有料会員登録で全ての記事がお読みいただけます

一件単価を下げる薄利多売の戦略を推進ハ...

一件単価を下げる薄利多売の戦略を推進 ハウスクリニック

ハウスクリニック
田中利治 社長
1048号 (2012/11/13発行) 5面
このエントリーをはてなブックマークに追加

ハウスクリニック

ハウスクリニック 田中利治 社長

賃貸リフォームで全国に52拠点を展開するハウスクリニック(東京都八王子市)が進めているのが、"単価ダウン"戦略。売上げは10年度40億9000万円、11年度44億7000万円と右肩上がりの増収を続ける一方で、現状9万円弱の平均受注単価をさらに引き下げていく考えだ。自らの会社を「不動産管理会社の黒子」と話す田中利治社長に成長を支える戦略を聞いた。

無料サービスを展開

 ―――賃貸リフォームも競争が激しい業界です。不動産会社に御社が選ばれている理由はどこにあるのでしょうか。
トータル的なところにあると思います。私どもは例えば原状回復工事の中での入居率アップの提案や、リース活用の提案など、複数の業種にまたがるものを集約して提供しているのです。部屋のデザインも設計事務所に頼むと設計料が発生しますが、ウチはコーディネーターを2名置いていますが無料ですし、ローン申請も代行して行います。ただ、その代わり原状回復の工事を頂くわけです。

 ―――つまり不動産会社にとって煩わしい様々な業務を請け負うことで、受注につなげているわけですね。
そうです。ただ、もちろんサービスの中には有料のものもあります。元々は不動産会社が畳屋や電気屋に分離発注していたことを、一つの窓口でやりますよというスタンスで事業を開始しましたが、今はそうした対応がスタンダードになったじゃないですか。今、賃貸住宅に必要なことは、入居者の方に喜んでもらえる部屋を代行して作るサービスだと思います。

 ―――ただ、最終的に収益を求める賃貸住宅は、一件単価が低いという特徴がありますよね。サービスメニューを拡充することで「忙しいが儲からない」ということにはなりませんか。
数ですよ。薄利多売です。今後も1件単価を上げようとは思っておらず、1件単価を逆に下げていこうと思っています。

 ―――単価を下げるとは面白い。一般のリフォーム会社とは全く違う考えですね。
発想が逆ですね。今でも新築物件がどんどん建っていますが、古い物件はもちろん競争力が落ちてきます。アパートローンが終わった築20年ぐらいの物件だと値下げして入居者付けをすることも1つだと思いますが、それが嫌だと、建物の競争力を上げて家賃が下がることを防ぎたい大家の方もいるわけです。しかし、お風呂を新築なみに新しくしても、同じ家賃だったら絶対新築に入りますよね。だから、例えばキッチンやバスも交換せずコーティングして古さを残した中でリニューアルをしましょうと、そしてお金をかけないリフォーム、と提案するため、単価が下がっていますね。

 ―――いかに安くお客さんに提供できるかは材料費がある程度決まっている分、工事費や人件費を抑える工夫が必要でしょうね。
営業は私もいれて5名しかいないですし、依頼はほとんどが紹介なので、宣伝広告費がかかっていません。あと元請けはゼロなので店舗を通り沿いにする必要もない。各店の立地はゴミや資材が置きやすく、インターやバイパスに近いところです。

 ―――工事でも何かコストダウンの工夫がありますか。
今、協力職人さんの育成をしています。専属の300名を含め全体で700名くらいいるのですが、電気工事やガス工事などの勉強会を開いて、それぞれの資格取得を進めています。

 ―――つまり多能工化しているということですね。
はい。資格が必要な工事はその道のプロを呼ばないといけませんが、そうすると費用がかさむじゃないですか。そういったところを安くできればと考えているわけです。現在、複数の業種に対応できる方は100〜200名はいるでしょうね。

 ―――複数の工事対応ができると依頼する側は便利ですよね。工事最中に追加の依頼をすることができるわけですから。
そうです。見積もりなどを作る社員も技術のある者が多く、自分である程度直せてしまいます。1件単価が100万円以上で売上げが数十億円の会社もありますが、小さい規模でルームクリーニングやクロス交換をしている会社の方が数は多いですよね。私たちが狙いたいのはそうした小さい工事なんです。ただ、業務効率化などのツールは大きい会社の方が持っているじゃないですか。工事は小さいながらそうしたツールは持っていきたいと考えています。

地方のノウハウを都市部へ

 ―――現在すでに52店舗ありますが、新しい拠点の進出はどのように行っているのでしょうか。
今取引させていただいている企業さんは全国展開されているところも多いので、そこと連携し、それに加えて地場のお客さんを取り込む形で出店しています。

 ―――ただ、地域で家賃が異なりますし、市場性も違いますよね。
必要なのは地元の経験者を採用して対応することですね。あと私どもが全国に出ているのは、地方を知ると都市部に生かせる部分があるからです。東京だけですと、ぬるま湯なんですよ。地方にいくと家賃が安い中、どれだけ費用をかけないで入居率を上げられるかという話になりますから。

 ―――地方で得た情報を都市部にフィードバックしているわけですか。
そうです。実際の売上げだと東京都と神奈川で9割ぐらいあるので、都市部の戦略は重要ですね。仕事量が他の地域と全然違いますから。

 ―――今後は拠点を広げる計画はあるのですか。
いや、今年は広げる計画はないです。もうある程度、九州以外、札幌、仙台、名古屋、大阪などの主要都市は網羅できましたからそこを伸ばして行きたいと思います。


会社概要
所在地 * 東京都八王子市 / 設立 * 1995年2月16日 / 資本金 * 4980万円
代表者 * 田中利治氏 / 年商 * 44億7000万円
年間工事数 * 5万1000件 / 拠点数 * 52ヵ所
毎日ニュース配信中!リーフォーム産業新聞公式LINE

リフォーム産業新聞社の関連サイト

閉じる