ノダ 野田励 常務取締役
高齢者や身体障害者に配慮した「バリアフリー」が定着して久しいが、この市場は今後も拡大すると見込まれている。いち早くこのジャンルを具体的な市場と捉え、積極的に開発・販売を行ってきた建材メーカーのノダ。同社の常務取締役で、介護・バリアフリー製品の商品開発を手掛ける野田励氏に、具体的な製品を例に挙げながら、話を聞いた。
トータルで「暮らし」を提案する姿勢
―――御社のバリアフリー・介護の製品は「アトリア プラスアルファ」のラインアップの中でこのところ一気に充実していますね。
「アトリア」自体は今年で5年目になりますが、「アトリアプラスアルファ」がスタートした背景にはリーマンショック以降の市場に対する危機感がありました。ぼんやり商品を出していても売れず、なんとかしないとまずいなという議論が社内的にもあった時期です。もちろん商品ひとつひとつに、メーカーとしてのこだわりはあるにはしても、しょせんドアはドア、クローゼットはクローゼットに過ぎず、お施主さまには細かいことは関係ない。ですから、私たちも単品単品で何がどうだという話ではなく、「暮らす」という大きな枠組みの中でお施主さまにご提案をしていきたい、そう考えるようになりました。
―――トータルでの暮らし提案を実現するラインアップということですか。
「アトリア」は、その流れの中で生まれたものです。「アトリア(ATELIA)」とは、「Advanced Total cordinate Equipment for Living Art space」の略です。アートというと言い過ぎなのかもしれませんが、暮らすということに、視覚的なものも含めて一歩進んだものを提供しようというものです。また、"工業製品"ではなく、"工房で作ったもの"のイメージで見てほしいとも思って"アトリエ"を喚起させる「アトリア」にしたというのもあります。
そこで、お客さまには「プラスアルファ」の発見をしていただきたいと。それは例えば、プラスアルファの使い勝手のよさであったり、視覚的な格好よさであったり、お使いいただくことで何かしらプラスアルファの"いいこと"を付加価値として見つけていただけるようなご提案をしよう、それがスタートのコンセプトです。
安心と安全から始まる「バリアフリー」
―――その中でバリアフリーの位置付けはどうなっていますか。
「安心・安全に暮らすため」のプラスアルファとしてのご提案です。ユニバーサルデザインを採用していますので、高齢者だけでなく、障害者の方にも使いやすいシリーズになっています。
―――具体的には。
例えば、今一番引き合いがあるのは、衝撃吸収床材の「衝撃吸収フロアネクシオ」、両方から押して開けられる扉の「ケアシスト」の2つです。
「衝撃吸収フロアネクシオ」は、滑りにくく万が一転んでも、けがの程度が軽く済むように開発したものです。簡単に言えば床材内部のクッションが衝撃を吸収するというものですが、床材の表面側と裏側に二種類のクッションを入れている点が他と違うところです。衝撃吸収フロアネクシオの衝撃吸収能力は、日本建築学界の基準値をクリアしていますが、ひとつの床材で同程度衝撃吸収できるのは畳しかないそうです。
また、一般的な防音フロアは、防音性・遮音性を高めるために、厚いクッションを床材に入れることはありますが、そうすると、床がフワフワしてしまって、歩行感が悪くなるんです。船酔いしてるみたいという人もいます。しかし、より安定した歩行のため、さまざまな工夫を凝らした衝撃吸収フロアネクシオにはそれがありません。
―――現状では戸建てよりも施設での施工例が多いんですかね。
今のところ介護施設などの施設が中心です。特に介護保険適用施設になると、施設内の転倒事故をはじめ、けがにはデリケートで、配慮されるようです。そこで滑りにくく万が一転倒した場合でもけがをしにくい衝撃吸収フロアネクシオを採用されるケースが多いですね。
―――対象とする人たち以外からも反響があったとお聞きしました。
思わぬ喜びだったんですが、衝撃吸収フロアネクシオを入れたフロアだと、そこで働いている人たちから「疲れにくくなりました」というお声をいただきました。革靴よりもゴム底靴の方が疲れないのと同じ理由で、言われてみれば確かにそうなんですけど、想定していた人だけでなく、そこで生活している人皆さんにとっていいと思っていただけるのは本当にうれしいです。

社名 * 株式会社ノダ / 代表者 * 代表取締役社長 野田章三
本社 * 東京都台東区浅草橋5丁目13番6号
事業内容 * 木質・無機質建材、中質繊維板、合板の製造、輸入、加工および販売
創業 * 1902年(明治35年)6月 / 資本金 * 21億4100万円
株式 * 東京証券取引所 市場第2部
従業員数 * 891名(平成23年11月30日現在)

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