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水まわり専門店、全国に"拡散中"

水まわり専門店、全国に"拡散中"

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 水まわりリフォームに特化した店舗展開が全国に波及している。ことの発端は大阪のリフォーム専業店、ナサホーム(リフォーム売上高36億7,000万円)が展開した「みずらぼ」という専門店。キッチン、バス、トイレ、給湯器、洗面化粧台など、いわゆる水まわり商材だけを扱う店を、2011年7月大阪の都島区にオープン。わずか3年あまりで店舗数は11店舗まで増加する成功を収めている。

※各社のリフォーム売上高は住宅リフォーム売上ランキング2014に基づく数字

ナサホームの「みずらぼ」。3年ほどで11店舗に← ナサホームの「みずらぼ」。3年ほどで11店舗に

「若手育成の場」がキーワードに

 水まわり専門店である「みずらぼ」は、出店コストが1000万円以内と損益分岐点が低いこと、商材が絞られているため若手社員でも運営できることが特徴だ。同社の江川貴志社長は同モデル出店の第一目的を「営業マンの短期育成」と話す。ナサホームはもともと、本社を梅田阪急ビルの好立地に構えていることから分かるように、ブランディングによる単価向上を推進。営業、設計、現場監督など分業制度を進め、効率的に受注が取れる仕組みを構築してきた。

 ところが、分業制を推進した結果、営業マンの現場経験が少なくなり社員の成長スピードが鈍化。若手社員が現場を多く知り、短期育成できる新たなビジネスモデルとして「みずらぼ」を立ち上げた。

 当初の店舗人員は営業2人、事務員1人でスタート。単価の低い水まわり商品を数多く扱うため想定通り、早急な現場経験の蓄積が可能となった。加えて想像以上の反響を獲得する好発進を切った。そこで、翌年の2012年3月、5月と相次いで新店を出店。

 もともと1店舗当たりの売り上げを月1000万円、年間1億2000万円で考えていたが、基本の営業マン数を3人に増加。現在は大阪と兵庫に各5店舗、奈良に1店舗の11店舗に増加。店舗平均売り上げも1億4000万円となった。来年も4、5店舗を出店し、初めて近畿圏以外の出店も計画している。

CONY JAPANの「リフォーる」、リフォームしたことない人が顧客の7割← CONY JAPANの「リフォーる」、リフォームしたことない人が顧客の7割

初年度で2割がリピーター

 このナサホームの成功を受け、次に同様の専門店を出店したのが、大阪のCONY JAPAN(リフォーム売上高55億8000万円)。2013年7月「リフォーる」という名称で堺市に出店した。初年度の売り上げは営業5人、事務1人、多能工1人で2億5000万円。粗利額は9000万円(36%)。販間費6600万円、営業利益2400万円だった。

 同社はエンドユーザーがそもそもリフォームをしない理由を

  • ①支払える金額ではない
  • ②価格相場が分からない
  • ③気軽に相談できる場所がない
  • ④品質に見合った金額といえない
  • ⑤信用できる業者がなさそう      ――― と考える。

これら5つの否定材料を排除できれば、新たな需要を創造できる。その店舗として位置付けているのが「リフォーる」だ。例えば①の理由をなくすため、チラシには自社が売りたい商品ではなく、売れる商品の掲載を積極的に行う。トイレでも10万円以下の商品を大きな枠で取り上げているのはその理由だ。反響率でいうと10万円以下のトイレは10万円以上の場合よりも反響が約3倍多い。今までリフォームしたことがない人をレンジフードなど低価格の商品で捕まえ、トイレ、キッチンと次の工事にステップアップする。それが「リフォーる」の目指す戦略となる。

 実際、全体顧客のうち、リフォームが初めての人は約7割。また、1年間で売り上げに占めるOB客の割合が約2割を占めるまで増加した。1年以内にリピーターとなる顧客が頻発している。5月には新店を同じ堺にオープンしており、今後も同店の出店を拡大してく方針だ。

 この2社の成功を受けて2014年は水まわり専門店を開設するリフォーム会社が相次いだ。滋賀の匠工房(リフォーム売上高11億円)の「リライト」、東京のホームテック(リフォーム売上高55億8000万円)の「ミズファミ」、埼玉県OKUTA(リフォーム売上高52億4000万円)と安江工務店(リフォーム売上高32億7000万円)の共同ブランド「みずデポ」。広島のマエダハウジング(リフォーム売上高12億7000万円)の「リフレ」。北海道のトーリツ(リフォーム売上高12億8000万円)の「みずプラン」。三重のプラスワン(リフォーム売上高4億3000万円)の「みずサポ」。広島のオオサワ創建(リフォーム売上高4億5000万円)のすいせん工房と各地域に水まわり専門店が広がった。

 ただ、これらの店舗は先行した大阪の2社ほどの大きな成果までは結びついていない。大阪はチラシ反響率が高く、単価が低い水まわり専門店でも成り立ちやすいからだ。各社手探りの状況が続く。

3カ月で損益分岐点到達

 OKUTAの「みずデポ」(川越市)では、3カ月目で損益分岐点の月間売り上げ2000万円に到達するも、このままこの状況が続くか、安心はしていない。なぜなら、通常の水まわり専門店は単価が20~40万円ほどと低いのに対し、同社の単価は100万円と2倍以上になっているからだ。山本拓己社長は高単価の理由を「レンジフードや給湯器を交換してくれる店はほかにもあります。品の良い水まわりの店舗ができたことで、品質を求める方のキッチンやバス需要が獲得できたのでは」と推測する。また、トーリツの「みずプラン」も8月オープンの翌月から損益分岐点の売り上げ2000万円に達するもまだ需要が落ち込む冬の時期が終わっていないリスクがある。

 今後も、出店コストの安さなどから水まわり専門店は増加する可能性が高い。ただ、地域に合わせた戦略変更が進むと想定される。現状でも格安航空会社のピーチに習いキャッチーな紫のイメージカラーを店舗に取り入れた匠工房の「リライト」、商業施設のみに出店するホームテックの「ミズファミ」など各店ごと独自の特徴がある。単なる水まわりの専門店を出店しても成功は難しい中、エリア特性に合わせた進化が進みそうだ。

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