切り変え、EPA基準を軸に置きました。
――除菌隊に入会すれば、そうした情報も得られるわけですね。
はい。標準化されたルールの中で、生活空間を安全にする救世主として、塗装・リフォーム業界が社会に貢献できればと考えています。また、この業界には、地域に対して貢献したいという想いを持つ人が数多くいるはず。保育園は全国に2万ほどありますが、塗装会社の数はもっと多いので、1社が近くの保育園の空間除菌をするだけで、何十人という子どもたちの笑顔が増えます。入会には、1人年間350円のボランティア保険以外に一切費用はかかりませんし、今後は否応なく抗ウイルス系の商材を扱っていかなければならない時代になりますから、業界のため、社会のために、1人でも多くの方に共感・入会していただきたいと願っています。

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