昨年末から大手メーカーによる値上げの発表が相次ぎ、リフォーム業界に激震が走っている。リフォーム会社経営者も「価格が上がる商材は売りにくくなる」とため息を吐く。各社の声を辿ると、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した原油価格の高騰、それに伴う流通の停滞が主要因であることがわかってきた。もはや一企業の努力だけでは補えないレベルで、業界一丸となって乗り越えていくべき課題となっている。
【リポート/編集部 芦原拓、高田遥介】
アルミ高騰想定外、LIXIL社長「転嫁せざるをえません」
「さまざまな要因が重なり合い、原材料費の高騰に終わりが見えない状況。お客様へのご理解、ご協力を仰いでいる最中です」。こう苦しい胸の内を明かすのは、あるメーカーの関係者。今、大手メーカー各社は希望小売価格の改定に頭を悩ませているのだ。
LIXIL(東京都江東区)は昨年12月に4月からの価格改定を発表した。主要商品では住宅用サッシが10~12%程度、エクステリア関連が10%程度、トイレが2~33%程度、ユニットバスルーム4~39%程度、キッチン2~11%程度などの値上がりとなっている。
理由のひとつは原材料費の高騰だ。木材や銅の資材価格の上昇などについては予想の範囲だったが、アルミニウムの13年ぶりとなる高値は想定外だった。原料となる鉱石ボーキサイトの主要生産国ギニアで政変が起こったことなどが背景にある。「高く買ったものは安く売れませんので、基本的に上がった分は転嫁せざるをえません」と瀬戸欣哉社長は話す。原材料費の高騰だけではない。「自然災害やサプライチェーンのひっ迫など、世界的に外部環境が厳しい状況下で、企業努力だけ対応するのは困難です」とは同社広報の弁だ。
LIXIL 瀬戸欣哉 社長
TOTO、材料費76億円増の背景に「アイアンショック」
TOTO(福岡県北九州市)も今年10月から値上げに踏み切る。衛生陶器が3~8%、ユニットバス・システムバスルームが6~20%程度、システムキッチンが2~7%ほど値上がりする。
同社によれば著しく高騰した材料は銅、樹脂、鋼板の3つ。銅は主に水洗金具に使われる。蛇口の表面こそニッケルクロム鋼でメッキが施されているが、内部など主要な部分は銅が占めている。樹脂は、アクリル系が人工大理石やユニットバスの壁に使われたり、エポキシ樹脂がキッチンのカウンターなどさまざまな製品に使用。さらに、FRP(繊維強化プラスチック)がウォシュレットの便座にも使われる。3つ目の鋼板も建具などに使用される。いわゆる「アイアンショック」問題の余波を受けている。
値上げを発表したのは今年1月の第3四半期の決算報告のタイミングだった。9カ月間の営業利益は前期281億円に対して149億円増の430億円となったが、原材料費が前期比76億円増となった。「原材料費が前年と同じであれば500億円の営業利益になっていたと考えれば、インパクトがある数字。9カ月でこの数字なのでこのまま行けば、1年で100億円を超えてしまう」と同社広報部の佐藤主税氏は危機感を抱く。
2019年にも値上げに踏み切った同社だが、それは13年ぶりのことだった。そこからわずか3年での値上げは想定外のことだと佐藤氏は強調する。「国内の値上げには慎重です。売り上げが下がるのを心配する社員もいる一方で、もはや限度を超えたという意見もあり、盛んに議論が交わされました。企業努力でカバーするにはなかなか難しいレベルという結論になりました」
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