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職人起業塾、年間1万人の職人創出へ

職人起業塾、年間1万人の職人創出へ

職人起業塾
高橋剛志 代表理事
1520号(2022/09/12発行)13面
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職人起業塾 高橋剛志 代表理事

職人起業塾 高橋剛志 代表理事

新たな教育スキームが誕生

職人や施工管理技士など現場実務者を雇用するものづくり企業に支援事業を行う、一般社団法人職人起業塾(兵庫県神戸市)。同法人が、建築業界に長らく横たわる職人不足問題を抜本的に解決すべく「新しい高等教育学校」の構想とそのスキームを確立。来春からの学校開設を予定している。それら取り組みへの経緯と地域社会や教育機関と密に連携する「社会課題解決型モデル」の中身について、高橋剛志代表理事に聞いた。

不登校や高校中退者の受け皿に

――今回の職人養成を兼ねた学校開設の構想に至ったきっかけを教えてください。

実は長引くコロナ禍で集合研修ができず、社団法人としての運営事業がなくなって暇ができ、今まで塾生を出してくれていた会社の顧問に入り、現場の改革を一緒に行っていました。

結構成果は出ていたのですが、そのやり方ではできる数が限られるなと(笑)。全国に改革を広げるには僕一人で講師をやっていてもダメで、持っているコンテンツを全部オープンにして、フリーに使ってもらえるものをインフラとして整えることを考えました。

――それで職人不足問題という社会問題に新しい形で取り組むことになったわけですね。どんな中身でしょうか。

僕が属する社会課題を解決するコミュニティで長らく出ているテーマが、不登校問題。すごく増えていて、いま小中学生で33万人います。そうした違う社会課題と掛け合わせて新しい価値を生むスキームを考えました。高校中退者も9万人いて、その子たちの受け皿として僕らの学校があったら、1割だとしても1万人近くになって10年で10万人を生める。それだけいたら、職人不足も一気に解決できるんじゃないかと。

業界と教育機関、法人がしっかり連携

――確かにそれだけの人が職人となったら一気に問題解決ですね。実際に生徒を集める仕組みがキーポイントになりそうです。

各地にあるものづくり企業と通信制高校、職人起業塾が横並びのスキームでして、学技は行政から紹介してもらった上、取りまとめもしてもらいます。重要なのは今の不登校の子に合う個性分析やメンタリングでして、それにより生徒たちにあう仕事を選別するのです。生徒はモノづくり会社に入り、OJTで仕事を教わりながら通信教育を受けるのですが、給料が支払われるので、そこから学費を払っていく。そして、3年後の就職先と活躍が約束されるシステムです。

――ものづくり企業は建築業以外の企業も想定していますか。

そうです、今も介護事業や農業とか製造業からもオファーがあって、建築が中心ですが、そこにこだわる必要はないと思っています。週に1回スクーリングの日を作り、学校のレポートをちゃんとやってもらいます。

フリースクールをやっている方などから、子供たちをぜひ紹介したいというお話が多数あり、話を持っていくとだいたい歓迎してもらっています。この事業を通じて、子どもたちは高卒の資格が取れることになります。

会社が先に変わってこそ成り立つ

――そもそもこれまで、職人不足問題が解決できなかったのはなぜだと思いますか?

建築業界の経営者が、「今だけ、金だけ、自分だけ」の価値観でやってきたから。僕らは、職人は正規雇用しないといけない、キャリアプランを作ってとやってきましたが、それに耳を貸してきたのは5年で200社しかいませんでした。

今回、社会課題に向き合って、地域の子を助けることで地域貢献・共生する会社に変われば、今までとは違ったチャンネルで工事も入ってきたり、外部環境に左右されにくく相見積もりがなくなったりする。そして集客が変わり収益構造も良くなるはずです。

――確かに、時代の変化に伴い、企業側の変化が必要な時と感じます。

会社のガバナンス整備がまず必要です。今回の仕組みに手を挙げた会社は全社、職人の正規雇用はもちろん、人事制度を完全法適合に変え、キャリアプランを構築してもらいます。受け入れ企業が変わってから、入ってくる子たちが変わるという話。じゃないと根本的解決になりません。まず会社が変わらないと。

――職人不足問題は待ったなしでですが、取り組みによってどのくらいの職人を輩出していく見込みでしょうか。

雇用1万人として、建築業は約3000社なので1社3人の受け入れになる。5年後くらいにはそこを目指したい。建築業界は古い慣習に囚われ過ぎていて、僕らは根本的な古い建築業や工務店とかの建て付けからやり直しましょうというものなので、理解できる人がまだそんなに多くないかもしれない。今までの建築業界にはないムーブメントですが、世間全体はその流れですし、僕らも変わっていきましょうということです。

(聞き手/報道部長 福田善紀)

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