全国986店！ 家電量販店のリフォーム進出加速、ヤマダHD売上700億円達成、エディオンも好調

家電量販店のリフォームビジネスが勢いを増している。ヤマダホールディングス（群馬県高崎市）の2022年3月期のリフォーム売上高は前期比2割増の727億円に達したことが明らかになった。エディオン（大阪府大阪市）ら他の大手も売上を伸ばす。彼らがリフォームに乗り出す背景、専門店が取るべき道を探る。

《目次》​

家電店のリフォーム窓口、10年で4〜5倍増

• 1) 各社増員・増収顕著に
• 2) ヤマダHDの「暮らしまるごと戦略」

こどもみらい住宅支援事業、追い風に

• 3) エアコンとシナジー発揮　ビックカメラ
• 4) リフォーム未参入企業も反応　ノジマ

エディオン、ニトリ提携の背景

• 5) 家電市場は3割縮小
• 6) バーチャル店舗開設　上新

専門店は商圏内の深堀りを

• 7) 零細業者の本音、伊藤建装
• 8) 専門家「恐れるものは何もない」

家電店のリフォーム窓口、10年で4〜5倍増、全国に986店舗

各社増員・増収顕著に

リフォーム事業を手がける家電プレーヤー

※売上高（前期）、店舗（拠点）数、社員数はリフォーム事業に限る

「最近、近くに家電量販店ができてお客さんを持ってかれている。原価高騰で値上げしたいのに、価格競争で負けてしまう」。あるリフォーム会社社長はため息を吐く。本紙が2021年秋に実施した「住宅リフォーム売上ランキング」ではトップ10のうち2社が家電業者だった。ヤマダホールディングスとエディオンだ。

リフォームを扱う店舗数はヤマダHDが187店、エディオンが413店で合わせて600店に及ぶ。「ビッグ7」と呼ばれる家電大手のうちリフォームに積極的なのはこの2社に加え、上新電機（大阪府大阪市）とビックカメラ（東京都豊島区）だ。前者は202店舗、後者は傘下のコジマ（栃木県宇都宮市）と合わせて184店舗で、先の2社と合わせると合計986店にも及ぶ。

ヤマダHDが本格的にリフォーム事業に参入したのは、住設メーカーのハウステックを子会社化した2012年のこと。当時のエディオンの店舗数は156。2008年から参入していたコジマの店舗数は非公表だが、上新電機とビックラメラの参入はその後のことで、家電量販店のリフォーム店舗数は過去10年間で4、5倍にも膨れ上がったと捉えられる。家電販売店と相見積もりにならないほうが不自然なほどの地殻変動をもたらしている。

ヤマダHDの「暮らしまるごと戦略」

最も勢いを感じさせるのは、家電市場で売上1位を誇るヤマダHDだ。同社の2022年3月期のリフォーム売上高は727億円に達し、前期の587億円から2割増に。リフォームの社員数も978人から1203人に増加した。

デンキ、住建、金融など複数ある同社の事業のうち、リフォームはデンキ事業に含まれる。白物家電やデジタル家電、家具などと同じカテゴリーだ。一方、新築や不動産をメインとする住建事業は昨年のレオハウスに続き、今年4月にはヒノキヤグループを買収するなど、ハウスメーカーのM＆Aを加速。ハウステックを含めた連結事業で前期比48％増とこちらも大幅に伸びている。

一方、全体の売上は1兆6193億円で前年度比7.6％減。とりわけ事業のメインとなる家電の落ち込みが顕著だった。そこで同社が仕掛けるのは「暮らしまるごと」戦略だ。家電はもちろん大塚家具などの家具ブランドを、リフォームとミックスして提案する方向にシフトしている。同社経営企画室長兼執行役員の清村浩一氏は次のように説き明かす。「家電を買いにお越しいただいたお客様に、生活のお困りごとを解決できるリフォーム商品が並ぶ売り場もご覧になっていただきます」

こうしたコンセプトを打ち出した「LIFE SELECT（ライフセレクト）」という店舗を全国に次々とオープン。この６月には大阪市浪速区に同社最大級の店舗を開設した。キッチンやトイレなどの住設ショールームの脇に家具、家電などが置かれており、それぞれの相乗効果を見込む。

ヤマダHDは6月、大阪に「LABI 1 LIFE SELECT なんば」をオープン、同社史上最大級の売場面積と品揃えを誇る

ヤマダホールディングス
執行役員
清村浩一氏

こどもみらい住宅支援事業、追い風に

エアコンとシナジー発揮

大阪に本拠地を置くエディオンも黙ってはいない。同社のリフォーム売上高も伸びており、2022年3月期は前期の52億円プラスとなる572億円（速報値）に増加した。工事件数も前年の12万件に対して13万6000件に達した。同社の勢いを後押しするのは、政府が今年1月から開始した助成事業「こどもみらい住宅支援事業」だ。