~ドイツ取材リポート vol.4~
複数の熱源で高効率化 日本でも導入容易な熱交換換気
日本に比べ、省エネに対する意識が高いヨーロッパ。その中でも、ドイツは省エネリフォームに対する補助金制度など、先進的な施策を多く打ち出している。暖房、換気の最新商品が集まる世界的な展示会、ISHから見えてくるのは、効率よく熱を生み出し、作った熱は極力無駄にしないという姿勢だ。
ガス、電気、太陽熱を利用
ドイツでは、約9割の住宅で暖房にガスボイラーを使用している。近年ではエネルギー効率を高めるために、ヒートポンプ、太陽熱温水器、地熱利用など、複数の熱源を用いる商品が増え始めている。

(1)サイズは2mほどと大きいが、ドイツでは広い地下室にボイラーを置くことも珍しくない
このような複合的な熱源を利用する暖房機をヨーロッパで展開している企業の1つが、日本の空調メーカー大手のダイキン。同社はドイツのボイラーメーカーROTEXを2009年に買収して以来、住宅の暖房機市場に参入している。
同社が販売する、省エネ性能が高い商品として、大々的にPRしたのが「HPSU Compact」(写真1)。同商品はガスボイラーとヒートポンプを採用したハイブリッド暖房機で、さらに太陽熱まで利用することができる。
ヨーロッパでは、すべての電化製品に省エネ性能を示すA~Gラベルを表示することを義務付けているが、同商品はAよりさらに評価の高い「A+++」を取得している。 「HPSU ground」(写真2)は地熱を利用する暖房機。寒冷地向けの商品で、ドイツやスウェーデンで導入されている。こちらの省エネ評価は「A++」となっている。地熱を利用した他の商品としては、湯を地熱によって暖める貯熱タンク(写真3)などもある。

(2)展示会内では、機器の内部構造を分かりやすく紹介する展示が数多く見られた

(3)蛇腹状のパイプに地熱をため、暖房運転を行う際にその熱を使う構造
さらに排熱を回収する室外機(写真4)も展示。これも合わせて導入することで、より省エネ性能を高めることができる。

(4)寒冷地での使用も想定。結露水を排出するドレンホースを地面の下に配し、凍結を防止している
ハニカム構造で熱を逃さず吸排気
日本でも今後導入が増えると予想されるのが、熱交換機能を持つ換気システム。ドイツの空調メーカー、スティーベルではダクトレス熱交換換気システム「LA‐50」(写真5)を展示。同商品は両端に換気口を持つ筒状の機器で、1部屋につき2つほど設置する。

(5)筒の内部にあるハニカム構造の蓄熱体は、熱だけでなく湿度も蓄える

(6)ダクトレスであるため、同商品を1つだけ取り付け、1室だけ換気するこということも可能になる
自動制御により、一方が吸気を行うと、もう一方が排気を行う。また筒の中にはセラミック製のハニカム状蓄熱材搭載されており、排気に含まれる熱をため、吸気の際に冷たい空気を暖める仕組みになっている。こうすることで、自宅で生み出した熱が換気の際に失われるのを減らし、エネルギー消費の低減につながる商品だ。
同様の機能を持つ商品を古くから販売しているのがドイツメーカー、インベンター。最新の商品は「iv12‐Smart」。中央のパイプの長さを変えることができるので、ドイツより壁の薄い日本でも対応する。
どちらの商品もリフォームを前提としているので、外壁に同商品が入るサイズの穴を開けるだけで施工が可能となっている。スティーベルは日本法人である日本スティーベルを通じて、インベンターはエディフィス省エネテックから日本で販売されており、今後省エネリフォームの際に導入が進むことが予想される。
会場 : ドイツ・フランクフルト国際見本市会場
来場者 : 19万8000人展示
面積 : 26万平米
出展社 : 2465社
会期 : 2015年3月10~14日
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