マツ六 松本將社長
小口リフォームをフォロー
建築金物、住宅資材のメーカー商社として年間171億円を売り上げるマツ六(大阪府大阪市)。施工のプロに焦点を絞ったリフォーム資材の通販カタログ・インターネット事業「ファーストリフォーム」が好調だ。松本將社長に聞いた。
通販売上10億突破
――ファーストリフォームは今年10周年だそうですね。
はい。現在の売上規模は10億円。スタートして4年目に黒字転換しています。最初はバリアフリーの自社開発商品から始めていますが、そこから商品群が広がり、現在は6000アイテムを扱っています。アイテムの半数は、バリアフリーと同じく自社開発商品。利益率が高いのが長所です。
―― 現在の需要はどうでしょうか。
RPと呼ばれる販売店・特約店が800店、CPと呼ばれる施工業者が2万3500件ユーザー登録してくださっています。CPは現在でも年間1000件ずつ増加中です。
CPの多くは、地方にある小さな施工店や職人さん。「平日16時までの注文なら翌日出荷」というのは都市部なら当たり前ですが、地方の山間部などの辺地にとって、これは革命でした。非常に喜んでいただいています。
―― こうした小口ニーズに対応するのは、小規模リフォームを活性化する上で重要だと思います。
リフォーム工事の多くは10万円以下ですからね。そこを担う小さな施工店は、資材調達に非常に困っておられます。地元の専門店から仕入れようにも、1、2個の少数発注では相手にしてもらえない。かといってホームセンターに行っても限られたアイテムしかない。こうした困りごとを解決したのが、ファーストリフォームなのです。
また、資材の施工法を詳しくカタログに掲載しているので、施工店は施工手順を事前にチェックできます。こうした情報提供の強化を行うことも、施工店が工事範囲を広げて売上アップを目指す上でも、不可欠だと考えています。
自社開発商品に注力
―― 現在の売れ筋商品は?
3年前に発売した手すり「Free R rail」です。自由に曲がるところが特徴で、施工する場所に合わせて曲げ角度を変えられます。従来、カーブの入った手すり棒を調達しようとすると、特注品扱いとなり多大なコストがかかりますが、これなら低コストで、しかも現場で自在にカーブを調節できます。
そのほか、障子や襖の部屋にも付けられる「遮断機式手すり」、ドアをそのまま引き戸にできる「エコ引き戸」などもコンスタンスに売れています。これらバリアフリー商品の価格は、介護保険の範囲内に収まることも重要。それも意識しています。
―― 自社開発商品に力点を置くのも利益率向上には不可欠でしょう。
はい。当社は何年か前から、汎用部品の開発を進めています。リフォームの現場では、リフォーム箇所に合う部品を探し回るのに多大な時間がかかる、という課題があります。しかし、メーカー問わず使える汎用部品があれば、探し回る時間をカットでき、施工業者に大きなメリットをもたらすはずです。
―― そもそもファーストリフォームは、既存事業への問題意識から生まれたと聞いています。
社長に就任したころから、単なる卸事業だけでは生き残っていけないと危機感を抱いていました。商社であっても、川上であるものづくりの知見や技術を増やし、マーケットの実情を詳しく知る必要があると。そんなとき、アスクルのビジネスモデルと出会い、「うちの業界でも使える」と思ったのがきっかけです。
ファーストリフォームはアスクル同様、ユーザーの注文品を実際に届けるのは、当社ではなく、ユーザーの最寄りにある販売店です。商品の流通プロセスを短縮化しながら、販売店には販売店の役割を果たしていただく「流通最適」を目指したかったのです。
当社は今年、創業94年目を迎えました。昭和40年代からファブレスメーカーとしてオリジナル商品の開発に取り組み、ロック、蝶番、クローザーなどの建築金物、大手ハウスメーカー向け建築資材などを取り扱ってきた歴史があります。今後は価格競争に巻き込まれないために、売上高ではなく利益を意識し、量より質で進化する道筋を強化したいですね。

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