八清 西村孝平社長
個性ある住宅づくりにこだわり、新築住宅並みの価格で築古住宅の販売に成功している八清(京都市)。約4万8000軒といわれる京町家に特化し、マスではなく一部の顧客層に狙いを定めた再販物件事業で、年間60~70戸の販売に成功している。同社の成功のカギを西村孝平社長に聞いた。
――町屋に特化した再販事業を本格化したのはいつ頃ですか。
2001年頃からです。特化することで、お客さんも情報も徐々に増えてきました。町家だけですと、今では大手販売会社さんよりも販売力があると思います(笑)。
――当初から町家の取り扱いを事業にする計画があったのでしょうか。
いいえ。でも面白くてね。古さを「良さ」とするような家の残し方もあるだろうと、個性にこだわった家づくりを進めてきました。
――具体的にはどのように。
キッチンやバスも以前はメーカー品を使っていましたが、今はほとんど使いません。オーダーが主流です。住まいに、個性があってもよいではないかと。1件1件、住まいに名前を付け、こだわった改装をするので販売するまでに10カ月ほどかかります。
――最近の事例で印象に残ったものは。
平屋の路地奥の物件で、駐車場もなく、通常の不動産会社であれば手を付けないような物件です。約15坪の2軒続きの平屋を1軒にし、それを3000万円中盤で販売しました。
一般常識では考えられない内容だったと思います。ニーズがあるとの確証はなかったですよ。でも1軒だけですから、建て売りで何軒も提供するほどリスクはありません。

平屋の路地奥物件事例1 敷地面積は119.16平米

平屋の路地奥物件事例2 ロフトを2室設置
――京町家ではない、一般住宅の中古リノベではどうでしょうか。
私どもが手掛けるのはほとんど京町家ですが、それだけではありません。以前、昭和40年代の住宅を改修したことがあります。古いロゴの付いた流し台が珍しく、それを残すことにしました。イメージを合わせてパンチカーペットを貼ったり、Pタイルを敷いたり、キッチンパネルの代わりにトタンを貼って磁石が付くようにしました。見た人はこれを「かわいい」と言うのです。
――一般住宅を個性的にする秘策とは。
私は、(1)庭、(2)玄関土間、(3)吹き抜けなど、無駄を作れと言っています。例えば庭があると人間は癒される。半畳でもいいから作るのです。
ある平屋の物件には、8畳の玄関土間がありました。自転車も入れられるし、飾り付けることもできます。そうすれば100%は来ないですが、20%の人に来てもらえる。最大公約数を取ると味気もないし、面白味がありません。
――面白味ある住宅提供がカギと。
それと手作り感。例えば、弊社では社内にある1つの建具をぬか袋で磨いて手入れしています。3年間もそうしていると、美しく黒光りしてくる。今はメンテナンスフリーなどを重宝する方向にありますが、いわゆる「経年美」、年数をかけ手入れをしていくことで価値を増すことがあるのです。そこに注目していきたいと考えています。

設立 * 1956年 / 年商(2013年度) * 28~29億円予定
人員 * 物件コーディネーター10人、WEB集客担当6人

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