日本衛生センター(東京都国立市)が開発した、低コストかつ短工期で施工できるオリジナルの基礎補強工法「SOLID REMAIN(ソリッドリメイン)」。その開発に伴い、7月にはコンクリート補強に特化した独自のアラミド繊維シート「グレートシート」を開発、販売を始めた。
鉄の8倍の引張強度を持ったアラミド繊維シートを開発
コンクリート補強に特化した独自のアラミド繊維シート
グレートシートは、帝人(東京都千代田区)が提供する高強度パラ系アラミド繊維「テクノーラ」を使用したコンクリート補強型のアラミド繊維シート。鉄の8倍の引張強度を持ち、従来品と比較して強度値を約15%向上させている。また、約500℃まで分解しない高耐熱性と200℃まで熱収縮しない寸法安定性を有し、他の高強度繊維と比べて優れた耐疲労性を発揮。しなやかな柔軟性により隅部への追従性も向上し、有機溶剤や酸性・アルカリ性に対して高い耐薬品性も兼ね備えていることから、コンクリート補強工法に大変適している。
同社の担当者は「テクノーラは、海底ケーブルなどの過酷な産業用途にも採用されている信頼できる素材。今回、アラミド繊維シート自体の強化によって、コンクリート補強工法をさらに確立させながら、進化の過程でより良い製品を提供したい」と語る。
ソリッドリメインは、同社オリジナルのエポキシ樹脂で、アラミド繊維シートをコンクリート表面に接着固定して補強するハイブリッド工法。従来のコンクリート増し打ち工法や鋼板巻立て工法と比較して低コストなうえ、一般的な住宅なら床板を剥がさずに1~2日間と短工期での工事が可能になった。また従来品に比べてエポキシ樹脂のコンクリート接着力と圧縮強度が大幅にアップしたことに加え、配合粘度を下げたことにより、塗りやすさと施工性も向上した。
樹脂色も発売当初のネイビー色から基礎に馴染みやすいグレーに変更し、アラミド繊維シートの独自開発によってさらなる性能向上に努めている。昨年4月の発売以降、全国の工務店やリフォーム会社をはじめ一般ユーザーからの問い合わせは増える一方だ。
内基礎開口部の施工の様子
家の傾き防止や基礎打設不良の対策にも有効
今年元日に発生した能登地震に始まり、全国各地で震度5以上の地震が頻発しており、引き続き基礎補強の重要性が注目されている。とりわけ能登地震では地盤に対する被害が大きかっただけに、住宅の重みを支え地震の揺れを受け止める基礎強度への関心は高い。基礎補強をしても液状化や地盤変状は避けられないが、家の傾きや不同沈下による基礎への負担を軽減することは可能だ。まだ数は少ないが、アラミド繊維シートを使った基礎補強工事に助成金を出す自治体もある。
それに加え、経年劣化によるメンテナンスや初期の施工不良の対策としての需要も増えているという。先の担当者は「アパートや戸建の新築現場で、まれに基礎完了直後にクラックが何本も発生して工事を依頼されるケースがある。基礎打設にともなう不良施工によってクラックが発生した場合であっても、ソリッドリメインを使えば補修が可能。また、竣工後数年での乾燥収縮などによるクラック発生への対策でも選んでもらえる」と語る。
地震をはじめとした自然災害や不良施工に限らず、基礎補強の重要性がより知られることで、「簡単には傾かず、壊れない」建物が一棟でも増えることを願うばかりだ。
基礎の劣化事例

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