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長谷川工業、広がる「はしご・脚立」の可能性

長谷川工業、広がる「はしご・脚立」の可能性

長谷川工業
長谷川義高 取締役副社長
1453号(2021/04/19発行)21面
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長谷川工業 長谷川義高 取締役副社長長谷川工業 長谷川義高 取締役副社長

「ちょっと便利」が現場を変える

世界中のルイ・ヴィトン直営店に脚立を卸している日本メーカーがある。はしご、脚立のパイオニア長谷川工業(大阪府大阪市)だ。ブランドのイメージカラーを施した脚立は、空間イメージを損なわず営業中にも使用できると好評。ほかにも、片手で開閉できるワンタッチバーを採用した脚立など、デザイン・機能性ともに、従来の枠にとらわれない可能性を広げる商品を次々と開発している。長谷川義高取締役副社長に、新商品着想のきっかけや今後の展開について聞いた。

片手で閉じられる軽量脚立

――片手で開閉できる脚立が好評のようですね。

片手でワンタッチバーを持ち上げるだけで脚立の脚部を閉じられる商品です。コンセプトは「片手で閉じる。片手で運ぶ。現場が変わる」。今年1月にリリースしたばかりですが、開き止めを両手で操作する手間がないので、現場での移動が多い職人さんに「作業効率が格段に上がる」と喜んでいただいています。

――脚立本体も軽いのですよね。

「脚軽」というシリーズでは、丈夫さはそのままに、従来製品と比べて最大30%の軽量化を実現しました。当社では、日頃から利用者さんにさまざまな意見を伺っていますが、「軽くて丈夫な脚立がほしい」という声がとにかく多かった。そこで、材質をはじめ、細かな部品の重さまで徹底的に洗いなおしたところ、脚立をはしごにするための回転金具がかなり重いことがわかりました。しかし実際は、はしご機能はあまり使われていない。それなら、と回転金具不要の「専用脚立」にしたところ、大幅な軽量化が実現しました。おかげさまで2011年の発売以来、10分に1台ペースで売れ続けています。

長谷川工業 片手で開閉できる脚立片手で開閉できる脚立

「色」が変えたマーケット

――これまで常識とされていた部分に手を加えられたのですね。

当社は、父がはしごの卸売りからスタートし、高度経済成長期の波に乗ってシェアを伸ばした会社ですが、私は異業種からの入社です。だから、業界特有の常識が染み込んでいないことが功を奏した部分はあると思います。価格競争真っただ中の2000年頃に入社したのですが、他社との差別化でまず着手したのが色。踏み台=シルバーが常識でしたが、試しに黒い脚立を作ってみたら、ホテルや百貨店などから好評で。色を変えただけなのに、マーケットまで変わったことに少し驚きましたね。

――確かに、黒い脚立ならホテルの営業中に使っても違和感がなさそうです。

同様の理由でご縁ができたのがブランドショップです。当時、知人がルイ・ヴィトン心斎橋店にいたので、「イメージカラーの脚立を作ろうか?」と提案したらすごく喜ばれて。そこから1年後にはルイ・ヴィトンジャパンから正式に依頼がきて、10年後には全世界の直営店でうちの脚立が使われるようになりました。ホームセンターや金物屋さんだけではない、新たな販売チャネルが生まれたのです。

――色という常識を破ったことが躍進のきっかけになったのですね。

そうですね。そこからデザイナーに依頼して、ディテールまでこだわった「デザインシリーズ」が誕生しました。このシリーズは流通にもこだわって、それまでメインだったホームセンターや金物屋には置かず、定価で販売してくれるインテリアショップや百貨店などに置いてもらうようにしました。インテリアとして活用されるユーザーもいます。

―― BtoCのマーケットを広げられた。とはいえ、やはり需要が大きいのは建築業界ではないですか。

おっしゃる通りです。そこで、デザインプロダクトだけではなく、機能面も追及していきました。私がいつも言うのは「お客様がほしいのは脚立ではなく、高所で安全に作業ができる商品」。そう視点を変えると、形も機能も発想の幅がぐっと広がります。

――そうして軽量シリーズや片手で開閉できる商品が生まれたのですね。今後はどのような展開を考えていますか。

はしご・脚立の可能性を広げていきたいですね。たとえば、IoTを使った商品とか、はしごのシェアリングサービスなんかも面白い。AR事業部では、iPhoneなどのデバイスで現場を映しながら、必要な製品サイズが確認できるサービスもリリースしました。専用アプリなしで使えるのがポイント。踏み台は建設現場に欠かせないアイテムですから、これからもより安全、便利を追求していきたいと思います。

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