冬の寒さも本番。暖房費を節約しながら、効率良く部屋を暖めたい、と考える人は多い。断熱性能がよく、高気密の住宅ほど、住宅の寒さは改善され、暖房費も節約できる。今回は、暖かさを逃がさない省エネ住宅の断熱性能について考える。
エアコン28度でも「寒い」「足が冷える」
冬の快適な室内温度は、18~22度といわれる。環境省では、室内の暖房設定温度は20度を推奨している。LIXILが昨年行ったアンケート調査によると、寒さ対策でエアコンを使う人は66%でトップだった。
また、このアンケートで「エアコンを使う」と回答した人に、エアコンの設定温度を尋ねたところ、「28度」と回答する人が最も多かった。暖房の平均温度も24.7度と、快適温度より5度近く高めであることが、明らかになった(図1)。
【図1】エアコンは28度の設定が最多
冬場のエアコン設定温度を尋ねたところ、平均の設定温度は24.7度だった。具体的には「28度」が全体の21.4%と最も多く、次いで「25度」、「20度」だった。

ただし、このようにエアコンの温度設定を高めにしても、部屋の寒さを感じることがある。それは、その部屋の「体感温度が低い」ことと、「足元の冷え」の2つが原因に挙げられる(図2)。
【図2】設定温度が高いのに「寒い」理由

体感温度とは、人が感じる温度のこと。断熱性が低い家の場合には、窓や壁の表面温度が下がるので、体感温度も低くなる。
また足元の冷えは、室内の上下に温度差ができることが原因だ。壁や窓の隙間が多いと、冷たい空気が侵入して暖気を天井付近に押し上げ、冷気が足元にたまりやすい。
※図1、2はLIXIL「自宅における冬の寒さ対策と窓に関する意識調査」2013年10月23日
断熱性能アップが暖房の決め手に
築年数の古い家から新築住宅に引っ越すと、「暖かく快適になった」と感じる人は多いはず。その理由は、住宅の「断熱基準」が上がっているためだ。
住宅の「断熱基準」は、省エネ法の省エネルギー基準によって決められている。昭和55年に出されて以来、省エネ基準は改訂を重ね、そのたびに住宅の断熱性能はグレードアップしている。昭和55年の基準は「旧省エネ基準」と呼ばれ、等級は2。その後、平成4年に「新基準」に向上。断熱性能の強化などが盛り込まれ、等級が3に上がった。
さらに平成11年には「次世代省エネ基準」として全面的な見直しが行われ、それ以降、新築される住宅の断熱性能は等級4となっている。つまり、住宅の築年数で、その住宅の断熱性能が分かるようになっている。
熱環境が専門の秋元孝之・芝浦工業大学教授は、住宅の断熱等級と「住宅の寒さ」の関係を実験し、昨年行われたセミナーで結果を公表した。それによると、「足元の冷え」を引き起こす室内の上下の温度差は、等級4ではほとんどなく、等級2では上下の温度差が1.5度近くあることが分かった(図3)。
【図3】等級2~4の実験室で測定した、上下温度分布と改善度
足元の冷えの原因である「上下の温度差」は、ついたて、カーペット、窓フィルムで改善できるが、断熱性能を等級4に高めるのが最も効果が高い。

暖房に使う消費電力量についても、等級4の住宅が最も省エネ型で、等級3の住宅の2分の1程度、等級2の住宅の3分の1程度であることも明らかになった(図4)。
【図4】等級2~4の実験室で測定した、消費電力量と改善度
等級が高いほど、省エネ型。ついたてやカーペットに節電効果はないことが分かる。

「等級4で効率よく寒さ改善」
秋元孝之・芝浦工業大学工学部教授
室内の上下の温度分布は、頭の高さと、足元のくるぶしの高さとで3度以内にしないと、足が冷えると言われています。建物の断熱性能が十分でないと、暖房をしても部屋の上と下で大きな温度差ができてしまうことがあります。
断熱性能の低い等級2相当の実験室では、上下の温度差が大きいのですが、窓についたてを立てて断熱対策をすると、等級4に近い温度差に改善されました。
ついたては窓際からの冷気を減らす効果はあるのですが、省エネ効果は低いという結果が出ました。部屋全体の消費電力量を減らすのには、等級4の住宅が最も効果があります。等級が2から4に上がるほど、上下温度差、快適度、消費電力量がすべて改善できます。
国の省エネ施策を利用しながら、断熱性能の良い住宅に改修していくことをお勧めします。
部位別の短期リフォーム
断熱性能の向上は、省エネにつながるだけでなく、結露の防止や健康改善にも役立つ。「断熱リフォームは高価で、手間がかかる」というイメージがあるが、最近では、窓、床、壁など部位別に、数日で行う断熱リフォームが商品化されている。自宅の寒さを測定するツールも開発されている。住宅の寒さに悩む施主には、寒さ測定の手軽さや、断熱リフォームのメリットを積極的に伝えていこう。
断熱効果の実験 等級別に測定
実験装置は、既存の建物の中に、等級2、等級3、等級4の実験室を作り、外側を冬の気温条件に設定。室内をエアコンで暖房し、断熱性能と節電性、温熱快適性に関する実験を行った。
断熱性能の低い等級2の実験室では、断熱対策を何も施さない場合と、家庭で手軽にできる断熱対策をした場合の温度の変化を測定。窓の断熱を高めるための対策として、ついたて、カーテン、窓フィルム、二重窓、床の冷え対策にホットカーペットと断熱マットを使用した。サーマルマネキンが感じる快適度も測定した。結果は、断熱性能の最も高い等級4が、寒さを最も効率よく改善することが分かった。
【図5】断熱対策ごとの比較
等級4の実験室は、上下温度分布、等価温度分布(温熱感向上)、消費電力量のすべての点で最も効果が高いことが分かる。

※図3~5は秋元孝之教授「住宅における冬期の節電手法に関する効果の検討」より

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