LIXIL、既存壁を壊さずに丸ごと断熱
LIXIL
ZEH推進事業部 ZEH推進商品開発部 構造体開発グループ
市川啓介 グループリーダー
LIXIL(東京都江東区)は、昨年10月に高性能住宅工法「まるごと断熱リフォーム」の発売を開始、本格的に断熱リフォームを推進していく。同工法は、既存の住宅を活かし、リーズナブルに省エネの暮らしを実現する。同社ZEH推進事業部 ZEH推進商品開発部 構造体開発グループの市川啓介グループリーダーに本商品について伺った。
【聞き手/報道部長 福田善紀】
コストを抑えて高性能住宅に
――今まで窓や部屋といった断熱商品はありましたが、住宅全部というのは初の試みです。「まるごと断熱リフォーム」を販売することになった経緯を教えてください。
日本では、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、脱炭素化の取り組みが加速しています。これを実現するためには、住宅の高性能化が必要です。新築住宅では進んでいますが、日本のストック住宅の9割が今の省エネ基準に満たない状況です。ストック住宅の性能改善ができない大きな原因は予算なので、そこを解決するために開発した商品が「まるごと断熱リフォーム」になります。
――すでに展開されている「スーパーウォール工法リフォーム」に近い商品と感じます。
その通りです。弊社では、先行して「スーパーウォール工法リフォーム」という商品を2020年1月から、エリアを限定して販売開始。昨年の4月から全国販売を行っています。ただ、こちらの商品はスーパーウォールの加盟店しか使えない工法なので、加盟店以外からも扱いたいという声が多くあり、新たに「まるごと断熱リフォーム」を開発し、販売することにしました。
――「まるごと断熱リフォーム」の特徴は何でしょうか?
特徴的なのは、既存の外装材は壊さず外壁を重ね張りし、外壁を張り替え、スケルトンリフォームなど、さまざまなリフォーム工事に合わせて断熱リフォームができるところです。国内トップレベルの断熱性能を誇る硬質ウレタンフォームを使用した壁断熱、吹込み用グラスウールによる天井断熱、吹付け硬質ウレタンフォームによる床断熱により壁・天井・床の断熱性能を高めます。また、既存の窓の断熱性能を高める内窓の設置や、玄関ドアの交換による開口部断熱を組み合わせ、家全体をまるごと断熱リフォームして、既存の住宅を省エネ住宅へと生まれ変わらせます。そして「既存通気層を含む外張り断熱構造」(特許出願中)を開発し、冷気の遮断と雨水の排出の両立を可能としました。
――既存の外壁を壊さなくて良い点、通気層がある住宅にも使える点が面白いですね。想定費用はどのくらいでしょう。
想定モデル費用としては、一般的な2階建ての建物であれば1600万円ほどです。また、「まるごと断熱リフォーム」を利用した人を対象に「建て得リフォーム」といった太陽光をお得に設置できるプランが利用できます。一律53万9000円(税込)で太陽光発電システムパネルを載せ放題でき、製品代は実質0円。ランニングコストの削減が可能となります。
――太陽光のお得分はあるとはいえ、ユーザーに対し、どのように断熱リフォーム効果を提示するかが普及のポイントになりそうです。
そこで、リフォームを検討している人に対して、オプションで「お住まい断熱診断」というサービスを提供しています。これは弊社から人員を派遣し、赤外線カメラ等を使ってU値を実測し、壁を壊さずに既存住宅の断熱性能を数値化するサービスです。現状の性能を見える化することで、改修プランが明確になります。測定は半日ほどで、測定が終わってから1週間ぐらいで結果が出ます。
オプションで断熱診断を付与
――効果を見える化できるのは面白いですね。
高性能住宅に建て替えをしたいけれど、予算が合わなくて諦めていた方に対して、コストを抑えて高性能住宅ができることを提案しているので、共感いただいています。
――今後の展開を教えてください。
性能改善リフォームは断熱だけでなく、耐震・耐久性という面もあります。そうしたところを一緒に改修できるような方法を広げていく必要があると考えています。「まるごと断熱リフォーム」は、「スーパーウォール工法」と合わせて、2024年までに3000棟を目指します。

最新記事
この記事を読んでいる方は、こんな記事を読んでいます。
- 1653号(2025/06/16発行)12面
- 1651号(2025/06/02発行)12面
- 1649号(2025/05/19発行)7面
- 1647号(2025/05/05発行)15面
- 1643号(2025/04/07発行)16面