朝日ウッドテック
取締役 営業副本部長 上野幾夫氏
2012年に発売した無垢材挽き板化粧フロア「ライブナチュラルプレミアム」など、木にこだわった商品で知られる木質建材メーカー、朝日ウッドテック。「床は大事」という冊子を出し、「床文化」を提唱する同社の上野幾夫取締役・営業副本部長に話を聞いた。
好調さを相殺した円安影響
―――消費増税前で、新築住宅の着工数は好調ですが、御社の今年度の売上高の見通しは。
今期は320億円に届くかどうかです。昨年度は280億円だったのですが、実は上期は当社のピーク時に迫る勢いがありました。ただ昨年11月くらいに職人さんをはじめ配送、資材不足で価格が高騰して来て伸びが止まりました。4月以降の住宅ローン減税の控除額アップを見越して先送りにした住宅会社さんが多く、そこが潮目となったようです。また、資材のほとんどが輸入材なので、このところの円安も逆風になっています。
―――いままでのピーク時とは、いつ、どのくらいの数字でしょう。
ちょうど消費税が5%に上がる前の1996年は、売上高が335億円、利益も15億円くらいありました。その後、創業以来初めて赤字になりました。売上高で言うと230億円くらいでしょうか。
新築70万戸台の時代が続く
―――今年度、それ以降の新築着工数の予想はどう読んでいますか。
2013年度は結局98万戸くらいでしょうか。2014年度は85~87万戸で動き、その中でも上期がよくて下期は下がるのではないかと見ています。ただ心配なのは、「2015年問題」です。15年10月の増税で75~78万戸くらいにまた落ちて、その後は70万戸台の厳しい時代が続くのではないかと思っています。
―――新築着工数が厳しくなると御社の展開はどうなるでしょう。
弊社の顧客はハウスメーカーさんがほとんどで、これまでは新築主体でした。しかしこれから「新築70万戸台」の時代になれば、今より20万戸以上も減る訳ですから、リフォーム、リノベを中心として進めていかざるを得ないと思っています。
―――床材のリフォームでは、最近は床暖房が好調なようですが。
弊社はガス会社さんと組んで床暖房対応フローリングを開発しましたが、これでリフォーム比率は上がりました。一時は年間15億円くらいまでの売り上げになりましたが、最近は10億円くらいで推移しています。
業界全体で「床が大事」の啓発が必要
―――「ライブナチュラルプレミアム」が好調なようですね。
新築住宅着工数に左右されにくい付加価値の高い商品として投入しましたが、坪単価が高いため、全体の利益に貢献しています。
―――売上高の中に占める比率はどのくらいでしょう。
今、床材は当社の85%くらいを占めており、月30万坪くらい出ています。このシリーズは月2万坪弱くらいなのでまだわずかですが、単価が他より高いので、売上高ベースでは15%程度になっています。
―――どのような特徴でしょう。
無垢材を使った2ミリ厚の挽き板なんですが、反りやひび割れ等が少ない複合フローリングの性能で、無垢フローリングと遜色がない仕上がりや触感を持っています。サイズも標準仕様(一尺×六尺)で、そっくり入れ替えられるところがハウスメーカーさんにも評価いただいております。床暖房にも対応しており、天然木化粧複合フローリングとして初めてグッドデザイン賞も受賞しました。
―――御社は宣伝の全くない「床は大事」というメッセージ冊子も出しました。
リフォームの理由では「省エネしよう」「よい設備を入れて快適に過ごそう」という方が多いと思います。しかし日本は昔から裸足で過ごす「床文化」があって、家で「癒し」「くつろぎ」を求めるには、長時間直接触れる床って本当に大事なんです。それは「省エネ性能」のような数値では表せない非常に感覚的なものなので、改めて意識していただこうと作りました。
―――床材の今後については、どのように考えているのでしょう。
これは業界全体でもぜひ考えていただきたいテーマなのですが、いわゆるフローの時からストックを考える必要があると思います。床材だったら、新築時にしっかりしたものを入れておき、10年先、20年先に手入れが必要になった時には、表面だけをそのまま貼り替えられるようにしたら便利ですよね。「床文化」を支える私たちができることは、まだまだたくさんあると思っています。

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