米国は施主が直接デザイナーを雇う、施工業社と独立した立場で品質管理
アーキインテリアズデザイングループ クリストファー・グラブ代表
≪プロフィール≫ サンフランシスコ大学、アートカレッジアカデミーにてファインアートの学位を取得。その後イタリア・ミラノの大学でも学んだ。1994年にアーキインテリアズデザイングループを設立し代表を務める。2010年にはザ・シージーコレクションを立ち上げ、ラグジュアリーモダンバスルームのデザインを本格化した。
クォーターバックのような司令塔が米国流
「私の重要な役目はホームオーナーを守ることだ」。こう話すのはアメリカ・ビバリーヒルズに本拠を構える人気デザイン会社「アーキインテリアズデザイングループ」のクリストファー・グラブ代表。手掛けたリフォーム作品は数々のコンクールに入賞し、米国のトップデザイナーの一人。なぜこれだけの優れた作品が生み出せるのか。グラブ氏「デザイナーは、顧客の側に立ち、施工業者とは独立した立場から品質を管理することが重要だ」と指摘する。
施主がデザイナーを雇う
――日本では施工会社がリフォームの仕事を請け負い、それを自社のデザイナーでやるか、下請けに発注するというケースがほとんどです。米国ではそのような形が一般的ですか。
日本では施工会社がデザイナーを雇うということですか。オーナーが雇うのではなく。何が言いたいかというと、例えば施工会社はいいけれども、デザイナーが嫌だった場合、オーナーが他のデザイナーを選べない、なんてことになりますよね。
アメリカはホームオーナーが直接デザイナーを雇い、デザイン費も直接もらい、基本的に工務店とデザイナーへの支払いは別々になっています。施工業者を自分で選ぶこともできますが、紹介することもあります。
――日本とは違いますね。年間に50ほどのプロジェクトを手掛けられているそうですが、すべてそうなのですか。
はい。施工者がデザイン料を支払うのではなく、別々に支払われるルールがあります。法律ではありませんが、倫理的にそうなっています。
――施工業者がデザインすることもありますか。
施工会社がデザインも行う「デザインビルド」という形式があります。「HGTV」というリフォームのハウツー番組があるんですが、この番組の影響で、施工業者も自分がデザイナーになれると思ってやる人もいます。しかし、彼らは実際「作る」ことが好きなんで、あれもこれもすることなくデザインは私たちに任せてくれることが多く、コラボレーションができるわけです。
定評のあるバスルームデザイン。竹をアクセントに使ったり、「日本」からインスピレーションを受けて設計
真新しい車のような完璧さ
――分業にしている理由はどこにあるのでしょうか。
ホームオーナーを守るためです。それが私の重要な役目。例えば「パンチリスト」という欠陥が一覧にまとめられたリストを使って、施工現場を確認しています。「こことここを直して」といった指示をして完璧なデザインになるようにします。もうオーナーが追加で料金を支払うようなことがないようにチェックして、オーナーを守るんです。
プロジェクトは最終的に真新しい車のように完璧でなければなりません。施工が終わって顧客が欠陥を見つけたら、彼らにお金を支払うべきではないと考えています。
――日本ではそのようなチェックをリフォーム会社や工務店自身が行うのが普通です。
自分たちでですか?オーナーは嫌がりませんか?デザイナーと施工業者は別々でないといけないと思います。
セラピストとして悩みを消す
――顧客の側に立つことで、施工の品質を第三者的にチェックすることができます。それが優れたリフォーム作品になるわけですね。
私はオーナーさんが何かで悩んでいたら、業者との間に入って、それを取り除きます。まるでセラピストのように話をして、ストレスをなくし、満足させるわけです。アメフトのクォーターバックの役割を知っていますか。これはゲームメーカーの役割をする司令塔なんですが、私はほとんどの場合そのクォーターバックとして仕事をしています。
無駄なく多機能なデザインが信条。たとえ部屋が狭くても様々な使い方ができる空間が得意
家具は「カスタムメード」
「私たちは家具のデザインまで全てをやります」 とグラブ氏は話す。例えば、キャビネットなどの多くは自分たちで製作するカスタムメード。既製品だと既存の間取りに収まらないことが多く、ほとんどの家具をロサンゼルスで作っている。料金は卸値に上乗せして請求する。例えば、ソファの場合は35%分。製作費用の請求書はオーナーに見せており、価格が透明であることを伝えている。
デザイン費は1時間200~50ドル
グラブ氏にデザイン費用についても聞いてみた。「料金はいくつかのパターンがあります。例えば、不況の時は固定料金にします。これをベースに図面やアイデアの変更があったりした場合は、すべて時間単位で料金が発生します」。また、施工が始まったら、業務にかかる時間で見積もりを出す。料金は1時間200~250ドルくらいが多く、プロジェクトの大きさによっても変わる。

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