総合不動産業のマークス不動産(東京都中央区)は、事故物件の売買や仲介を専門的に扱う「成仏不動産」事業を全国展開すべく連携店の募集を開始した。孤独死や自死、殺人や火災などにより人が亡くなった物件の取り扱いを忌避する不動産業者は多く、長らくその取り扱いや売買相場はブラックボックスとなってきた。「当事者の側に立った正しい価値づくり」を合言葉に奮闘する同社の花原浩二社長に話を聞いた。
「成仏不動産」の連携店を募集
事故物件を正しく売買
花原浩二社長
タブーを排して、困った遺族に寄り添いたい
── 事故物件を扱う「成仏不動産」事業は社内で反対もあったようですが、どんなきっかけで始めたのですか。
最初は事故物件の買取相談を受けていたのですが、対応もできず、私自身もちょっと抵抗がありました。それまでは、どこかの買取業者が買い叩いて引き取るというマーケットでした。業者が適正な買取価格かどうか判断できないのに売り主がわかるわけもなく、そういうものだと、買い叩かれていることにも気づいていなかったと思います。ご遺族様を目の前にして相談を受けているうちに、単に事故物件を見る側から当事者側に近くなり、「こんなに困っている人がいるのに、この世の中はなんか狂っているぞ」と強く思うようになりました。
── そこからどのように事業を進めていったのでしょう。
最初は事故物件のプラットフォームとして、相談を受けたものをサイトに載せていました。でも、登録写真は雰囲気も悪く、ましてや綺麗にリノベーションされている物件なんて皆無。むしろ、事故物件の悪いイメージを生み出しているのではないかという疑問をもちました。
事故物件ゆえに買い叩かれて苦労している人がいることに気づいて、どこをクリアすべきかを考え、2年ほど経って事故物件の正しい買取というブランドとして立ち上がりました。
── とはいえ、前例がないなかで、何が正しいといった判断やノウハウはどうされたのでしょうか。
相場もノウハウもないので、まずはその土地や建物の相場が3000万円とすると、その価格より少く高い値段で売り出して、どこで着地するかを見ていきました。もう少し高く売れる世の中を作って、それをもって正しい買取価格にしようと思ったんですね。正しい価格を探すのではなく、正しい買取価格をつくるためにブランドを立ち上げたわけです。
── 実際どのくらい買取価格に影響を与えることができたのでしょう。
価格を、(1)事故なし想定価格、(2)事故物件の予想価格、(3)着地価格という3つの価格を提示して、これを最初の頃から並べて見ると、以前よりも事故なしとありの価格差が近くなって、高く売れる仕組みができてきたなと感じています。たとえば前々期(2021年11月〜2022年10月)は孤独死は相場の88%、自殺は78%の価格で販売していましたが、前期(2022年11月〜2023年10月)は孤独死は93%、自殺は85%まで高まり、相場に近い価格で市場に流通させることができました。販売物件の平均価格は1876万円です。買取価格は同じ孤独死でも発見までの時間や、自殺もその方法によって変わりますし、もちろん、事故なし物件と同様に築年数や物件の状態などによっても変わってきます。
孤独死を少しでも減らしていきたい
── 今回、拠点エリア以外での連携店の募集を開始しましたが、その目的は何でしょうか。
我々は東京・千葉・埼玉・神奈川・静岡・愛知・大阪・福岡の8都県10エリアで展開していますが、依頼が増えていきて、自社だけでは扱いきれなくなっています。北海道から沖縄や離島まで、困っている方がいれば不可能なくスピード対応ができるようにしたいためです。
── どういう方に連携店になってほしいですか。
成仏不動産事業は、ご遺族様に寄り添って、少しでも高く買ってもらえることを着地点にしています。変な話、孤独死が多い方が儲かるビジネスかもしれませんが、それを少しでも減らしたいという思いに共感してもらえる方に、連携店になっていただきたいです。ですので、世のためという理念と行動指針にはしっかり共感してもらえることが第一の条件です。宅建業の有資格者で、きちんと物件対応ができるかも判断要素です。
連携店と提携契約を結んで、対応後には弊社からお客様にヒアリングの連絡を入れて、業者の評価をする仕組みを予定しています。加盟料やロイヤリティは一切かからず成約報酬のみで、仲介なら手数料の30%、買取なら仲介手数料相当分を紹介フィーとしていただいています。
── 最後に、今後の展望を教えてください。
「葬儀×不動産」のキーワードで、墓や実家じまいのお手伝いをすべく石材店や遺品整理業、士業など、いろいろな業種の方と提携契約しています。片付けや、相続を受けた財産をどう扱うかまで、葬儀後に発生する困りごとを一手に引き受けるものです。現在、全国で94社と提携して10万件以上の葬儀を扱っています。
ほかにも「介護×不動産」や「離婚×不動産」といった、それぞれの営みにまつわる不動産の悩みや対応について関わる事業を展開していきます。どれも、「困っている人の助けになる」という目的は同じですから。
事故物件にアートを取り入れるブランドも展開
会社名 | :マークス不動産 |
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代表者名 | :花原浩二 |
本社所在地 | :東京都中央区 |
資本金 | :1億500万円 |
売上高 | :23億円 |
事業内容 | :不動産買取事業、不動産仲介事業(売買仲介および賃貸仲介)、不動産活用コンサルティング事業 |

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