有力リフォーム経営者座談会《前編》 ニッカホーム × ホームテック × OKUTA
リフォーム業界はかつてない群雄割拠の様相を呈している。家電量販店、スーパー、ゲーム会社まで、さまざまな業種が参入。特にここ数年で業界の景色は様変わりした。しかし、その市場シェアの約7割は地域のリフォーム専業店や工務店が担っており、今後も彼らの役割の大きさは変わらない。今回、20年にわたり業界をけん引してきたリフォーム会社、3社の創業トップに集まっていただき、今後の方向性について話を聞いた。
(聞き手/本紙社長・加覧光次郎)

1987年創業。水まわり工事等の交換需要を中心とした事業展開で、前期実績は約200億円(2014年12月決算)の見込み。近年は大問屋という屋号の給湯器やトイレをメーンで扱う新型店舗を展開。その数は既に19店舗に及ぶ。当面300億円の目標を目指し、新規出店と人員増員を続ける。
〈会社概要〉 本社:愛知県名古屋市/資本金:1000万円/店舗数:87店舗(ニッカホーム61店舗、マニカホーム4店舗、給湯器大問屋19店舗、塗替え大問屋3店舗)/社員数:900人超

1993年創業。1000平米を超える大型店舗を武器に売り上げを拡大し、前期実績は55億8000万円。昨年からは水まわり専門店である新業態「ミズファミ」も開設し、今までと違った顧客層の開拓も進める。2017年の上場を目指し事業拡大を進める。
〈会社概要〉 本社:東京都多摩市/資本金:5000万円/店舗数:12店舗(リフォームプライス9店舗、ミズファミ2店舗、その他1店舗)/社員数:136人(2014年4月1日現在)

1991年創業。自然素材を使った提案型リフォームを得意とし、近年は世界水準の住宅性能を実現する「パッシブデザイン」を推進。前期実績は60億2800万円。1万3000人にも及ぶ有料会員制度や材工分離の仕組みであるOK-DEPOTなど、業界に先駆けた取り組みを進める。
〈会社概要〉 本社:埼玉県さいたま市/資本金:6700万円/店舗数:13店舗(ロハススタジオ12店、みずデポ1店)/社員数:251人(2014年1月現在)
設備機器交換で潜在需要を発掘
―――リフォーム産業新聞も創刊28年経ちました。6兆円マーケットがあっという間に10兆円になると言われて早30年。しかし、今でも6兆円から7兆円です。なぜかというと時代時代の覇者が変わっているだけ。主役が交代しているだけでマーケットのすそ野が広がっていない。そんな中で今日お集まりいただいた3人はそれぞれのビジネスモデルで今のリフォームマーケットをけん引して来られました。今日のメーンテーマは需要創造です。さて、昨年は4月に消費税が8%に上がり、その後の市場環境はかなり厳しい状況でしたね。直近の戦略はどのように考えていますか。まずホームテックの高橋さん。ホームテックさんは1店舗年商10億円規模の大型店舗を続々出店して年商50億円に到達しました。
高橋 夢を再び作るパートナー、「リフォー夢パートナー」となるために会社を始めましたが、もう少しマーケットに自分たちが入っていかないと、と思っています。「リフォームプライス」という大型店舗で何でもやります、というのはちょっと消費者に敷居が高い。設備機器の交換、水栓の交換が主流になってもよいのでは、と考え「ミズファミ」を作りました。
―――全国で同様の店舗が増えている水まわり専門店ですね。
高橋 実はニッカホームさんのところに影響を受けているのですが、消費者が望んでいるのはまだまだ、設備機器の交換なんだと感じています。家を持ち、ウォシュレットや水栓金具が壊れたなど、どうしても避けられない工事をする人はたくさんいます。一方、生活を楽しむためにキッチンやお風呂を全部交換しようとする人はせいぜい3、4割しかありません。
―――今までリフォームを1回もやったことがない人をつかまえられていると聞きます。まさしく需要開拓ですね。
高橋 だから「ミズファミ」で昨年2店舗出したのはリプレイス需要でもう少し、市場に寄っていくためです。1号店の南大沢店はイトーヨーカドーが入るビルの中ですし、鶴ヶ峰店は駅の構内から続く店舗の中にあります。一番お客さんの多いところ、つまりマーケットイン。鶴ヶ峰などは1日水栓金具を5、6件付けています。まるっきり今までと顧客層が違う。需要を作りださなくてはいけません。
―――ニッカホームさんは、名古屋からスタートして現在は、東名阪から広島、福岡にも展開し、水まわり中心のショップを87店舗展開して来られた。まさしくホームテックさんの「ミズファミ」で対象顧客としているような交換工事層が元々メーンの対象顧客ですよね。
榎戸 一番パイが大きいのと、手離れがいいところなんです。大きい工事をやらないこともないですが、20年以上前、チラシを始めてからずっとそのまま来ています。
―――当然工事件数も多い。昨年度のベースでいうと件数は年間3万件を超えます。
榎戸 やはり人が育ってくるのはそうした工事をさせる方が早い。大きい工事は木工事が絡んできますから、無意識に細かい工事をやっているでしょうね。
―――事業が成長してくるにつれ、社員のやりがいや生産効率を考えて、高単価を狙う事業社が多い中、愚直に同様の戦略を続けています。ところで御社の新ブランドの「大問屋」もまさしくニーズが高い部分の獲得を考えた店舗だと思いますが、どんな内容でしょう。
榎戸 大問屋はガスの給湯器の取り換え、トイレ交換をメーンで行うブランドです。営業が打ち合わせ、見積もり、場合によっては給湯器を積んで行き、そのまま取り換える。一気通貫で全部やります。
―――開始したきっかけは何だったのですか。
榎戸 最初はインターネット販売をしたかったんですよ。大きな問屋になりたいという意味で「大問屋」。当初はクロスを売っていました。1店舗営業2人ぐらいで今は19店舗です。
―――店舗当たりの売り上げはどのくらいでしょう。
榎戸 1億円弱くらいですね。人がいればどんどん増やしていけますが、利益がそんなにありませんから、今期初めて黒字になりました。だから件数をこなす。多いときは給湯器を1日に3台ぐらい工事します。11月だと1000台程売りました。でもまだまだモデルが固まっていないから、これから付加価値を付ける作業です。同じような会社がでてきたら、そんなに儲からなくなってしまう。(笑)
8000万円のリフォーム、金額が倍になる「パッシブ」
―――OKUTAさんは価格明示型チラシの元祖でありながら10年前からロハスを打ち出し、さらに2020年に向け世界水準の住宅性能を実現する「パッシブデザイン」を推進しています。
奥田 今までパッシブをやっていないときは工事単価は高くても1000万円。しかし、プラン契約していた案件をパッシブで再提案して来なさいと言ったら、1000万円が2000万円とか、一番大きいのは4000万円が8000万円になった。これは大きい。価格競争がし烈になればマーケットのパイは小さくなる。だけど、自分たちがそうした点に挑戦し、パイを大きくしようとしている。その代わりこのマーケットはニッチです。2000万円の工事をしようという人はそんなにいない。
―――では会社全体の方向性としては、他分野を強化するということでしょうか。
奥田 企業の多角化は必要だと思います。価格弾力性というか、単価が高いと消費税の増税などでも大きな影響を受ける。ロハススタジオは消費増税後に2割ぐらい落ちていますが、修繕系は極端な変動がない。
―――事業別にみると今、好調な分野はありますか。
奥田 前期の9月はちょうど60億円を超え15%増の60億円2800万円でした。伸びたのは多角化事業。修繕関係のハンディマンや外装、新築、不動産。特に不動産はいい。単一ビジネスだと1つのマクロ経済的な影響を全部受けてしまうから、それをないようにしたい。
―――現状では、ロハススタジオのいわゆる提案型リフォームが売り上げの大半を占めますよね。
奥田 8割ぐらいがロハススタジオですね。単価は500万円ぐらい。パッシブだと1000万円を超えてきています。たぶん、パッシブデザインというと首都圏では、トップクラス。だから強いブランドにし、持続可能にしたい。極端な売り上げの拡大は狙っていません。今後は多角化を進めていきロハススタジオを全体の売り上げの50%ぐらいに持っていきたいですね。人口が減り高齢化もしている。経済状態がどうなっていくかは予測不可能ですよね。リフォーム業界が追い風といいますが、人口減少には太刀打ちできません。だから首都圏で商いをしますが、それ以上広げたいと思っていないし、店舗数を増やす、売り上げを増やすビジネスよりも収益性の高い強いビジネスに投資をしたい。
―――好調な不動産はどのくらいの規模になっていますか。
奥田 中古リノベで3億円近くです。
―――先月、アメリカのオレゴン州にいき、ニールケリーという30億円ほどの会社を訪問したのですが、事業形態がOKUTAさんに似ているんですよ。単価800万円ほどのデザインリフォームがメーンで30億円のうち半分ぐらい。OKUTAさんでハンディマンにあたる修繕系も20年前からやっていて2億円。そちらの単価は20万円です。面白いと思ったのが、ホームパフォーマンスという6年ほど前から行う断熱改修が今では8億円。州が補助金を出し始めている関係もあり、伸びている。4000万円という高額もありますが、平均単価は170万円で内窓の取り付けなども案外多いようです。
奥田 アメリカは窓の規格が一緒だからですね。
―――その商品はサイズを測るようですが、確かにアメリカの窓はサイズが決まっているので交換が多い。住宅リフォーム売上ランキングをアメリカのメディアでもやっていて、ランクインする会社は窓の改修がやたら多い。その分野で1番大きいところは売り上げが400億円ぐらいあります。
奥田 アメリカは断熱材がセルロースファイバーだからね。断熱性能が高いから、窓の性能も上げると相乗効果がある。
―――日本でも今年から断熱改修は伸びると思います。4月に省エネ基準が変わる。そして2020年には新築が義務化となる。あとは健康問題。やはりピンピンコロリで元気に生きてもらうためには断熱改修、特に1枚ガラスの改修が必要。ヒートショックで亡くなる人が年間1万7000人ほどいる。この状態を改善するのはリフォーム会社のミッションだと思います。
奥田 住宅エネルギー性能をあげると家庭で使っているエネルギー消費が減るじゃないですか。そうすると石油の輸入量を減らすことができる。僕はエネルギー問題で見ると性能の高い住宅が今後ますます求められると思っている。誰もが行かなかった領域なので、よくやるなと言われますが、でも高いところに登ってみると意外に魅力があるんです。それと社員がやりたいと思っている。だけどマーケットは小さかった(笑)。
―――だから、省エネ、断熱のマーケットのすそ野をいかに広げるかが大事ですね。
奥田 人口は減り、世帯数も減り、減った新築の分だけリフォームにいきます―そんな簡単に経済は動かない。でもどういったマーケットが広がるかというと、性能が高い住宅じゃないかと思っています。
前期実績は約200億円、成長率120%以上に戻す
―――国では2020年に中古住宅流通とリフォームを合わせて20兆円にする目標を掲げています。でもアメリカでは日本円でリフォーム市場が40兆円程ある。人口が2・5倍以上とみても、日本でも少なくとも15兆か20兆円近い市場になっていい。私の思いは、リフォームをする人がもっともっと増えて欲しいですね。そうなればそれぞれの会社の売り上げも増えます。さて2015年と、1つの区切りとなる2020年に向け、みなさんどのような事業展開を進めていきますか。
榎戸 前期売上高は200億円(2014年12月決算数字)ぐらい。これまではマックス130%、120%台で伸ばしてきましたが、前期初めて120%に届かないと思うので、それを戻したい。でも、人が育ってない問題が売り上げに影響してくるので、正直難しいだろうと思います。
―――500億円や1000億円は既に見ているのですか。
榎戸 当面は300億円。1億、3億、5億、10億、30億、50億、100億、300億、500億、1000億の壁がある。1、3、5の壁が。そのため300億円の壁を当面は超すことができればと思っています。何とか300億の壁を越え、500億円を超えていければというのが、目標ですね。
―――高橋さんは、来年の状況をどう考えていますか。
高橋 今年3月の決算でいうと、昨年と同じぐらいいければ十分というぐらい調子が悪いです。
―――店を出してもですか。
高橋 店を出して穴埋めをしている感じ。大型700万円以上が落ちています。
―――ハウスメーカーも計画を下方修正し、前年度割れの計画に直すところも出ています。ただ、2020年に向けては、上場も目指していく計画ですよね。何年ぐらいで考えているのですか。
高橋 2017年です。リフォームプライスという需要をつくる店を日本中に作りたいですね。そしてリフォームでこんなに生活が楽しくなるというのをもっともっと広げたい。それが事業をやる目的かな。
―――奥田さんも、今期売り上げは高橋さんのところと同じような状況ですか。
奥田 同じか少し落ちるね。でも多角化事業次第。中古リノベがすっごく面白い。
―――でも前期決算はいい数字でしたね。
奥田 9月決算だから3月までの営業利益がこの10年で最高でした。でも消費増税でスコーンと落ちた。
―――今期はどのくらいで着地を見込んでいますか。
奥田 赤字にはならないと思いますけど、ロハススタジオに片寄り過ぎたらまずいね。今後は中古リノベをロハススタジオブランドの30%ぐらいはやりたいです。今までは社員が大変だから嫌だと思っていたらしいですね。だけど、ユーザーが中古を買ってロハススタジオでリフォームをしたいと物件をもってきちゃうわけですよ。そして物件を見に行って改修すると空き家ですし、すごく手離れがいいことに気づいたんです。
―――あと奥田さんでいえば、1万3000人の有料会員がいるロハスクラブをどう伸ばすかでしょう。
奥田 そこからの自然波及的なリフォームが10億円ぐらいありますからね。だから僕らの戦略は他社とまったく違っていて会員が中心なんです。トヨタも電気自動車が普及したら100年後残っているか分かりませんが、大きな宗教団体は残っていると思う。やはり信者がいますから。そういう観点でいうと1件の顧客で長く、そして首都圏から出ずにやるということ。私が交通事故に遭う2001年までは名古屋に出る予定でしたが(笑)。
榎戸 それは良かった(笑)
奥田 いろんな考えがあるじゃないですか。自分の時間も作りたいし、仕事ばかりが人生じゃない。うちの考え方は、規模の拡大ははなからないんです。大きくなることは弱くなる可能性がある。そしてリスクが大きくなりますよね。一定規模でいうと仕入れが安くなるとか、規模の経済性はありますが、うちはすでに限界値。これ以上仕入れは下がらないですよ。それが僕の考え。
―――リフォーム会社のライバルは、同業ではなく旅行会社やスポーツクラブだと思っています。退職金も旅行などに使いますし、スポーツクラブでお風呂に入っちゃいますよね。それを家に戻したい。先ほど話をした会社のケリー社長が言っていた言葉で面白かったのが、アメリカではバケーションからステイケイションに変わってきているというのです。9・11以降、休日も外出するのでなく家でくつろぎたいという人が増えているというのです。そうすると家の中にいる時間も長いので、リフォームをしようとなる。日本にもそういうニーズは絶対あると思うので、ぜひリフォーム市場を活性化させてもらいたいと思うのです。それでは今日は新春なので長期視点で各社が創業約50年となる2040年に向けてですが、榎戸さんから話をお願いします。
榎戸 現実的な話をすると会社が残っていればいいかなと。それで、ワールドな会社になりたいですね。
―――でもグローバル事業は既に展開していますよね。
榎戸 今は休止中、トルコでは最初カレーレストランをやったんです。でカレーがだめになったとき、日本の商品を売りたいと、サンゲツやアイカの商品をもっていって売ろうとした。でも当時ウォンが強くなって全部韓国のメーカーに入られてしまった。日本の壁紙がおとなしいというのもありましたね。向こうはキラキラが好きで、受けなかった。でももう一度海外にチャレンジしたいですね。
―――高橋さんはどうですか。
高橋 うちも会社が残っていればいいというのが本音かもしれませんね。ただ、やはり世界でリフォームを提供する会社にはなっていたい。
―――既にロシアのウラジオストクにだしていますからね。
高橋 まずはロシアを成功させる。今インフィルを請け負う工事で2件注文を受けています。あとは会社が残っていることが前提で、加覧さんのところの新聞で売り上げベスト10に入りたいですね。
――最後に奥田さんはどうですか。
奥田 まず企業の寿命が30年といわれていますから30年の壁を超えないとだめじゃないですか。それじゃないと100年とはいえない。まずは30年までに堅調に伸ばしていける会社にしたい。そうすると自己資本比率を上げるとか、極端な拡大を求めないとか、価格弾力性の高いものと低いもの、両方のビジネスを持って粘り強い企業にしたい。そうしないと僕が離れられないじゃないですか。単一ブランドだけに依存しないようにして伸ばせるところは伸ばす。モノを作るところまでは得意なので、それをやっていくことが得意な社長の山本以下にうまく引き継ぐことですね。
―――有力リフォーム経営者座談会≪後編≫ ニッカホーム × ホームテック × OKUTAはこちら

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