《点検・検査機器を活用》 機器の進歩と低コスト化で有力な提案ツールに

業務のアウトソーシングサービスなど利用の幅も広がる

　最新の点検機器を活用したリフォーム提案が広がりを見せている。見えない部分を消費者に見せることができる床下点検ロボットや高所点検システム、赤外線によるサーモカメラなどの利用が増えている。機器の低価格化、高性能化が進み導入と運用がしやすくなったことも浸透の理由の一つ。点検・検査ツールの今を取材した。

大和ハウス工業のmoogle。昨年の第6回ロボット大賞で優秀賞を受賞した。

住宅にも身近になるロボット技術

　住宅の点検・検査機器と言えば、アナログな水平器や破壊検査機器などがまず思い浮かぶかもしれない。だが、このところロボット技術を活用したハイテク機器の利用が広まりを見せている。こうした点検・検査機器の代表格が「床下点検ロボット」、「高所点検システム」、「赤外線サーモカメラ」だ。

　床下点検ロボットはその名の通り、床下に設置し、リモートコントローラーで操作を行って床下の現状を調査する目的の機器。トピー工業の「エニーⅡ」、日立産業制御ソリューションズの「点検支援ロボット」、大和ハウス工業の「moogle(モーグル)」などがある。

日立産業制御ソリューションズの高所点検ロボットカメラ。カメラは小型化され、高性能になっている。

　いずれにも共通するのは、床下の現状をリアルタイムでエンドユーザーと共有できる点。中継される床下の状況をモニターで即時に見ることができ、透明性が上がる。点検過程を共有することで一気に信頼を得ることができる。

　高所点検システムは、屋根や外壁などの高い位置にある部位を足場を組まずに点検ができるもの。操作方法は専用コントローラーを使うものが多かったが、タブレットで操作可能な機種も出てきており、進歩は著しい。

塗装会社の高城での活用事例。
手元のタブレットで操作でき、点検の様子も見ることができる。工事中の経過報告など、フルに活用している。

　カメラの性能も上がり、軽量化されていることで持ち運びも以前に比べれば容易になっている。高所点検カメラを活用する神奈川県の塗装会社高城(神奈川県相模原市)では、車の屋根にキャリー用のケースを付けてその中に収納して現場へと赴く。「現場調査の際にお客さんと一緒に点検箇所を見られるのが最大のメリット。見えない屋根の上で、私達が点検するのでは、お客さんに一抹の不安が残ってしまいます」(高城　小早川和廉社長)。

　赤外線サーモカメラは通常では見ることのできない温度を可視化できる。壁の温度や窓の温度などを見せることで断熱リフォームの提案や雨漏りの診断、遮熱塗料の効果を目で確認してもらうなど、様々な場面で活用が考えられる。

危険な場面を減らし施主の満足度も向上

　安全性を考慮する上でも、こうした点検機器の効果は大きい。現場調査の際に足場を組まずに屋根に上がったりする行為は落下事故の原因となりやすい。とはいえ、現場調査の度に足場を組むわけにもいかないのが実情だろう。高所点検システムを活用して現場調査時の危険を減らすことができる。

　床下点検ロボットにも同じことが言える。夏季や冬季の床下は気温によって非常に作業しにくい過酷な環境になっている。十分なスペースもなく、点検作業には危険がつきまとう。点検作業での事故を減らす上でも、また施主に安心感を付与するのにもこうした点検機器の活用は有効だ。

低価格化進むが購入以外の選択肢も

　点検機器の価格は下がりつつある傾向にある。技術の進歩で高性能化が進むと同時に、コストも下がっているのだ。赤外線カメラなどは約10年前まで100万円以上した機種と同等の性能で10万円台の機種も登場するなど、購入のハードルは下がっている。

　また、アウトソーシングサービスも徐々に広がりを見せている。点検員と床下点検ロボットを派遣して点検を行うサービスを日本住宅保証検査機構(JIO)が首都圏限定で試験的に開始。また、流通会社の和以美が支援サービスとして床下点検ロボットの貸し出しをテスト的に行っている。

　こうした業務を委託できるサービスと購入した方が良いかは使用頻度によって異なる。頻繁に使用するのであれば、購入した方が良いが、年に数回程度であればアウトソーシングした方がコストを抑えることができる。点検機器を扱うスタッフの訓練などに掛かる時間やコストも含め、検討したい。