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「日々の暮らし」のエコリフォームで日本再生へ

「日々の暮らし」のエコリフォームで日本再生へ

三菱総合研究所
小宮山宏 理事長
1021号 (2012/04/17発行) 4~5面
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インタビュー(2)
三菱総合研究所 小宮山宏 理事長

お金が得する提案も断熱改修普及のカギに

先進国は自動車やテレビなどのモノの世帯普及率が高い。それらの買い替え、更新といった需要――、つまり「普及型需要」にとどまっていることが先進国の需要不足の正体と小宮山氏は指摘する。それは日本も同様で、経済を発展させるためにはいまだ形を見せない『創造型需要』を掘り起こして、新産業を生み出す必要があると話す。

 ―――先生はバブル崩壊後「失われた10年」、あるいは「失われた20年」でなく、実は「失われた40年と呼ぶべきだった」とおっしゃられていますね。
日本がGDP世界第二位の経済大国となったのは1968年です。しかし、その後40年、普及型需要は伸び、GDPは成長したけれども本来の発展の基礎となる「創造型需要」を生み出すことはできずにいました。ずっと足踏みしていた。その意味で「失われた40年」と呼ぶべきだったのです。

 ―――先ほども申し上げましたように住宅リフォームマーケットもこの25年間伸びていません。リフォームは少なくとも「失われた25年」かもしれません。
ぼくは終始一貫して・省エネルギー・と言ってきました。しかし、ものづくりにおける省エネ化はすでにかなりの技術が進んでいます。だから例えばセメント産業や鉄鋼業でさらにそれを進化させるのは困難。一方で日々の暮らし、例えば家庭やオフィス、輸送などで使われるエネルギーは実は全体の57%を占めており、しかもここではまだまだ十分省エネ化の可能性があるのです。

 ―――今年は住宅業界でスマートハウスが大人気で、断熱性や省エネ性という意味では新築住宅はすでにある一定のレベルまで技術進化しています。でも問題は5000万戸以上あるストック住宅の品質なんです。ペアガラスの普及が2割なんてね、世界の先進国レベルでは笑いものです。
断熱が悪い家で冷房をじゃんじゃんと使うのは犯罪的と言って良い。こういうアイデアはどう? 国で建築の一枚ガラスの製造を禁止してしまうんです。

 ―――いいですね。どうも日本人の心の奥底には鎌倉時代の吉田兼好が唱えた「夏をもって旨とすべし」が根付いているようです。寒い時はどてらを着て、コタツに入り寒さをしのぐという精神文化があるのでしょうか。それこそ"新徒然草"を作らないといけないのかなと思います。
そうだと思いますね。よく、冬は断熱性の高い家がよいけれど夏は断熱性が高いと暑くてだめ、という考えの人がいるんだけど、それは間違いなんです。こういう考えを持っている人がいることの方が問題が大きいと思いますよ。

 ―――夏は家に熱が入りこんでくる。断熱性の低い家をエアコンで冷やしても省エネにはならないんですね。
問題は熱伝導です。夏は外から熱が入ってきます。断熱というのはその外からの熱を入らなくする、ということなのですが、けっこうわからない人がいます。例えば、外が35度で、中が28度だと、熱伝導で外から熱が入ってきますが、この熱を入れないということが断熱だとわかっていません。

 ―――薄っぺらな家の中でエアコンをガンガン効かせている家が多いですよね。
夏をもって旨とすべしというのは冷房をしないという意味。エアコンを使わないで済むならそれでいいと思いますが現代ではみんな冷房を使っている。そこがわかっていません。次は御社で「断熱リフォームで夏をエコで涼しく快適に過ごす家」というツールを作ったらどうですか?

 ―――アドバイスありがとうございます。夏前までには何とか作ります。
断熱が悪いというのは夏もダメなんだよという内容のものです。ポイントはそこ。そういうことをわかりやすく伝えることが大切なんですよね。

 ―――残念ながら生活者の住まいに対する意識が低いことが問題です。
あとはやっぱりリフォームすれば「お金が得するよ」と言ってあげることが重要です。自分で初期投資するのが怖い。そこだと思うんですよ。高齢者といっても30年位平均余命があるんですから、その間にリフォームで省エネ投資すれば結局は数百万円儲かりますよという話が良いと思います。例えば太陽電池は国債発行して国が買っちゃえと。10年間は発電のお金をもらって国は元が取れたら、そのあとあげてしまえといった話です。ファンドがやってもいい。それ以外のリフォームも同じような議論ができるのではないでしょうかね。

 ―――欧米先進国では省エネ化した住宅には税制の優遇をするといったモデルもあります。
そうですね。省エネすれば国は得するし、健康になって医療費が減った分、税金を安くできる。これでバランスが取れます。今は建築の省エネ基準の義務化の前倒しが実現する可能性が高い。前田武志国交大臣もやると言っています。大きなビルから始まると思いますが、20年には全部義務化。工務店も省エネ基準を満たしたものしか建てられなくなりますが、これも効くと思います。

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