長期優良住宅化リフォーム ◆特集◆
2014年2月7日から始まった長期優良住宅化リフォーム補助金制度。平成25年度補正予算20億円分の申請は2月28日に締め切られた。しかし、国土交通省は平成26年度予算として31億円を本予算案に盛り込んでおり、また、今後数年にわたって同補助金制度を継続する構えだ。
そこで本特集では、同制度解説とともに、全国の有力リフォーム会社の取り組みを紹介する。
補助は工事額の3分の1
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、性能向上にかかるリフォームに限定し、工事費用の3分の1、最大100万円を補助する制度。リフォーム市場の拡大と、良質な中古住宅の流通促進が目的だ。
対象工事は、
- 特定性能向上工事
- その他の性能向上工事
に分かれている(図1参照)。
このうち、(1)の特定性能向上工事に含まれるのは劣化対策、耐震性の向上などの6項目。一方、(2)その他の性能向上リフォームには、インスペクションで指摘を受けた箇所の工事や外壁、屋根の改修工事などが入る。
ここで注意したいのが、(1)の特定性能向上工事の費用が全体の過半を占めなければならない、という点だ(図2参照)。例えば(1)に該当する工事が合計で120万円、(2)の工事が150万円、インスペクションや書類作成費用に合計30万円の合計300万円の工事になったとする。
しかし、この補助額は100万円にはならない。(1)の120万円が過半と設定されるので、全体工事額は240万円、補助費用は80万円になる。
インスペクションと劣化、耐震が必須
この事業には、必ず行わなければならない項目が3つ設定されている。インスペクションの実施および劣化対策と耐震性の向上にかかる工事だ。
インスペクションは、一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会の現況検査チェックシートによって行う。項目は、基礎、外壁、屋根など10項目にわたり、リフォーム前の住宅の劣化状況を確認する(図5参照)。
実施者は、「当該住宅について設計・工事監理ができる建築士免許を有する者」。無資格の者が本事業のインスペクションを行うことはできない。
なお、現状では、インスペクション実施者に第三者機関などの制限はない。有資格者であれば可能だ。なお将来的には、住宅瑕疵担保責任保険協会によるインスペクション講習の受講、登録者に限定される可能性がある。
劣化対策と耐震性能の向上については、最低限としてA基準(図3参照)を満たさなければならない(図4参照)。A基準は、例えば劣化対策等級2を満たす、新耐震基準による住宅である、など特定性能向上リフォームそれぞれについて設定されている。
25年度補正予算については、補正予算としてのスピード感を重視してA基準のみの設定だが、26年度本予算からは、新築住宅と同等水準のS基準200万円のコースも予定されている。
採択結果は申請締切後3週間~1カ月
性能向上リフォームの提案を希望する事業者は、まず独立行政法人建築研究所のサイトにある専門ページから事業者の登録を行う。その後、所定の応募書類を提出する(図6参照)。
採択に要する期間は、申請締め切り後およそ3週間から1カ月。採択にかかる判断基準は以下4つに示されている。
- 多くの事業者が本制度を利用できること
- リフォーム後の性能が高いこと
- 早期かつ確実な着手が見込めること
- リフォームの工法や仕様が多様であること
なお、提案案件について、案件のすべてが採択されるわけではないことに注意したい。
採択後は事務局から交付決定の通知が届く。これを受けて、リフォーム会社が補助金額の詳細を算出して、補助金の交付申請を行う。再び事務局から交付決定通知が出されれば、工事を開始することになる。
工事終了後には完了の実績を報告する。事業者が提出した書類をもとに事務局が交付申請の内容に沿って事業が実施されたかを審査するとともに、事業の成果が条件に適合すると認めた時に交付金額を確定し、支払いの手続きを行う。
≪リフォーム会社の声≫
「準備期間不足」
本制度の申請に関して取材した5社では、補正予算分に関しての対応は分かれた。
山商リフォームサービスは上限の50件申請。契約の決まった案件に、提案中の案件も合わせて行った形だ。一方、ナサホームとOKUTAは契約確定の案件に対してだけ、申請した。
フレッシュハウスと土屋ホームトピアは今回未申請。平成25年度補正予算分の申請が、制度の開始から1カ月に満たないことや、国交省の開催する説明会が2月下旬や3月に入ってからになったため、顧客への十分な説明ができなかったことが要因。
26年度以降については、5社全てから積極的に活用する回答を得た。
多くは自社単独で提案する計画だが、フレッシュハウスは業界団体と協力して、グループ申請を行う考え。申請に関わる書類作成などを協力して行うことで効率化し、自社では提案の拡大に力を注ぐ構えだ。
同社はインスペクションも第三者機関に依頼する。現行ではインスペクションの実施者に第三者機関等の制限がないものの、同社では同制度に関わらない工事も多く行っているため、自社人員をインスペクションに割かずに進めていく。
様子見の声も
「技術的に不可能ではないが、すぐの活用は難しい」と話すのは、ある東京都のリフォーム会社社長。同社は500万円前後の工事も年間で数十件行っているが、同社はデザインを重視した内装リフォームを提案の中心にしており、耐震や劣化対策といったリフォーム後の変化の見えにくい工事をどう提案するか、「他社の動きを見て導入するか検討したい」との回答があった。
客層が合わないとの意見も多い。千葉県の有力リフォーム会社の顧客の約60%が50~60代。東日本大震災以後しばらく耐震に関する関心も高く、補強工事も多く行ってきたが、現在は減少している。「そこまで同じ家に長期的に住みたいと思う顧客は少ないため、当社では要望がない限り申請はしないつもり」(同社関係者)
商材と合わないと漏らす企業もある。水まわり工事を中心に年間2万件以上の工事を行う東京の会社では、「専門チームを作って研究はさせているが、そもそも設備交換を中心とする当社では、提案に結びつきそうな案件は現状上がってきていない」(同社社長)という。
差別化のチャンスと見る動き
「積極的に導入したい」と話すのは、東京で新築とリフォーム両方を提供するビルダー。同社は、耐震リフォームを商品として打ち出している。「当社は新築で積み重ねた耐震についての知識、経験をすでにリフォームに生かしていますので、他社との差別化を進めるチャンス」と同社社長は話す。
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