ナサホーム 江川貴志社長
大阪を本拠地に8店舗を展開するナサホームは水まわりリフォームを専門に対応する子会社を作るなど、新展開を進めている。昨年度は東日本大震災の影響などで売上高が計画値に届かなかったものの、今期は順調に推移し、グループで前年度比15%増の29億円の売り上げを計画する。同社の江川貴志社長に話を聞いた。
前期売り上げ25億1000万円
―――前期は28億円の売り上げを計画されていましたが、結果はいかがでしたか。
新築も含めて会社の売り上げは25億1000万円で、リフォーム単独で言いますと23億5000万円でした。
―――やはり震災の影響が大きかったということでしょうか。
前年度比で7%のアップでしたが1店舗出店しての数字としては見込み違いです。震災の影響もありましたが、一番頭を痛めたのが、一昨年の暮れくらいから連続した女性社員の離脱ですね。辞めたわけではないのですが、7000~8000万円受注する女性社員が育児休暇や燃え尽きなどで5人ほど、営業から離れました。
―――そうした状況下で今期の状況はどうですか。
弊社は12月決算なのでちょうど今、半期が終了したところでして、現状前年対比で1割増くらいです。昨年の4~6月は悪かったのでその分が回復できているのと、抜けた社員の穴もジワジワ埋まってきています。
―――ところで、昨年1月に大阪のど真ん中であるこの梅田阪急ビルオフィスタワーに本社を移しましたが、その効果は出てきていますか。
当初は「差別化」「ブランディング」「リクルーティングでの優位性」などを考えて出店しました。実際、出してから、色々な地域のお客様が来店してもらえるなどの効果が出ています。ただもう少し客単価向上につながると思ったのですが、その効果はあまりなかったですね。客単価は100万円のラインから変わっていません。ブランディングと実際にきているお客様のミスマッチがあります。
―――ではブランディングを変えていく可能性もあるのですか。
そうですね。阪急は関西では高級なイメージなのであまりそこに偏らないようにしようと考えています。チラシも黒をバックにし、高級マンションの販売チラシと同じイメージ戦略を取り入れてきましたが、ちょっと行き過ぎているのかなと。もう少し親しみを出していこうと思います。
―――店舗の広さはショールーム部分の90坪を含め150坪ほどでしたよね。家賃はどのくらいですか。
家賃は電気代や空調費なども含めてですと月420万円くらいです。家賃だけでは380万円ほどです。
―――今までも御社は駅前のビルの中への出店ばかりで、路面店での出店はしていないですよね。それはどういった考えを元に行っているのですか。
こわいから、ただそれだけです(笑)。例えば六甲道店を出す時に、駅前再開発のビルの中とロードサイドの両方が候補に上がったのですが私自身がやはり慣れていないので、踏み切れませんでした。要はその地域の人がチラシを見て、「あっ、あの中にあるのだな」と頭の中で残れば、もしチラシを捨てても、リフォームを考えた時に「そうそう、あそこのビルの5階にあったよな」と思い出せる立地にしているのです。でもロードサイドですと地図を見ないと行けない、とかがありますよね。その辺で集客数が変わって来るのかなと思います。千里セルシー店などでイベントを行うと120組くらい来ますね。
水まわりで3店舗展開
―――最近始めた新しい取り組みはありますか。
実は昨年、子会社を作りました。「みずらぼ」という会社なのですが、水まわり工事専門店です。昨年の7月終わりに1号店を市内都島区にオープンしまして、今年3月と5月にも出店しましたので、合計3店舗です。各店舗に2名ずつ営業マンを配置していまして、店舗の広さは35~50坪くらいです。商品としてはキッチンを7~8台、バスを2台ほど並べています。
―――水まわり専門店の出店は高級層を狙っていた御社のイメージがありますので意外です。キッチン、バス、トイレの水まわり商材を安く売るということですか。
それが、安い商品ばかり売れると思ったのですが、ナサホームよりも高級キッチンが売れるのです。
―――店舗戦略と矛盾していますね。
不思議ですよね。でも理由は簡単で、ナサホームで1000万の工事する人は、予算がどうしてもオーバーしがちになり、最終的にキッチンの値段をやや下げるケースが多い。でも「みずらぼ」に来るお客さんは、キッチンだけの工事をするために来ていますので、ものすごく凝るのですよ。だから、高級キッチンがよく売れます。「みずらぼ」の場合、月の売り上げが1000万円で黒字になるので、今のところ初期の赤字はありますけど、経営が楽です。
―――年間売り上げは1店舗あたり、いくらで考えていますか。
1番最後に出したのが5月ですので、まだその店舗は本格的ではありませんが、他の2店舗は月に1500万円くらいの売り上げです。先月は3店舗で4200万くらいの売上高でした。通期で多分、3億円の売り上げになると思います。
―――出店の目的はなんですか。
最も大きな目的は営業マンの短期育成です。ナサホームで育てると、2~3年かかっていまして、それが今、新規出店の足かせになっているのです。お金に余裕があり、銀行の融資もまだ受けられるこの状況で、人さえ育てれば出店していけるのに、二の足を踏んでいます。それは社員の成長がまだ追いついていないためなのです。ところが、水まわり商品を集中して取り扱えば、商品や現場の知識も含め、3ヵ月で十分身に付くわけです。あとは営業のセンスだけの問題。人によっては半年かかりますが、短期で人を育成し、高速出店していく構想です。
―――ではみずらぼに社員を送り込み、成長すればまた戻しての繰り返しをしていくわけですね。
そうです。2年くらいナサホームに在籍し、あまり成果を上げられなかった人間を、「みずらぼ」に行かせたら、日常的に100万円ほどの見積もり、クロージング、契約をやるので、本人がとても明るくなり自信がつきました。
―――「みずらぼ」は今後どのくらいのペースで出店する考えですか。
目標は年間3~5店舗です。一方、ナサホームは年1店舗で考えています。今は「みずらぼ」に営業マンを2名ずつしか配置していないですが、3人ずつ配置して、1店舗売り上げ2億円くらいが目標ですね。これから多少チラシも増やすので損益分岐点も上がるでしょうが、1200万くらいの損益分岐点で、2000万売る店舗ができればナサホームよりも高収入になるかもしれません。
―――出されるのは、やはり関西周辺ですか。
今のところはそうですね。というかまだ関東とかは考えていないです。

所在地 * 大阪府大阪市 / 設立 * 平成8年10月7日 / 売上高 * 25億1000万円 資本金 * 1600万円 / 従業員数 * 96名(グループ全体) 店舗数 * ナサホーム8店舗/みずらぼ3店舗

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