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《光触媒塗料》太陽光と雨が外壁を"セルフクリーニング"

《光触媒塗料》 太陽光と雨が外壁を"セルフクリーニング"

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 住宅市場で"光触媒"といえば、高付加価値塗料として知られているが、施工の難しさや価格の高さ等で普及が進まなかった。だが最近、施工が簡単で低価格な商品が開発され、注目されている。

〝分解力〟実験 2枚並ぶタイルの左が光触媒タイル、右が普通のタイル。5分後には光触媒タイルの印が消えた
【写真1】"分解力"実験2枚並ぶタイルの左が光触媒タイル、右が普通のタイル。5分後には光触媒タイルの印が消えた

驚くべき"分解力"と"親水性"効果

 "光触媒"は、光(紫外線)の力で、自らは変わらず周りのものの化学反応を促す働きをもつ。"光触媒塗料"は、その酸化チタン触媒の"分解力"と"超親水性"を利用した高機能な塗料だ。下の写真は、光触媒の性能の高さを実験で示したものだ。

 【写真1】は光触媒タイルの"分解力"の実験。紫外線ライトを当てると、左の光触媒タイルだけが汚れに模して書いたマジックの模様が5分もしない間に消えた。表面に紫外線を当てると活性酸素が発生し、菌や有機物を分解するからだ。さらにこの"分解力"にはカビや藻等が生えにくくなる効果もある。

 一方、【写真2】は"親水性"、いわゆる"水に対するなじみやすさ"の実験だ。6カ月間、風雨にさらされる"暴露実験"後を見る。右から中央の素材には付着した雨筋汚れ等が、左端の"光触媒塗装"では、ほとんどなかった。

図1
【図1】

 素材の表面と水の接触する角度を"接触角"というが【図1】、角度が大きいと水滴を作り、小さければそのまま濡れ広がる。"光触媒塗装"は接触角5度という"超親水性状態"になるため、汚れが付いても表面との間に水が入り込んで広がる。浮き上がった汚れは、雨が自然に洗い流す。太陽光と雨の力で"セルフクリーニング"を行うのだ。


【写真2】"親水性"実験左から素材はECO-HG・低汚染型アクリル塗装・低汚染型アクリルシリコン塗装

施工の難しさ、高価格がネックに

 優れた性能を持つ"光触媒塗料"だが、施工や価格に問題があった。早くから商品化に取り組んでいるTOTOは、2007 年「ハイドロテクトカラーコートECO-EX」を販売した。

 「この商品は光触媒の効果を最大限に発揮でき、現在も多く使われています。しかし下塗り・中塗り・上塗りの3工程を行った上で、さらに1μという薄さで均一に表面にコートを塗り込むもう一施工が難しい、という声を頂きました」(TOTO環境建材事業部・吉本昇司部長)

 同社は"光触媒塗料"の性能の均一化のため"認定施工店制度"を導入したが、その手間もコストに反映された。「EX」は材工単価4800円/平米の設定。住宅1軒分を150平米とすると、材工で約80万円、エンドユーザーへの提供価格では、150万~200万円近くになる。さらに同社は商品開発を続けた。

簡易施工の商品を投入

 昨年5月、同社は「ハイドロテクトカラーコートECO‐HG」を発売した。防汚性能を保ちながら、一般塗料と変わりない3工程での施工。価格も2800円/平米と割安な設定にした。住宅1軒分だと、材工費用約50万円、ユーザーへ100万円程度で提供できる。「『HG』販売に合わせ"認定施工店制度"は廃止しました。売り上げは25%程アップしましたが、さらに多くの方にお使いいただきたい」(同氏)

抗菌作用を持つ"光触媒タイル"実用化

 "光触媒"技術は、多くの分野で活用されている日本発のテクノロジーだ。

 発見、実用化した東大の藤嶋昭教授(現東京理科大学長)の研究室との共同開発により、TOTOは1993年、抗菌作用を持つ"光触媒タイル"実用化に成功。独自ブランド「ハイドロテクト」シリーズを立ち上げ、さまざまな環境建材の開発を行っている。

全面セラミックのハイドロセラ・フロアJ
全面セラミックのハイドロセラ・フロアJ

 最近では、抗菌・防汚効果のあるトイレの床材「ハイドロセラ」シリーズが好評だ。男性が洋式便器を立って使用すると、まわりには1日2000滴の尿ハネが生じ、空気に触れると菌が発生し、悪臭の原因となる。「ハイドロセラ・フロア」は、24時間後に1000万個近くまで増える大腸菌を"抗菌"し、99%以上減少させる。

 同シリーズを扱う環境建材事業部は2013年度の売り上げは89億円、2017年には155億円を目指している。

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