4月1日以降の消費税8%変更に伴い、リフォーム各社はチラシなどの価格表示を従来通りの内税(総額)表示でいくか、外税表示に切り替えるかの選択に迫られた。本紙でヒアリングした18社では興味深いことに、ちょうど半々に対応が分かれた。どちら側にもそれぞれの見解があるものの、共通した最大の理由は「消費者にとって分かりやすい表示」だった。
来年の消費税10%を見据えて
まずは外税表示に切り替える企業の見解から。
「総額表示では、来年また消費税が上がるときに"意図的に価格を上げるのではないか"と誤解を招きかねず、東京では外税表示に切り替える。ほかの地域ではライバル店などの様子を見て決める」(ニッカホーム 河合晃司取締役営業部長)
←フレッシュハウスでは、消費税切り替え時期の3月のチラシのみ「◯◯万円~+消費税」と外税で表示した
「家電量販店やスーパーが外税表示に変更するのにならった格好だ。パック商品も今までの価格から税を抜き、1万円単位で揃える」(コニージャパン 赤石幸彦取締役)
「よそが外税表示に変更する以上、当社だけが内税表示にして価格が高く見られることは避けたい。パッとチラシを見て捨てられる可能性もある」(ナサホーム 江川貴志社長)
外税表示に切り替えた企業の多くが来年10月に再度、消費税が上がることを見据えて決定した。総額表示のままでは今回、次回と2回にわたり価格を改定する必要があり、それよりは1回で済ませたいという判断だ。
この3月から4月の8%切り替え時にも消費者の混乱が予想されたとして、フレッシュハウス(神奈川県)では3月のチラシだけ外税表示に切り替えたほか、マンションリフォームを主体とする長谷工リフォーム(東京都)でも、昨年10月からカタログや見積書を変更し、消費者とのトラブルを回避した。
今年に入り外税表示に切り替えたある企業でも、「短期間で税率が2度も変わる状況で内税表示はかえって紛らわしい。"引き渡し時点での税額を別途いただきます"の方が親切だ」と指摘している。
競合他社との比較で割安感を強調
外税表示に移行する別の理由として、「割安感を消費者に印象付けられる」メリットを挙げる企業もある。
大阪を拠点に「ナサホーム」9店舗のほか、近年では水まわり工事専門店「みずらぼ」を拡大出店するナサホーム(大阪府)では、とりわけ「みずらぼ」の顧客層が価格にシビアだと見て、「ナサホーム」「みずらぼ」ともに外税方式に切り替える。
リフォームチラシを専門に制作し、クライアントを全国に約370社持つセイホーコーポレーション(千葉県)の奥野清志社長も、「私どもでは外税表示をおすすめというか、お願いしていますね。第1にお客様に〝値ごろ感〟がアピールできることです。総額表示で価格が上がれば他社に対しどうしても不利に働いてしまいます」と語る。
さらに、「第2には、来年にまた消費税が上がるので、今のうちに本体価格と消費税をきちっと分けておいた方がよいということ。当社のお客様の中にも当然、"4月以降もこれまで通り総額表示で"という方もいらっしゃいますが、説得してなるべく外税表示にしていただいています」と話す。
ゆとりフォーム、ナカヤマは4月価格据え置き
←ゆとリフォームの3月のチラシ広告(チラシ有効期限4月30日)では、掲載商品をすべて4月以降も価格据え置きとした
一方、従来通りの内税(総額)表示を継続する企業も多い。
ゆとりフォーム(東京都)では、「1円単位の価格表示でも違和感のないスーパーマーケットなどとは違い、住宅では端数はなかなか馴染まない」(大澤洋昭社長)として、4月以降も総額表示を行う。
さらに3月のチラシでは、「工事費・消費税すべて込み! 4月からの工事もこのチラシ価格!」とうたい、チラシに掲載した商品についてはすべて価格を据え置く対応をとった。これは3月から4月への切り替え時期の混乱を避けるための措置であると同時に4月以降の買い控えへの打開策となる。
また、全国に120以上の拠点を展開するナカヤマ(埼玉県)も、ゆとりフォームと同様、3月のチラシ配布分商品については3%分を自社で吸収するほか、パック商品については増税後も現行価格を続ける。
同社の西野純一取締役は、「増税切り替え時の3月のチラシは配布部数を減らし、なるべく混乱を避けるよう配慮しました。同じ理由から、テレビショッピングも2月、3月は取りやめ、4月から再開します。4月のチラシでは消費増税を意識させない広告を心掛けます」と解説する。
チラシは総額表示、店頭は外税表示も
家具・インテリア販売を軸に住宅リフォームも手掛ける家具の大正堂(神奈川県)でも総額表示。ただし、4月分のリフォームチラシについては増税後の買い控えを予想し、入れる予定はない。また、9店舗(うち6店舗でリフォーム取り扱い)の店頭では商品ごとに外税表示と総額表示の併記を行う。
リフォームチラシを総額表示とした理由について同社では、「当社のチラシには商品価格のほかにメーカー小売希望価格も、割引率も、限定台数も1つ1つの商品に記載しており、すでに数字が溢れ返っています。これを外税表示にしてさらに税込み価格を併記するのは多分無理でしょう」(リフォーム営業部)としている。
"消費者にとって分かりやすいのは総額表示、事業者にとってやりやすいのは外税表示"というのが一般的な見方だが、今回ヒアリングした全社が「消費者にとって一番分かりやすい表示を」と回答した。
対応は真っ二つに分かれるが、気持ちが消費者に向かっていることは喜ばしいことだ。
今まで通り「総額表示(内税表示)」
- ゆとりフォーム(東京都)
税抜き表示と総額表示の併記で足並みを揃えたスーパーでは1円単位の表示であってもおかしくないが、住宅では端数がなかなか馴染まない。2、3月に掲載したチラシ商品はすべて、4月以降も(4月以降の契約も含め)価格を据え置く。 - フレッシュハウス(神奈川県)
消費税が切り替わる3月のチラシは、混乱を避けるために外税表示にしたが、4月以降は消費者にとって分かりやすい総額表示に戻す。 - 山商リフォームサービス(東京都)
3%分を上乗せして総額表示。チラシは当社のメーン集客ではないので、それほど影響は出ないと考えている。ただし、今後は小工事の受注を積極的に取るために、チラシ配布を復活している。 - アートリフォーム(大阪府)
すべての商品を3%上乗せするのではなく、メーカーと交渉できるものは現行価格を据え置きするものもある。総額表示のほうがお客様にとって分かりやすい。 - ナカヤマ(埼玉県)
お客さんがパッと見て分かりやすいことが最大の理由。3月のチラシ配布分での商品については当面3%増税分を吸収。パック商品については増税後もその価格を維持する。 - 山一ホーム(千葉県)
外税表示にしたところで、お客さんが支払う金額はそれとは異なるため不親切だ。増税後の買い控え対策として、高額商品については「第2弾の10%に上がる前にリフォームを」と訴求する。 - 東急ホームズ(東京都)
<定価制をとる「暮らしアップGREEN」は、チラシではもともと価格表示をしていない。カタログでは、昨年12月からすでに3%上乗せした総額表示とし、カッコ書きで(消費税8%をもとに試算)と入れている。 - 家具の大正堂(神奈川県)
チラシは総額表示を維持。現状でもいろいろな数字が並ぶなか、本体価格と税込み価格を併記するとさらに数字が増え、消費者に分かりにくい。ただし、店舗内の価格表示は本体価格とし、総額も併記する。 - ミヤプロ(栃木県)
総額表示のままで消費税を上乗せして、きりのよい価格に調整する。
「外税表示」に切り替える
- ホームテック(東京都)
外税表示に変更し、税込みの総額表示も少し小さな文字で併記する。店頭では競合店との兼ね合いから併記する、しないを判断する。お客さま目線で一番親切な表示だと思う。 - ニッカホーム(愛知県)
東京では外税表示に変更。来年また10%に上がる時に、意図的に価格を上げるのではないかとOB客から誤解を招きたくない。ほかの地域はライバル店やスーパーとの様子を見て決める。 - コニージャパン(大阪府)
「スペースアップ」「リフォーる」ともに外税表示に変更。欄外に一括で「消費税8%が別途かかります」と表記。家電量販店やスーパーが外税表示にするのにならった。 - エディオン(大阪府)
家電と統一して、チラシ、店頭ともに外税表示で、小さく消費税込み価格も併記。アイテム数が多いため、4月以降、順次切り替える。店頭では事前に、「4月からは外税表示に変更になります」と看板などで告知している。 - ナサホーム(大阪府)
「ナサホーム」「みずらぼ」とも外税表示に切り替える。他社が外税表示に変更する以上、当社だけ税込みにして価格が高く見られることは回避したい。 - 長谷工リフォーム(東京都)
ただし書きで消費税8%含めた価格を併記。3月から4月に切り替わるときにお客様とのトラブルを回避するために、昨年10月からカタログや見積書を切り替えた。 - ミヤケン(群馬県)
屋根、外壁の価格は「坪数○○円〜」といった目安表示のため、これまでも税抜き価格。ただし、WEB限定の「外壁塗装リフォーム59万8000円(税込)」という商品だけ、インパクトのある価格なので、増税額分も自社で吸収して価格を維持するか検討中。 - グッディーホーム(東京都)
外税表示にしようと考えているが、パック商品などの価格設定についてまだ検討中。増税前駆け込みで注文がかなりあったので、昨秋以降、チラシはイベント以外に配布していない。チラシの価格表示も「イベント特価」としている。 - サンエキ(神奈川県)
外税表示に切り替え、本体価格を記した上で、欄外に「別途消費税8%がかかります」旨を表記。来年の消費税10%にも対応できるように。見積書も間違いがないように消費税は別にする。

最新記事
この記事を読んだ方へのおすすめ
-
1660号(2025/08/11発行)25面
-
1660号(2025/08/11発行)9面
-
1660号(2025/08/11発行)2面
-
1660号(2025/08/11発行)1面
-
1660号(2025/08/11発行)4面