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アーキテクツ・スタジオ・ジャパン、建築...

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン、建築家2600人によるリフォーム本格化

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン
丸山雄平社長
1156号 (2015/02/10発行) 8面
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アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 丸山雄平社長

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 丸山雄平社長

 登録数約2600人、日本最大級の建築家ネットワーク、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(東京都港区、以下ASJ)がリフォーム事業を本格化する。今年1月9日から2月1日まで初の全国一斉リフォーム&リノベーションフェアを100会場で開催。建築家が設計するリフォームを希望するエンドユーザーが来場し、約1000組が新規に登録した。同社の取り組みと今後の展開について丸山雄平社長に話を聞いた。

工事単価は1700万円

――全国100会場で一斉に行うリフォームイベントは、単独企業が主催するものとしては最大級です。元々は新築需要が多いと思いますが、なぜリフォームのイベントを行うことにしたのでしょう。

 リノベーションのニーズが高まっている中、お客様の層を増やしていくためです。現在、我々の仕組みで依頼されるリノベーションの単価が平均1700万円です。でも平均単価が高いことを良しとはしておらず、ヨーロッパでは300万円、500万円ぐらいでも建築家がアドバイスしているわけです。そうした市場に建築家の位置付けを下げていきたいのです。

――日本では細かい工事を建築家に頼みづらいイメージがありますね。

 以前は我々を通した新築は平均単価が平均で6000万円ほどでした。高額層しか来なかったのです。それが今や2000万~3000万円で全体の70%ほどある。僕らはそれを実現してきたのです。同じようにリフォーム、リノベーションでももっと平均予算が低い方でも建築家に相談していくマーケットにしていかなくてはいけません。そうでないと、街並みが変わらないじゃないですか。

――提案型のリフォームに、建築家の技術とデザイン力が加われば、より魅力的な住まい、ひいては街を提供していけると思います。

 古民家などは、寒い、使い勝手が悪いと下手なリフォーム会社に頼むと、新しい建材と古い建材が混在してしまった家などいくらでもあります。古い家の風格が壊れちゃうわけです。元々あるモノのクオリティーを磨き、不自由なところを整備すると考えると新築の方がよっぽど楽ですよ。我々の場合、建築家を選んであげ、その建築家が営業をするわけです。

 彼らはプランも潤沢で素材の知識も高い。数多なる雑誌を読み、数多なる建築物を見てきている人ばかり。そうでないと建築家にはなれません。

――実際、約1カ月のイベントで反響はどのくらいありましたか。

 1月は約1000組のユーザー登録がありました。今年は6400組の新規登録目標ですから、月計算では500ほど、つまり倍の登録数でした。

――100カ所の各会場では、施工事例の紹介や建築家による相談会が行われたのですよね。今後も開催していくのですか。

 年2回は大きなリノベフェアを行おうかと考えています。反応を見て増やしてもいいでしょう。こうした機会を設けるとユーザーの方は重い腰を上げて、相談に来られます。直接建築家に話を聞いてもらうと安心される方が多いですね。リフォーム会社や工務店に連絡すると発注ベースの話になるのではと、怖いのかもしれません。弊社の仕組みは建築家のアドバイスを受け、予算を確認し、無理があったらやめることもする。決して前に進めることだけをしません。まず、第三者の建築家に相談できるから、本音ベースになるのだと思います。

工務店×建築家の新たな仕組み

――仕組みとしては、ユーザーがASJの会員に加盟後、建築家に相談しながらスタジオを運営する工務店に工事を依頼する流れですね。

 はい。工務店さんにも家づくりの初期段階から絡んでもらい、建築家の設計の問題点を確認いただく。その上でコストをチェックしながらお客様のニーズを聞いて発注する。もし無理があったらストップしましょう、というシステムが消費者から見たら非常に安心ですし、工務店からすると施工リスクが減りました。

――現在、エンドユーザーの会員数はどのくらいいるのですか。

 累計で3万5000強、昨年は4300の新規登録でした。この会員数を増やすために、イベントを開催しています。今年でいうと年間640回の計画です。各イベントには10人ほど建築家が来ているので、そこで建築家の方を選ばれる方が結構いらっしゃいます。もしそこで決められない場合は、予算、テイスト、時期などを加味し本部からの推薦も
めてエスコートしていくんですね。

――建築家の先生が決定した後に、工務店が具体的に絡んでくるのですね。

 先生とお客様と工務店で打ち合わせをしていく。そこで先生が図面、模型も作ります。それに対し、工務店はいくらなら建つという予算を提示する。これでコストとプランの相性が合えば、設計契約を行い、工事へという流れです。ハウスメーカーや工務店など選択肢の1つに建築家というルートを供給したと思ってください。

――多数の建築家から選択できるというのも安心だと思います。

 今までですと建築家の先生を1人に絞り込んで連絡をして、その先生に手付金を払って設計を開始して始まります。つまり建築家を1人選ぶことは、他の選択肢をいったん全部捨てなくてはいけない。これが一般的に起きていました。建築家はアイデアと設計力は持っていますが、依頼者に合うかどうかは、別
問題です。

――会員になってから完工まではどのくらいの期間になっているのですか。

 建築スタートまで500日。建設期間が6カ月とすると700日なので2年くらいですね。高額層もいるので、昨年度の平均予算は3369万円です。ただ、2500万円前後のニーズがすごく多い。そのため、ASJパッケージ2015という、本部推奨素材を準備中です。建築家先生のデザインと組み合わせても、2500万円ほどの予算で収められます。

――新築が中心だと思いますが、リフォーム工事はどのくらいあるのですか。

 最近増えていまして、3割ぐらいあります。

――結構、多いですね。

 多いんですよ。リフォームのイベントを行う前の数字ですから、年2回のペースでイベント開催を続けるといずれ会員の5割くらいがリノベを選択すると思います。「こんなふうになるんだ」と自分の夢がかなえられるのであれば、あえて建て替える必要はないじゃないですか。非常に長期にもつような建物も多数あります。またマンションリフォームも手掛けますから、そのゾーンも活性化するとリフォームが主体となる匂いがしますね。

――ただ、建築家の先生は、既に建てられている建物を手掛けることに抵抗はないですか。やはりイチから作りたいという思いを持たれているイメージがあります。

 基本は作りたいと思います。過去の作品の1つ1つを自分の子供のような感覚で思っていますから。しかし、彼らはやるとなったら一生懸命です。前住んでいた時よりもいいものにしてやる、前の設計者を超えてやるという習性があるので、頑張りますね。

「敷居を下げていく」

――2013年12月には東京証券取引所マザーズに上場し、売り上げも順調に拡大しています。最後に今後の方向性を教えてください。

 家を建てるとき、リフォームする時、商業施設の建設を考えるとき、最寄りのスタジオに相談する当たり前を作りましょう、というのが弊社の方向性です。そのため先ほど話したように敷居をできるだけ下げて、建築家に頼む流れを作るのが入り口。

 ユーザーの方に登録さえいただければ、無料で相談ができますし、限定した企画もありません。1人の先生を見て、もう1人ぐらいの提案を受けてみたいといっても費用はかからないわけですから、便利な仕組みだと思います。敷居が下がっていくことで結果が生まれてくると思うのです。ですから販売戦略を立てどうこうよりも、我々が作り上げてきたプラットホームの存在を多くの人に知ってもらう努力が必要です。

 上場した目的もありまして、上場することで信用がつき、メーカーさんが弊社にリーズナブルに供給してくれる。どうしても小さな工務店さんなどは直接的な供給ラインをもっていないじゃないですか。どんなものでも我々が安く供給できるようにしていきたいと思っています。

会社概要
本社 * 東京都港区 / 創設 * 2002年10月1日 / 売上高 * 15億8200万円(2014年3月期)
スタジオ数 * 198カ所(加盟制度) / 建設工事請負契約 * 203億8600万円
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