塗装、リフォーム、新築・不動産の3事業を展開し、33億円を売り上げるオリバー(富山県富山市)が昨年7月に日本そばを提供する飲食店「OLIMBA」をオープン。有力リフォーム会社が、飲食店の中でもなぜ「そば屋」を開業させたのか。小川博司社長は「OLIMBAはおもてなしのそば屋」と話す。
「OLIMBA」外観
ブランディングを後押しする4つの狙い
富山駅から車で約10分の郊外に建つ「OLIMBA」。ウォーターウォールを採用したファサードを抜け、店内に足を踏み入れると、圧倒的なスケール感を持つ塗り版築の壁が目に飛び込んでくる。「木と水がテーマ」という内装は天然木がふんだんにあしらわれ、自然のあたたかみを感じられる上質な空間が広がる。店舗面積は90坪で客席は80席。ほか、8人が座れるVIPルームも用意した。「天もり」「天ざる」といった代表的なそばから、ラー油やホルモンを使用したつけそば、鴨しゃぶの宴会コースなどメニューも多彩で、家族連れから女性の1人客まで客層も幅広い。客単価は平均1100円以上で、年間売上目標はおよそ6000万円。「そもそも僕は、毎日1食はそばを食べると決めているほどそばが好き」と語る小川社長だが、開業の理由はもちろんそれだけではない。
そば屋オープンの狙いは大きく4つある。1つ目は「社員のセカンドキャリア」だ。
創業20年目を迎えるオリバーには、定年退職が迫ってきた社員が複数人いる。蕎麦農場の管理を視野に入れる小川社長は「定年といってもまだまだ元気な世代。安全にセカンドキャリアを歩める場所を用意すれば、建築の第一線で培った経験を管理などで生かせるのでは」と話す。
2つ目は「福利厚生」で、こちらも狙いは社内向け。社員食堂のような立ち位置で、社員が割安で食事を楽しめる場所としてすでに活用されている。
3つ目は「顧客へのおもてなし」。同社の新築事業部では、施主と関連業者を招いた着工式を、「おもてなし」をテーマに新本社カンファレンスルームで実施している。「お客様にとって、着工式が結婚式の次に最良の日となるよう、心づくしのおもてなしを提供してきた。着工式の締めくくりにOLIMBAでコース料理を召し上がっていただけば、さらなる感動を胸にお帰りいただけるのでは」(小川社長)。同社のテーマでもある「おもてなし」を体現できる場所として、そば屋を機能させているようだ。
そして4つ目は、「顧客との接点構築」だ。新築・リフォームはどうしてもOB客との接触頻度が低くなる。しかし、足を運びたくなる飲食店がエリア内にあれば、おのずと接触頻度を増やすことができる。足を運ぶきっかけづくりとして、店舗のクーポン券やサービス券を、同社発行の情報誌に同梱して送るサービスも実施。おもてなしで感動した顧客との接触機会を絶やさない効果も期待できそうだ。
さらに、こだわりの店舗デザインが、好循環を生み出していると小川社長。「飲食店としては外装・内装共にコストをかけすぎましたが、建築屋が自社の技術力・設計デザイン力をPRする良いシンボルになっている。富山市のベストショップコンテストでも入賞し、より話題になっています」
「おもてなし」をテーマにブランディングを進める同社。その軸に沿った新業態がさらなる成長を後押しする。
左:「木と水がテーマ」の内装
右:多彩なそばのメニュー

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