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リフォーム会社座談会《前編》「リピート...

リフォーム会社座談会《前編》 「リピート受注・生涯顧客化」テーマに

OKUTA × キタセツ × ダイキョー × ハイブリッドホーム
森田隆之取締役常務 × 北川拓代表取締役社長 × 吉澤和男代表取締役社長 × 古澤智一代表取締役営業統括部部長
1226号 (2016/07/26発行) 8面、9面
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 お客さんに何度も何度もリピートしてもらうにはどうすればよいのか―――。このようなテーマをもとに編集部では座談会を開催した。出席者は多数のリピーターを抱え、OBからだけで年間3億~10億円もの金額を稼ぎ出すリフォーム会社の経営者・幹部。今回は前編として「リピーター獲得のための方法」と、一人のお客さんと生涯お付き合いをする=「生涯顧客化」を実現すればどれくらい稼げるかについてリポートする。(司会・本紙編集長 金子裕介)

OKUTA 森田隆之取締役常務OKUTA 森田隆之取締役常務

本社所在地と拠点数 : 埼玉県さいたま市直営13店、FC37店
リフォーム売上高 : 48億円
OB客数 : 1万3500件(会員数)
OBフォローの特徴 : 「LOHAS CLUB」という有料会員制度を用意。会員を対象に「Handyman」という便利屋がメンテナンスサービスを実施している。

キタセツ 北川拓代表取締役社長キタセツ 北川拓代表取締役社長

本社所在地と拠点数 : 東京都大田区 1店
リフォーム売上高 : 6億5000万円~7億円
OB客数 : 1万2000件
OBフォローの特徴 : ニュースレター「しあわせ色」を2カ月に1回送付。その他、カルチャー教室の開催やバースデーカードとプレゼントの贈呈などを行っている。

ダイキョー 吉澤和男代表取締役社長ダイキョー 吉澤和男代表取締役社長

本社所在地と拠点数 : 群馬県前橋市 1店
リフォーム売上高 : 3億6000万円
OB客数 : 3600件
OBフォローの特徴 : 6人の「コミュニケーションスタッフ」が、メーンのOB宅を2カ月に1回訪問。訪問しない月はニュースレター「SUNらいふ」を送付している。

ハイブリッドホーム 古澤智一代表取締役営業統括部部長ハイブリッドホーム 古澤智一代表取締役営業統括部部長

本社所在地と拠点数 : 東京都千代田区 3店
リフォーム売上高 : 8億円
OB客数 : 1800件
OBフォローの特徴 : 18人の「ホームアドバイザー」が、OB宅を毎月訪問。元お客さんを採用するなどしてフォローを手厚くしている。

リフォーム売上のOB比率は?

――まずは会社の紹介と、OB顧客数、OBからの売り上げ比率などについて教えてください。

森田 私どもは埼玉の大宮が本社で現在、直営が13店舗あります。あとアフターメンテナンスのフランチャイズが37店です。売上高は前年で57億5000万円くらい。新築とか一部不動産なんかも入っておりますので、これを抜きますと、リフォーム売上高は48億くらい。で、リピートの比率なんですけれども、だいたい売り上げ比ですと25%くらい。件数比ですとだいたい60%くらいというのがここ数年の数字になっております。

 うちの場合は、OBのお客様全てに何らかのサービスを提供するといった考え方はあまりないんです。有料で会費を頂くお客様がいらっしゃって、その方々に対して、手厚くアフターサービスをやっていきましょうというふうにやっていますが、その会員様が1万3500世帯くらいですかね、今は。北川 うちは東京都大田区を中心に1店舗でやっておりまして、現在28人で仕事をしているリフォーム専門店です。売り上げがですね、大体6億5000万~7億くらい。リピートの比率ですが、件数でいくと約70%がリピートですね。売り上げにすると55~60%くらいになります。うちは今2カ月に1度ほどOBさんに、情報誌、ニュースレターをお送りしているんですが、それが8000所帯ですね。

古澤 会社ができまして、丸12年が経ちます。元々ミサワホームのホームイングという会社におりまして、そこで営業部長をしておったんですが、退社してから会社を設立したという経緯がございます。今現在、店舗が3店舗ございます。すべて、地域密着でやっておりまして、半径2キロから3キロ、車で10分圏内という間隔でテリトリー制をひいております。今、社員が18人で、その他、「ホームアドバイザー」というパートの主婦の方たちが大体18人くらい、在籍しております。売り上げ規模は昨年、おおよそ8億です。

 お得意様の数は四半期に1回ずつ見直すんですが、お亡くなりになったり、転居される方も色々とあるんですが、大体今、1800所帯という形です。売り上げのうち、新規が40.95%。リピートが59.05%です。件数比率だと大体新規が28%、リピートが72%というような形になっております。

吉澤 群馬県前橋市から参りました。リフォームを専門にやっておりまして、昨年の売り上げは3億6000万円。リピートの比率は
金額でいくとOBの売り上げが8割くらい。件数にすると85 %くらいですね。創業したのが1998年で、最初は下水道工事で創業しまして、前橋は当時、本下水の普及がまだまだされていなかったので。この時に新規客を増やしていきました。

 7年ほど前から、増えたOB」客に対して、リフォームに力を入れるようになり現在に至っています。OB客は現在3600件ですね。

リフォーム会社座談会 前編

「女性」「定期訪問」で関係づくり

――お話を聞いてみると、みなさんリピーターだけで年に3億~10億円くらい稼いでるわけです。どうしてお客さんがもう一度注文してくれるのか。再注文を促す方法について教えてください。

吉澤 一番リピーターの方とのつながりを保っているのはコミュニケーションスタッフ。6人の女性チームを編成してまして、3600件のお客様をだいたい6等分して訪問しています。例えばある1人は500件くらいを担当して、隔月の訪問とDMの二つを行います。ですので月にだいたい250件くらい、それを20日で回るので、1日12~13件くらいという感じですね。お客さんに会わない月の人にはDM。こちらはミニコミ紙を作って送ります。でも、その彼女たちには特には商談をさせていません。

――訪問でフォローしても営業はしないと。

吉澤 ええ、させないです。ちょっとまどろっこしい気はするんですけれど、彼女たちが来た時は商売の話はしないんだということで、お客さんとの関係を保つ。それでお客さんがリフォームを考える時期が来た時に、話が上がる。そのような仕組みです。

――訪問すると嫌がられたり、断られたり、そんなことはありませんか。

吉澤 100件に1件くらいは断られて、郵送に変えましたとか、たまにはありますけれども、そういうことにならないためにも商売の話はさせない。お客様は60歳から上くらいの人なので、訪問するとまあ寄っていきなよという感じ。田舎なんで。

古澤 私どもも地域密着ですので、毎月訪問するというのが基本です。一様に必ずインターホンは一度は鳴らすという形でやっております。OBのお客様はメーンテリトリーの中だけではなくて、周辺にもいっぱいいらっしゃるので、そういった方たちには情報誌を持って、お届けするという形をとっています。何もなく、手ぶらで行くというのは難しいものですから。イベントとかセミナーとかのお誘いも含めて、必ず月1回訪問するというのが基本ですね。加えて、四半期に1回、会社として発行するニュースレターと毎月1回発行する店からのニュースレター、ちょっとミニコミ紙みたいなものですけれども。こういったものをお得意様にお届けしているというかたちですかね。

――ダイキョーの吉澤さんと似ていますね。やはり「訪問」は重要なことなんですか。

古澤 当社にとっては、そこが唯一の差別化なので。なかなかそこまできめ細かくやる会社はないと。あえてアナログで行くのがうちの会社の武器といいますか、あくまでもうちは地域密着なので、1件ずつ、暑い日も寒い日もピンポン、ピンポンと。スタッフも女性のみにしています。元お客さんだった方もいます。

 お客様が実際にリフォームを体験して、やってみたいと思われたんでしょうね。面接に来た時に、こっちは本当にびっくりしました。何で来たんだろうと。当然、うちの利益率から色んなことが全部分かってしまいますからね。「そんな儲けっちゃってたの」なんて言われるかもしれないですから。ただ、今ではそのお客様が弊社のNo.1、トップセールスですね。

――それは引き合いをもってくる数ですか。

古澤 ええ、桁外れに多い。どのくらいかと言いますと、その方は人と話をするのが大好きで、もう自分のテリトリーに歩いていくまでに、お客さんに声をかけられちゃって、そこにたどり着かないくらいです。これはちょっと極端な例ですけどね。彼女のような人を皆さん目指しましょうとやっております。彼女のエリアではシェア率が10%。10件に1件はうちのお客さんです。ちなみに、インセンティブが一応ございまして、新規のお客様の獲得をすると一応3%。売り上げが500万であれば15万円ですね。

――女性のスタッフが多いのですが、男性や建築知識などを持った営業マンみたいな方ではダメなのでしょうか。

古澤 訪問する方がプロじゃない方がいい。生活経験が豊かな方、これは重要な要素です。潜在的なものを掘り起こす仕事なので、あんまり「もう屋根がそろそろ」とかですね、「外壁がそろそろ」なんて話をやはり毎月回ってすると、当然もう敬遠されてしまいますから。ワンちゃんの話をしたり、お庭の話をしたり、お子さんの進学、孫の話をしたりっていう、日常的な話をしに行くというところから、「ああ、そういえば、おたくリフォームやってたのね」みたいなつながり方でいい。むしろ専門的な知識がない方がいいと、そういうところはこだわっています。

吉澤 営業の話を出しちゃうと嫌がられちゃって、「もう来なくていいよ」というふうになってしまう。家を持っているお客さんは年が経てばリフォームの時期は必ずやってくるんで、欲しくない時に勧めても。そういう意味で安心感があるんじゃないかなと。

リフォーム会社座談会 前編キタセツが使うニュースレター

電話鳴りやまない「手紙」の秘訣

北川 うちはですね。今お話しいただいた2社さんとは全く違うんです。全く訪問しないんです。ニュースレターを8000件の方に2カ月に1度、お送りしてるだけなんですね。で、毎月200件~250件の電話がある。

――どんなニュースレターがリピートにつながるのでしょうか。

北川 ポイントとして、3つ出していることがあるんですね。それはまず会社がどんな会社か。会社イコール経営者。顔というか考え方、それと社員の顔も出す。どんな社員が働いているのかということ。毎回毎回、全員の顔写真を載せて、一問一答をやっています。これは社員が社員に質問をする。「一生に1回どうしても行っておきたいところはどこですか」とかなんですが、それに対して答える。意外とOBのお客さんていうのは、それを毎回楽しみに見てる方が多い。で、「今度は誰が来てくれるんだろうか」とかね。中には指名があったりも。

 あとは、どんな工事ができるのか、とかですね。そういうものをニュースレターの中で伝えていく。で、それと同時に地域密着でやっているということで、地域に開けた会社だよということも、さりげなくアピールしていますね。うちはショールームでカルチャー教室をやっておりましてね、この予定をニュースレターの中に入れる。教室の様子も伝えて。教室には一部しかこないんですが、それで私は全然いいと思っているんですね。むしろ、こういうふうに地域に開けて、「何となく敷居も低いし、何となく安心な会社だな」と伝わればいいという考え方でやっています。

――どれくらいまけばリピートが増えるのでしょうか。

北川 これはもう13、4年になりますかね。当初は毎月だったんですけど、5、6年ぐらい前から2カ月に1回にしたんですね。たまたま、あるリフォーム会社の方との出会いがあって、「うちは誕生日にカードとちょっとしたプレゼントを贈っている」という話を聞き
ましてね。それをやるようにしたことでレターを2カ月に1回にしました。誕生月が分かっていない人を除いて、月200件くらい誕生日カードを送っています。リフォームっていうのは本当に何年に1回か、下手すれば10年に1回。だから、普段から刷り込んでおけば、「何かあればキタセツ」となる。

――OKUTAではどのようにリピートを喚起していますか。

森田 「LOHAS CLUB」という会員制度に1万3500世帯の会員様がいるんですが、この一番の特徴は、「Handyman」という便利屋サービスです。要は網戸の張り替えとか、クロスが破れちゃったとか、ホントに小さな、ささいなことですね。面白いのだと「犬の散歩行ってきてください」とか、とまあそういうようなことも承ったりするんですが、この「Handyman」が何かあればすぐに対応します。ちょっとしたことで、すぐに来てもらえるという手軽さでしょうかね。キタセツさんがおっしゃっていたように、1回リフォームしちゃうと次のリフォームまで5年とか10年とか経たないとない。その間をつないでおけます。

――中でも人気のある便利サービスはなんでしょうか。
 
森田 55種類のメニューがありますが、例えばエアコンのクリーニングが人気です。こういうのは年に1回とかは必ず来ますんで、そういうので顔つなぎをしておきます。大体平均すると年に2回とか3回とかなんですけれど、そういう御用聞きみたいな形で関係性がずっと継続していきます。「あ、そうだお風呂のリフォームしよう」とか「キッチンのリフォームしよう」といった時にまず1番に思い出してもらえるので、少なくとも見積もりには呼んでもらえるのかなと。作業工賃は基本的に無料となっています。1回呼ぶのに、出張費だけ3000円頂いています。

――アフターの会員組織の有料化は極めて珍しいと思います。

森田 もう20年くらいになるんですけれども、スタートした当初は会費は1種類だけでした。でも段々とこう、色んなサービスを増やしていったら、ちょっと今の会費だと維持できないねということで、会費の種類をいくつか作ろうということになりました。今は「エコノミーコース」、その上に「スタンダードコース」、一番上に「VIPコース」という3グレード。で、3000円、6000円、9000円という。これは半年の会費です。有料というと、会員にならなさそうと思われる方もいるのですが、やっぱり、アフターメンテナンスって、お
客様もすごく気にされています。入会率で言いますと、うちの場合は「LOHAS studio」というデザインリフォームを手がけていますが、やはり500万を超えるような受注ですとほぼ100%入られますね。それだけ家に投資をされている方っていうのは家に関心がありますんで、そういうちょっとしたことを頼める仕組みは非常にありがたいとおっしゃっていますね。大体100万円未満の工事の方だと50%くらいですね。

――会費だけでも結構な収入です。

森田  年間で1億超えていると思いますね。会費は基本的にポイントとしてたまっていく形になっているんですよ。要は掛け捨てではない。現金ではお返しできないんですけれども、例えば、先ほどの3000円の出張料金をポイントで支払ったりとか、リフォームの工事をリピートする時もポイントを使えるようにしているんですね。それもすごくお得感があるということで、入会率を上げています。この会員さんからだけで、10億円くらいのリピート売り上げがあります。

一人のOBからいくら稼げるのか

――「生涯顧客化」を今回テーマにしていますが、1人のお客さんをフォローし続けると、どれくらいのリフォームを頂けると思いますか。

北川 1所帯1500万くらいは見込めるかなとは思うんですけどね。例えば300万、200万、50万、100万とそんな感じでリピートしていって累計で1000万は超す人はいます。

古澤 私どももちょっと高いかもしれませんけど1500万円くらいですね。お得意様が「もうこの家はリフォームしても...」っていうことから建て替えていただきました。その建て替えしてから10年経って、今、またリフォームが始まっているっていう、奇跡的なつながりが1件だけあります。本当に生涯のお付き合いになっています。建て替えする前のリフォームが100万円前後だったんですが、その建て替えが1億だったんですよね。これがリーマンショックの時。だから、それがあったか、なかったかで、えらい違い。助けていただきました、ホントにその方に。こういう方がこれから、何件か出てくれば、「それが究極だね」とうちでは言っています。

吉澤 私は500~800万くらいだと思っています。それとうちはご夫婦のどちらかがお亡くなりになった時に、今言った500~800万の他にリフォームが生まれるってことがすごくある。どういうことかというと、特に旦那さんが亡くなった時、けっこう大きなリフォームを奥さんがされる。200万、300万のもの。何でかは分かりませんが、逆はあんまりなくて。旦那さんがなくなって、いきいきと、ですかね。あとは新聞なんか見てると、お亡くなりになった方の名前が分かるので、コミュニケーションスタッフがお線香のセットを持ってお伺いする。

 そこにあんまり他意はないんですけれど、そんなことをやってると実はそこから情報が上がったりというのが経験上あります。うちは不動産もやってるので家を何らかの形で処分したりとか、リフォームをして売却するとか、買った人がリフォームをするとかしています。そんなのも、言ってみればその家を最後まで見る、と考えられます。そう考えると一人で1000万くらいいく時がありますね。

森田 データで見てみますと、11年間で28回リピートされていて、リフォーム総額が2159万という方がいます。まあ、それは一番多い方です。リフォームっていうことだけで区切っていくと、平均単価が55万とかなんで、多分、5回とか、6回とかはやるでしょうから、そうやって見ると多分最初のリフォームを入れて600万とか。割と少ないかな。ただ、生涯顧客っていう考え方で言うと、家を処分してほしいとか、そういうご相談が結構来ます。そういうことで全部含めてみると、1000万円かそこらじゃ済まないですよね。

――きちんとフォローし続けることは事業を大きく拡大させる、と言えそうですね。

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