・省エネ基準適合義務化延期について、問題点を解説
・問題点として、工務店の習熟度の低さや消費者の関心の低さが挙げられる
・義務化への施策として、事業者と消費者の双方への情報発信が進められている
2020年に予定されていた新築住宅の省エネ基準適合義務化が見送りになった。政府は2月15日、「建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定。新築住宅は対象から除外され、開始時期から見直すことになった。2010年から議論されてきたこの問題がなぜ、1年後の実施を前に延期になったのか。詳報する。
ユーザーの関心は65%にとどまる
省エネ基準の住宅への適用が見送られた理由は3つある。1つは「工務店の習熟度が低い」という点だ。
昨年9月21日、国土交通省で開催された「第15回建築環境部会」で、「工務店の約半数が省エネ計算ができない」という衝撃的な資料が提出された。「一次エネルギー消費量」の計算ができない事業者は全体の49.5%、「外皮性能」の計算については46.2%ができないことが分かった。
グラフ(1) 中小工務店の省エネ基準への習熟度
続く10月29日の「第16回」の部会では、建築士会連合会が同様の工務店の習熟度に関する調査データを提出。そこでも、「一次エネルギー消費量」および「外皮性能」それぞれを約半数の事業者しか計算できず、さらに両方できる事業者は17%にとどまることが分かった。
2つ目が消費者の省エネ住宅に対する意識の低さ。住宅性能評価・表示協会が実施したアンケートでは、省エネ住宅の購入を「ぜひ検討したい」と回答した消費者は65.3%で、義務化1年を前にして浸透していない現実が浮き彫りになっていた。
3つ目が、省エネ住宅を建てた際に、届け出を受ける所管行政庁の受け入れ体制の整備の遅れ。2017年度時点で中規模住宅の届け出率は69.3%にとどまっており、小型の住宅の届け出が爆発的に増えると、行政庁が対応しきれない可能性も部会では指摘された。
これらの結果から部会は、2020年に義務化を実施すると、全国で混乱が発生する可能性があることから、延期によってスケジュールを仕切り直す答申を取りまとめるに至った。
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