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富士通総研、空き家研究の専門家に聞く

富士通総研、空き家研究の専門家に聞く

富士通総研
主席研究員 米山秀隆 氏
1264号 (2017/05/16発行) 9面
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富士通総研 主席研究員 米山秀隆 氏富士通総研 主席研究員 米山秀隆 氏

 年々増え続ける空き家。この分野の研究者で、様々な著書やリポートを発表しているのが富士通総研(東京都港区)の主席研究員、米山秀隆氏だ。空き家対策は進んでいるのか、聞いた。

指導・助言は5000件超

――2015年5月に空き家対策特別措置法が施行されてしばらくたちましたが、この効果をどう見ますか。

 この法は危険な空き家を「特定空き家」に認定するというものですが、危険というのは衛生上有害であったり、倒壊の危険があったり、景観を阻害したりといったものです。16年10月1日のデータにはなりますが、このような空き家に対して「指導・助言」を行ったのは280自治体で、5009件ありました。

 だいたい1自治体あたりでいうと20件ほど。これくらいはあってもおかしくない数字で、まだまだ今後増えていくのではないかと思っています。

――指導・助言よりもっと踏み込んだのが「勧告」ですね。

 勧告は137件ありました。指導・助言よりも数が少ないのは、ある程度対策を取ってもらえたということかと思います。

――認定されると税金が上がりますからね。

 それなりの効果を発揮していると思います。指導・助言、勧告、そして命令に従わないと代執行、略式代執行になります。代執行・略式代執行というのは自治体が空き家を解体してしまうというものなのですが、これには問題があるんです。東京でも葛飾とか品川とかで行われていますが、中でも印象的だったのが北海道室蘭市の事例です。通常空き家解体には150万~200万円かかるものなのですが、840万円かかった。これは擁壁が崩れそうで補修工事が必要になったためです。所有者が分かったので、長期の分納で支払うことにはなっていますが、回収できるのかと市民からの声もありました。

 もう一つの略式代執行は所有者が分からない場合の除去で、特措法ができてから可能になりました。兵庫県明石市では2件で310万円かかりましたが、これは回収できないもの。なので行政が負担。これらは増えていくだろう思っているのでさらに負担が増えます。

――本来なら所有者が対応すべきです。しかし、もう早急に対処せねばならないという状況もあるわけですね。

 今年度もどんどん増えていくと思います。しかし、これは税金がかかる。考え方次第ですが、市民の中には不公平感を持つ方もいると思います。

――自分でお金を払って除去している人もいれば、自治体に負担させて壊してもらっている人もいるわけですからね。

 自治体の中には補助金を出すから自分で壊すように促すところもあります。例えば空き家が多い広島県呉市は、上限30万円出してます。15年には455件利用されました。補助していいのか疑問もあったそうですが、すごく利用された。一押しですが、壊すきっかけになったんですね。総額で1億2877万円分だったそうです。

――代執行の方がお金がかかるので、補助金を出してしまった方が安上がりのケースがあると。

 群馬県高崎市は上限100万円出していて、大盤振る舞いです。しかもそんなに劣化していなくても、10年くらい使っていなかったらいいでしょう、みたいな条件だったりします。これも調べたところでは427件利用がありました。

 なんでこんなお金を出しているのかというと、財政が豊かということもありますが、目に見えて改善していくからいいんじゃないかという考え。実際危険な空き家がなくなって喜ばれている人もいるので、市長の狙いは当たったと。ただ、モラルハザードも大きい。「お金を出してもらう」というムードは必ずしもいいわけではありません。

点としての再生ではなく「面」で

――このような空き家対策において、最近はどのような動きが見て取れますか。

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