先進的なリフォーム事業社
ビジネスモデルを発表
経済産業省が独自のビジネスモデルを持つ企業を選定する「先進的なリフォーム事業社表彰」。このほど行われた表彰式において、選ばれた3社が事業モデルを発表した。
ナサホーム 江川貴志社長
現20店舗を展開
弊社は1996年に設立しておりますが、リフォーム事業に業態変更しましたのが、2000年の4月。今月でリフォーム事業に参入してちょうど15年になります。現在「ナサホーム」9店舗、「みずらぼ」11店舗を事業展開しています。2種類のブランドをほぼ同じエリアに出店しているのです。
一部西の方で「みずらぼ」が先行しておりますが、ほとんどのエリアにおいて「ナサホーム」と「みずらぼ」がセットで出店している。また、店づくりですが、ナサホームの新しい店は全てリビングコーナー、ダイニングキッチンのコーナー、和室コーナーのように住生活の提案コーナーと、キッチンコーナー、ユニットバスコーナーの商品コーナーの2つのゾーンで出店を続けています。
それから当社のこれまでの売り上げベースは、当初の4年位不動産仲介だけの売り上げです。そこから2000年4月、リフォーム業に参入して順調に増えていっているように見えますが、2010年頃ちょっと壁に突き当たった感がありました。当時は25億円位でしたから、巷で言われる30億円の壁にうちの会社も当たったかと思い、だいぶ頭を悩ませまして、2011年に「みずらぼ」という会社を作った流れです。
ナサホームの従来コンセプトは高品質で高いデザイン性を有することそうしたブランディングを何年もかけて行ってきました。ただ人材成長のスピードという点では、高いレベルの提案ができる人材を育成するわけですからすごく時間がかかってしまう。このことが会社成長の足かせになって20億円程度のところで頭うち感を感じたのです。
また実際にあったことですが、ユニットバスの交換をしにナサホームに来たお客様が玄関まできて「ここは私の来るところじゃないなと感じて帰りました」という話を間接的にお聞きしました。これではいけないなとどうすればスタッフが早期に成長できるのかと考えた結果が、水まわりという部分にしぼって、特化した会社を作ろうと。そこで生まれたのが水まわり工事専門店「みずらぼ」です。
新人を即戦力化
専門店のメリットとして、新人の早期戦力化が可能、低価格で高品質の工事を提供するができる、水まわり専門とうたっていますから、小さな工事も敷居が高くなく身近な相談窓口となりうる、保証金とかを加えても1000万円ちょっとでできるなどがあります。
「ナサホーム」の店舗を作ろうとすると展示在庫等々含めますと5000万円以上お金がかかってきます。実際、営業マン3人と受付1人の計4人で月1000万円も売り上げれば十分黒字ベースで損益分岐点を超え、一年間の黒字化が可能になるモデルです。実際に行っていく中で副次的なメリットも出てきました。小さな工事で敷居が高く今までリフォーム会社に行ったことがなかったお客様がコンビニ感覚で気軽に店へ来ていただけるようになったことです。
それと「特殊な勤務形態での女性スタッフの活用」もメリットとして大きかったです。4、5年仕事してそこそこ戦力になったなという頃に、女性の場合は結婚、出産、育児という問題がどうしてもからんできます。場合によっては辞めなくてはならない人も多々出てきていました。「みずらぼ」では専門特化した狭い分野で仕事をすることによって定時に帰れるようになったり、あるいは育児をしながら、早く終わって幼稚園・保育園に子供を迎えに行ったり、そういった勤務形態も可能になったわけです。
あと1つ余談ですが、ナサホームの営業で2、3年やったけどなかなか成績も上がらない社員がおりましたが、「みずらぼ」へ移籍させたらいきなり初月から1000万円近い売上高を上げられるようになった。大きなクロージングの工事はなかなか苦手なんですけど、50万円、100万円位の水まわりの工事であればどんどん取っていける。そんなふうに人材を外部へ流出させることなく社内の配置転換で適材適所に置くことが可能になったというわけです。
実際問題、ナサホームに入社される方は、新卒・中途とも原則として業界未経験は「みずらぼ」に入っていただきます。そして水まわり中心に勉強し、成長した結果、本人の希望でもっと大きな工事をやりたいという方は「ナサホーム」へ異動して、もっとマネジメントに進みたいという方は「みずらぼ」の中にとどまって店長などを目指されるとい
うふうになっています。また逆に先ほど申し上げましたように、結婚・出産などで若干仕事の強度を下げたいという女性がナサホームで店長をやっていた場合「みずらぼ」へ移籍したり、今も産休、育休、育児休暇中の女性が3人いますが、3人とも全て戻ってきて「みずらぼ」で仕事をしていただく予定です。
大型工事は断る
あと最後になりますが、よく2011年に私どもが「みずらぼ」という会社を作ってから、業界の中で他にもこういった水まわり工事専門店というのを作られた会社がたくさんいらっしゃいます。それでよく耳にするのが、「水まわり工事専門店とうたっていても結構大型工事のお客さんも来るよね。実際受注できるよね」というお話を伺いますが、これは非常に危険なこと。
私どもの場合は「ナサホーム」と「みずらぼ」が似た地域に集中してますので、「みずらぼ」に大きな工事がきた場合はナサホームへ振ります。ただ西神中央店のような「ナサホーム」のエリアでないところのお客さんから大型工事がきた場合は勇気を持って断ります。お客さんが来るからといって「みずらぼ」で大きな工事をしていれば、それはブランドを二つに分けている意味がなくなります。経営者として大きな工事を断るというのは勇気のいることですが、この勇気を持つことがこのビジネスの大きなポイントかなと思います。

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