アルダグラム(東京都港区)が、2020年7月から提供開始した現場で働く職人向けの施工管理アプリKANNA(カンナ)が好調だ。サービス提供から3年で利用社数は2万社を突破した。写真や図面をクラウド上で管理する機能やチャット機能などが、ID数無制限で利用可能。ITに詳しくない職人でも簡単に使える操作性が特徴だ。専門性の高い現場作業での手間を削減するサービスの概要と事業の今後について、渥美翔吾COOに聞いた。
専門工事会社中心に拡大
使いやすさとID数無制限で拡大
渥美翔吾COO
── まずKANNAの特徴を教えてください。
現場と事務所にいる人、協力会社と元請けが簡単にコミュニケーションを取ることができ、その上、図面や写真をクラウド上で共有することもできます。写真を選択して報告書がすぐ作れるなど、できることは他の施工管理アプリに近いです。ただ、あらゆる業種でも使えるように柔軟性のある設計でターゲットを幅広くしているのが特徴です。
── 3年前のリリース時には、すでに施工管理アプリが建設業に普及しつつあったと思いますが、事業の可能性がまだまだあるとみていたわけですか。
そうですね。周りのプレーヤーを見渡した時に、工務店やリフォーム向けといった住宅会社やゼネコン向けといった大規模工事を数十社で管理するようなアプリはたくさんありましたが、単発で小さな工事事業者向けに展開しているところはあまりなかったので、そこに大きな可能性を見いだしました。
── リリースから3年で2万社というのは普及スピードが速いです。他の施工管理アプリとは違う、KANNAのもつ具体的な強みを教えてください。
大きく4つあります。1つめは、使いやすさに重きを置いていて、何より現場の方が使いやすいUX(ユーザーエクスペリエンス)を磨いていること。2つめは、カスタマイズの柔軟性が高く、会社別に開発したかのようなものが使えるのが特徴です。工務店やリフォーム会社、塗装会社、ゼネコンというように、それぞれにフィットするものが作れますし、物流や不動産管理もできる。
3つめは、発行ID数無制限。建設業界では多くの協力会社と連絡を取るので、ID数に制限があると使い回しも起こりがちです。そうなると、誰が情報をアップロードしたかも分からず、情報の漏洩にもつながります。4つめは、オプションで個別に開発も行っています。KANNAオープンAPIを使って会社の基幹システムと連携ができます。
── 利用企業2万社のうち、建設業の割合はどのくらいでしょうか。
8割くらいを占めています。なかでも内装工事の会社が一番多く、次に電気や塗装専門工事の会社が続きます。三井デザインテックや東急Re・デザインといった大手リフォーム会社や不動産関連会社のほか、インフラ系や物流、製造業でも導入いただいています。
共通するのは「現場ワーカーの方々向けのプロジェクト管理アプリケーション」だということ。建設業界では施工管理アプリになりますが、現場の方々すべての業務をシステムの力で効率化して、本来の業務に集中できるようにしていこうということです。
カンナのように手間を削りたい
── 建設業界の現場にはITやアプリ操作に関して苦手意識をもつ人も多いですが、問題なく利用できるのでしょうか。
いかに現場にいる方が直感的に使えるかが重要だと思っています。当社の開発担当のほとんどが、ゲームアプリやマンガアプリといった、カスタマーが簡単に使えるアプリ開発を手掛けており、そのノウハウを業務アプリに応用することで使いやすさにつながっていると思います。
企業ごとに自由な設計が可能で、ITに疎い人でも難なく使えます。
── 海外進出も積極的と伺いましたが、短期間で多く導入されている理由はどこにあるとお考えでしょうか。
海外展開したタイミングがコロナ禍で、海外の営業もすべてオンラインで完結するという時流の良さもあったと思います。興味を持たれた会社さんとZoomで商談をして、導入を決めていただいたところが多くあります。
東南アジアでは、日本の建設業や製造業へのリスペクトが強く、日本の商品というだけで信頼度が高いというのが実感です。
現在、フィリピンやマレーシアといった東南アジアとインド、ヨーロッパやオーストラリアでも使っていただいています。去年の英語版を皮切りに、タイ語、スペイン語版とリリースしてきましたが、日本より伸び率は高い。
海外展開して分かったことですが、建設や不動産領域は他国でも商流が近いので受け入れられやすいんですね。汎用性の高さから、国境を超えても少し違うところをカスタマイズすれば良いという手軽さが受けたかもしれません。
── 今後、どのような事業展開を考えていらっしゃるのでしょうか。
引き続き海外展開は進めていきますが、中でも一番注力しているのが東南アジアで、7月にはタイに駐在員事務所を作りました。国内でも、建設領域はまだまだ課題を抱えている所が多く、そこに対して積極的にサービス提供していきます。いろんな業種に手広く当たっていきたいですね。
私どものようなサービスでは、いかに頻度高くアップデートして商品を磨いていくかが重要です。KANNAは月10回リリースしていて、おそらく他社と比べてもかなり多いと思います。何か不具合の報告があれば、その日のうちに修正していますし、このスピード感は強みだと思っています。
会社名 | :アルダグラム |
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代表者名 | :長濱光 |
本社所在地 | :東京都港区 |
設立年 | :2019年 |
従業員数 | :81人(2023年7月時点) |
事業内容 | :プロジェクト管理アプリ「KANNA」の開発・提供 |

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