AGCコーテック 三井昭人 代表取締役社長

設 立:1963年10月10日 / 代表者:三井 昭人 / 資本金:3億円 / 社員数:60名 / 本社:東京都千代田区
施工件数、年間5000棟を目指す
高耐久のフッ素樹脂塗料の住宅分野では日本屈指のシェアを誇るAGCコーテック。AGCを母体として創業したのが1963年。今年で半世紀を迎えるが、近年は住宅リフォーム市場に特化し、全国展開する提携店舗「メイクupショップ」を活用し、今後さらに市場拡大を図る。フッ素樹脂塗料の現在と今後の取り組みを、同社代表取締役社長・三井昭人氏に聞いた。
フッ素塗料専業50年の歴史
―――御社は今年では50周年だそうですね。まずは、会社の来歴を教えてください。
AGCコーテックの前身は、「ボンタイル株式会社」という会社です。吹き付けタイルのパイオニアであるドイツ・クノール社のボンタイルを国内で製造販売する企業として1963年に設立しました。親会社はAGC旭硝子です。AGC旭硝子は明治時代にガラスの製造から始まりましたが、現在では、大きく分けてガラス分野、電子分野、化学分野の3つの事業展開をしています。化学分野の中では、フッ素を扱う化学技術が培われていきました。
その「フッ素」を利用して、1982年に世界初の常温硬化型塗料用フッ素樹脂「ルミフロン」の開発に成功しました。このルミフロンを原料に弊社では、フッ素塗料「ボンフロン」の開発を行いました。1983年にフッ素塗料の製造販売を開始して、1988年に社名を「旭硝子コートアンドレジン株式会社」に変更、フッ素樹脂塗料専門メーカーになり、2007年に現在の社名「AGCコーテック株式会社」になりました。
フッ素樹脂塗料の特性は「長持ち」
―――フッ素樹脂塗料はどういった特長があるのでしょうか。
耐候性・耐紫外線性などに優れているので他の樹脂の塗料と比べて長持ちするのが特長です。アクリルシリコン塗料と比べて2、3割ほど値段は高いといわれますが、簡単に言うと、ライフサイクルコストが安いという利点があります。
20年で、シリコン塗料が2回塗り替えするとしたら、フッ素塗料では1回の塗り替えで大丈夫です。塗料では珍しく、10年のメーカー保証も付けています。気候条件によって異なるため、それ以上何年持つとは言いにくいのですが。30年以上塗り替えしていない建物もあります。
―――具体例は何かありますか。
例えば東京の後楽園ホールは1983年に塗って、30年経った今でもいまだにピカピカです。新宿伊勢丹は1985年に塗りましたが、同じく塗ったときそのまんまです。塗装を劣化させる最大のものは紫外線ですが、紫外線の強い沖縄の海辺にある「ちゅら海水族館」は、13年経ちましたが、新品同様です。去年行って触ってきましたがツルツルでしたよ(笑)。
―――フッ素はなぜ耐久性に優れているのでしょうか。
そうですね。化学物質によって安定性が異なりますが、フッ素は安定性がとても高い物質です。例えば、フッ素樹脂の「テフロン」は、フライパンでもおなじみですが、溶けたりしませんよね。一方で安定しているということは硬くて加工がしにくく、くっつきにくいということです。そこでフッ素の耐久性と、プラス、常温でも塗れるくらいの柔らかさ、両方のいいところを組み合わせたのが弊社のフッ素樹脂塗料なんです。
弊社の塗料は3つのフッ素元素を集めた形で、それが一番紫外線に強く、フッ素分子同士もがちっと結びついています。色々な顔料とも混ぜやすいので、色を自由に作ることができます。リフォームでは、もともとの家の色を大切にしたいから、クリアタイプを使うという方も結構いらっしゃいます。
施主も驚く美しい光沢
―――見た目ですぐ分かる優位性はありますか。
とにかくツルツル、ピカピカになるということ。光沢が違いますね。私の実家でも屋根を試しにやってみたんですが、本当にもう、お天気の日にはピカピカに輝いていてびっくりしました。地方の施主さま廻りをすることがあるのですが、「新築よりきれいだ」と仰ってくださる方もいらっしゃいます。それはさすがに誇張すぎるとは思いますが、喜んでいただけるのはうれしいですね。
―――フッ素塗料の住宅での業績はどれくらいでしょうか。
全体で30億円のうちの約10%です。大型建築物でももともと現場塗装が多かったのですが、サイディングなどの建材メーカーが、製造工場で塗装する際に、耐候性の高い「ボンフロン」を採用してくださるようになって、工場で塗ることが多くなりました。一方の現場で塗装する住宅用塗料は「ルミステージ」という製品で、この6、7年、力を入れて販売を行っています。今、市場は大型物件を含めて新築はそれほど多くはありません。改修・リフォームがメーンになっていますから、ここに力を入れるには、各地でがんばっている施工業者の皆さんと手を携えてやっていかなければなりません。そこで、ルミステージを取り扱える認定施工店「メイクupショップ」を全国で展開しています。
「メイクupショップ」を全国に展開
―――「メイクupショップ」は熱心に取り組んでいらっしゃるそうですね。今は何店舗になるのでしょう。
全国で700店舗弱です。まだまだ新規の参加店舗を探したいというのが正直なところです。それは、数を目標にしているのではなく、ディーラーも含めて、三位一体になって一緒にやってくれるところを探したいからです。「ちょっと使ってみようか」ではなく、事業の柱として扱ってくださる方。というのも、フッ素塗料の性能が十分に発揮されるには施工がとても大切だからです。同じ志でやってくだされば、性能も発揮されて施主さまも満足してくださると思います。そのために弊社もサポートシステムを立ち上げています。
―――メイクupショップは、住宅を専業にしていますか。フッ素樹脂塗料専門なんでしょうか。
ほとんどが住宅専業ですね。大手ショップさんでは年間に数百棟扱う方もいらっしゃいます。弊社のフッ素塗料だけの専属の方も多くいるのですが、一方でシリコンも使っているという方も多くいらっしゃいます。ただ、過去に比べると、弊社のフッ素樹脂塗料が重点的に使われるようになってきています。
―――値段の高い塗料は、PRに使うだけで、実際は少し安いシリコン塗料が売れているというイメージがありますが、ルミステージはどうでしょうか
それが、最近メイクupショップのトップの皆さんのお話を伺うと、営業の考え方が変わってきています。弊社のフッ素樹脂塗料だけをやる、事業の柱にしたいという方が多いですね。塗装市場全体でも、だんだんいいもの、高級なものをしっかりと選んで、安心して使ってもらおうという傾向ではないでしょうか。そのほうが、ショップも安心ですし、施主さまも安心できます。施主もこうした考え方に共感してくれる方が増えているようです。

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