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増税対応は顧客・下請け業者への周知徹底が鍵

増税対応は顧客・下請け業者への周知徹底が鍵

匠総合法律事務所
秋野卓生 弁護士
1088号 (2013/09/10発行) 10面
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リフォーム産業フェア+工務店フェア2013セミナーリポート(9)
匠総合法律事務所

東京ビッグサイトで行われたセミナーを紙面で紹介しています!第9弾は、今、誰もが気になっている「消費税増税」について!消費税増税前の駆け込み需要に対応するためにも、増税に関する知識が必要です!

匠総合法律事務所 秋野卓生弁護士匠総合法律事務所 秋野卓生弁護士

≪タイトル≫ 知らないでは済まされない消費増税の法的リスク

 住宅問題に精通し、住宅と法律を巡る著書も多い匠総合法律事務所の秋野卓生弁護士は、消費税増税決定直後から、その対応をアナウンスしてきた。増税はリスクも招くが、大きなチャンスでもある。どう利用して会社を成長させるか。キーワードは「信頼」だという。

リフォーム業界における消費税増税とは

 「消費税増税」という言葉は、消費者の背中を押す非常に力のあるキーワードです。リフォーム推進協議会のアンケートでは、消費税増税前にリフォームを行いたいと答えた方が全体の「消費税増税」がどれだけ力のある言葉かお分かりでしょう。

 しかし、小売業界では消費者心理に反映されるのは、直前の1~3月頃と見込まれています。リフォーム業界もそこに向けて活動を集中すればいいのかというと、ちょっと違います。それは、小売版消費税とは、契約のタイミングが異なるからです。小売契約は、売買が成立した時点で契約が成立しますが、住宅の場合は請負契約から履行まで時間が空くのが最大の特徴です。

 例えば、今年11月に3000万円の請負契約を締結したとします。手付けに200万円を受け取り、2月に中間金1000万円、5月に完成して引き渡しで残りの1800万円を受け取るとしたら、手付金、中間金の消費税はいくらになるでしょうか。小売業界的発想では、手付・中間金とも5%と想定してしまいがちですが、住宅の場合の課税時点は、目的物完成引き渡しの時なのです。つまり、引き渡しが5月なら、手付も中間金も8%です。

 この時間の幅がややこしいため、住宅版消費税増税には特別措置が認められました。2013年9月末日までに請負契約が締結されれば、引き渡しが2014年4月以降になっても消費税は5%でよしとするものです。これを「経過措置」と言います。

請負代金回収リスクをどう回避するか

 経過措置に間に合わず、10月以降の契約になると、3月末までに引き渡せれば5%ですが、4月以降になれば8%ですね。増税直前の駆け込み需要は12月を過ぎて増えると考えられますが、そこで注意が必要です。「5%のうちにリフォームしてしまいたい」と思う消費者が申し込んでくる。「分かりました、5%で頑張りましょう」と約束すると、3月末までに必ず引き渡すということです。

 しかし、皆さんご存知のように工事には遅れがつきものです。そうなったときに、「がんばったけど、間に合いませんでした。ごめんなさい、8%よろしくね」と言ったところで、消費者が納得してくれるかが問題なのです。推測ですが、恐らく「嫌だ」と答える方が多いのではないでしょう。5%だから急いで契約したのに、8%なら急ぐ必要なかったじゃないかと。私は、消費税増税の法的リスクはこの請負代金回収リスクなのだ思います。5%でやろうと思ってできなくて、3%分の売り上げが吹っ飛んでしまう。

 これを回避するには、契約書などの書類でリスクヘッジすることです。契約書の約款に消費税に関する特約事項を必ず入れること。そして見積書でも、条件項目の欄に、間に合わない場合消費税が8%になることをきちんと記しておくことです。また、見積書の有効期限にも注意しましょう。なんとなく2週間、1カ月区切りで書いていますが、引き渡しがいつになるのかしっかりと判断して設定しましょう。

請負代金回収リスクをどう回避するか

 次に営業トーク上の法律の問題です。よくあるのが「2000万円のリフォーム、5%なら100万円だけど、8%なら160万円、一目瞭然でお得でしょ!」というもの。しかし、1、2年後に価格が今より安くなっているかもしれない。このような決め付けの営業トークは「断定的判断の提供」と言って避けたほうが良いものです。また、「消費税増税決定! 住宅工事はお早めに」という文言を使えるのは、消費税増税法が閣議決定を通ってから。今はまだ国会で法案が通過しているだけで施行が決まったわけではありません。

 最後に下請け業者との関係で注意すべき点です。まず、9月30日までの経過措置は、下請けにはありません。必ず引き渡し時の課税になりますから注意が必要です。

 また、〆と支払いの時期が各社異なる点にも注意しましょう。例えば、基礎下請けの業者さんに発注して、田中さん宅は3月27日に終了、鈴木さん宅は4月3日に終了した場合、田中さん宅の仕事の消費税は5%で鈴木さん宅は8%になります。元請け業者の〆が4月20日の場合、ひとつの請求書に、異なる消費税が混在することになるわけですね。元請け業者指定の請求書を使用している場合は、そこを踏まえたものを作成しておくことも必要でしょう。

 また、3月末に近づくと現場はめちゃくちゃ忙しくなると予想されます。そのときに、現場監督が下請けの終了を確認できるのか、監督が忙しくて3月27日の終了時に確認できず、4月3日に確認した場合、消費税はどうなるのか。何を持って完成とするかなど、お互いに協議してルール化しておくことが必要になってくるでしょう。

 消費税増税は、大きな節目になりますが、私はこの増税対策でその住宅会社の本質が見えると考えています。それは恐らく「信頼」というキーワードでくくることができると思います。法律用語的に言えば「コンプライアンス経営」です。ぜひとも皆さんには、コンプライアンス経営で、消費税増税を乗り切ってほしいと思います。

◆秋野卓生弁護士の著書◆

『住宅会社のための
消費税増税の法的リスク』 ~2冊パック~


住宅業界の専門弁護士 秋野卓生氏が
消費税増税対策を指南!


第1弾『住宅会社のための消費税増税の法的リスク』
消費税増税に備え住宅会社が今やるべきこととは?

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トラブル回避のための広告表現や営業トークの注意点を解説

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