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「石綿調査報告義務化」でリフォーム会社の資格取得が半年で10倍に!「知らん」「どないすんねん」の声も

「石綿調査報告義務化」でリフォーム会社の資格取得が半年で10倍に! 「知らん」「どないすんねん」の声も

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真相究明レポ アスベスト法改正

4月1日から石綿(アスベスト)の事前調査結果の報告制度がスタートした。施工業者は請負代金の合計額100万円以上の改修工事や、80平米以上の解体工事であれば、調査報告が必要となる。社員の資格取得など体制強化に乗り出す会社が急増する一方、「何も手を打っていない」、「やらなきゃまずいですか」といった戸惑いの声も聞こえる。【編集部/芦原拓】

《目次》​

100万円以上の改修工事は報告が必須

レベル3含有建材数、実態知る者はおらず

「不平言っても始まらない」工務店社長

石綿の調査報告が義務化

厚労省「改正石綿則の周知・広報事業ポータルサイト」より

※厚労省「改正石綿則の周知・広報事業ポータルサイト」より

100万円以上の改修工事は報告が必須

相次ぐ法改正に戸惑いの声も

大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正から1年が経ち、アスベスト関係の国家資格の取得を目指すリフォーム業者が急増している。駆け込み寺のひとつとなっているのは、「建築物石綿含有建材調査者」の資格取得講習を行っている一般社団法人企業環境リスク解決機構(東京都港区)だ。

同機構によれば、講座を始めた昨年9月からの受講者数は述べ5000人。参加人数は1度につき100人で月2回ほど開催していたが、需要の増加を受け直近2カ月はほぼ毎日、月20回ほどのペースで開催。全国各地の講座が連日、満席状態となっている。この「建築物石綿含有建材調査者」は、建物の解体や改修の際に、石綿を含む建材等の有無を調査する国家資格で、従事者には2023年10月1日より取得が義務付けられる。

同機構の子安伸幸理事は次のように話す。「とりあえず『資格を取ってこい』と上司に言われて慌てて受講しにくる方たちが増えています。かつては解体業者ばかりだったのですが、最近になってリフォームや建設関連の事業者が多くなってきた印象です」

作業者は呼吸用保護具と作業着を着用して除去(建装HPより)作業者は呼吸用保護具と作業着を着用して除去(建装HPより)

法改正により規制対象が拡大されたのが昨年4月のこと。それから1年が経ち、今年4月からは「事前調査結果の報告」が義務づけられることになった。解体部分の床面積が80平米以上の工事、請負金額が100万円以上の改修工事については、事前調査結果の労働基準監督署への電子届出が必要になる。

留意すべきは、100万円以下だからといって調査が不要なわけではないこと。たとえ新築物件だったとしても調査は義務づけられている。「電動工具を使って壁面に穴を開けるなど、既存の建材を少しでもいじめるような場合は、必ず調査が必要です」(子安理事)

企業環境リスク解決機構 子安伸幸 理事兼事務局長企業環境リスク解決機構
子安伸幸
理事兼事務局長

「何も手を打っていない」後手に回るリフォーム店

このような内容を伝えるために、子安理事は1年前よりほぼ毎週、事業者団体や建材メーカーやハウスメーカーなどを通じてオンラインでセミナーを開催してきた。同理事によれば、述べ1万人の受講者のなかには「やらんきゃいけんのはわかるけど、どないすんねん」という声や、「ここまでやらなきゃいけないんですか?」という驚き、疑問の声が上がっている。「住宅専門のリフォーム会社も、絶対に石綿の除去を行ってきたはずなのに、ないものとして扱ってきた。一方、屋根専業者の方は認知が進んでいる印象です。受講者のなかには『俺は屋根工事をずっとやってきた。吸ってきた』と堂々と口にする大工さんもいます」

事前調査~報告までのプロセス

アスベスト チャート

※一般社団法人企業環境リスク解決機構の資料を元に作表

厚生労働省「周知期間あった」

なぜ今、国は石綿に関する規制を強化しているのか。厚労省の安全衛生部化学物質対策課の担当者は次のように話す。「その時々に労働者の健康を守るために、化学的知見に基づいて事業者に対して曝露、飛散防止のための必要な規制強化を行ってきました。調査自体は今までも義務づけられていましたが、調査結果の報告が不要だったので、新設されたとご認識いただければと思います。最初に法改正されたのは2年前。1年以上の周知期間も設けていました。解体がピークを迎える2030年頃に顕在化していくのを見据えてのことです」

解体等工事棟数※中央環境審議会大気・騒音振動部会 石綿飛散防止小委員会(第一回)資料4 (抜粋)、
社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会(第5回)資料を参考に作図

元より石綿関連の法規制の歴史自体は古く、約50年前まで遡る。1975年には「石綿を5%を超えて含有する吹付作業を禁止する」とあり、そこから段階的に規制が強化されていった。石綿および石綿製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されたのは2006年9月のこと。日本だけではなく、世界共通の社会問題となっていたが、イギリスとドイツが1980年代に輸入規制に乗り出したのに対し、国内では約30年間、石綿問題は浮上しては立ち消え、対策がおざなりになっている状況だった。

それを一変させたのが2005年の「クボタショック」だ。兵庫県の機械メーカー、クボタの石綿を使った屋根カラーベストの製造工場で働いていた従業員79名が死亡。家族、周辺住民に、同社が200万円の見舞金を支払うことを決めたという出来事で、世間の石綿への関心が一気に高まった。

レベル3の含有建材数、実態知る者はいない

健康被害=国のせい、建設アスベスト訴訟「敗訴」の衝撃

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