パナソニックホームエレベーター 高野忠昭 社長
ホームエレベーター市場で国内累計5万台の実績を持つトップ企業、パナソニックホームエレベーターがこのほど、リフォーム対応型の新商品を発売した。高野忠昭社長にその狙いと商品コンセプトを聞いた。
基礎工事を軽減したリフォーム向け商品を開発
―――今回の新商品は、リフォーム対応の2階建て専用品と聞きましたが、需要はどれくらいあると見ていますか。
昭和56年の新耐震基準以降に建てられている既築2階建て住宅は約1310万戸。内閣府の意識調査によると、そのうちホームエレベーターを検討している人は約3%いますので、単純計算で40万の市場です。しかし、これまでリフォームでは受注が難しかった。
―――確かにユーザーが興味を持っても、リフォームでは工期やスペースの問題などで二の足を踏むケースがありましたね。
実は調査したところ、引き合い後に年間1200件も失注していたんです。その中にはもちろん法的に設置できないケースもありましたが、分析すると、スペースがない・建築工事が大変・出来ている基礎をはつりたくない・価格が高いなど、設置できるのに断念されていたのが42%もありました。
―――1200件中42%というと年間500件ですか。2010年度のホームエレベーター国内市場が約4000台であることを考えると大変な数字ですね。
こうした問題を解決したのが今度の新商品で「省スペース・省施工・省エネ」をユーザーにアピールしていきます。具体的には、従来の2人乗りの1220×1220㎜スペースで3人乗りになります。また今まではエレベーターを動かす油圧ユニットを真下に入れていたために、ピットは450㎜必要でした。このユニットをコンパクト設計し、また乗車スペース横のジャッキとレールの部分もスリム化しました。そこにユニットを入れたので、ピットが200㎜で済みます。
▲スペースの有効率がUPして2人乗りスペースに3人乗れる
―――従来リフォームでは、住宅床下の基礎を掘り下げて450mmのピットを確保しなければいけなかったわけで、この工事は大変だったそうですね。
特にリフォーム工事の場合、新築時と違って、家の中に重機を入れることができないので、手掘りでやらなければいけなかったのですが、新商品では、この作業がなくなり、大幅な改修工事が不要になりました。これは省施工にもつながり、建築日数も2~3日短くなります。
―――確かに家の中で基礎を掘り起こす作業がなくなると助かりますね。しかし2人乗りのスペースが3人乗りになると狭くはなりませんか。
開口部の片開き戸を2枚から3枚にして扉一枚の幅を狭くした他に、デッドスペースも縮小し、乗車スペースを可能な限り広げました。確かに3人乗り用に比べれば、若干狭いものの、車いす利用者と介助者の2人で乗ることができます。
―――コスト面はどうですか。
ランニングコストも1日20回の使用と待機電力を合わせて月額500円だったのを3割減の340円にしました。価格も300万円以下に抑え、リフォームでもトータルで約10%減です。メンテナンス代も3500円と月々の新聞代以下の料金に設定しました。
―――御社では「ホームエレベーターがあれば、子供からお年寄りまで、誰もが暮らしやすくなる」という考えで開発を行っているそうですが、今後のホームエレベーターのあり方についてはどう考えますか。
目指すところは「フロアフリー」です。扉が開くだけで別の階になる。つまり、ホームエレベーターが取り付けられることによって、縦の動線が平屋の感覚で移行できるということです。またホームエレベーターはお年寄りのためと思われがちですが、実際に調査をしてみると、奥さんの使用率が77%となっています。つまり高齢者やハンディキャップがある人だけの商品ではないのです。
―――家族みんなで使えるとなるとますますシェアの拡大を目指したいところですが、国内のホームエレベーター市場はどう推移していますか。
国内市場は年間販売台数が1万台に届くかという2005年以降、マンションエレベーターの事故、耐震偽装、リーマンショックがあり下降に転じました。10年度でようやく底を打ち、11年度で上昇に向かっているところです。それまで対前年比80%台で推移していたのですが、10年度94%、11年度上期では97%になりました。
―――ようやく減少傾向に歯止めがかかった感じですね。今後は助成金制度なども期待したいところですね。
はい、ぜひ助成金の導入も望んでいます。ホームエレベーターはいまだにぜいたく品という認識ですが、そうではなく本当に困っている人のために補助金制度が必要ではないでしょうか。事実ヨーロッパではホームリフト(=ホームエレベーター)に助成金を出している国は多く、このことも各方面に訴えていきたいです。
―――確かにぜいたく品という思い込みはあるかもしれないですね。しかし実際の設置後の反応はどうですか。
家を建て替えてもまた設置したいという人が95%に達します。エレベーターのある生活がいかに楽しく、その上楽かということを実感されているのでしょう。また車椅子のご主人が自分で2階に昇り下りできるようになり、奥さんの時間が増えたという感想も頂きました。つまり要介護者だけでなく介助者も楽になるということです。
あるいは将来のことを考えても、今は子供が2階の部屋にいるが、大人になり独立すると部屋が空きます。その時に高齢で足が悪いと2階をめったに利用しない、これでは老後が楽しくありません。

所在地 * 大阪府門真市 / 設立 * 2005年7月1日 / 代表 * 高野忠昭
事業内容 * ホームエレベーター、小型エレベーター(小規模建築物用)の開発、製造、販売、施工、保守、アフターサービス

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